「ブレーカーが落ちたか?」
と思ったのだが、エアコンを使う時期ではないし、電子レンジなど負荷のかかる家電を使っているわけでもない。
「おかしいな」
と何気なくカーテンを開いて外を見ると、向かいのマンションも真っ暗である。ひょっとして停電か?
信号機やお店の看板などは明かりが灯っているものの、夜中の2時半という時間を考慮しても、あまりにどの家も電気が点いていない。
部屋のドアを開けて廊下に出てみると、エレベーターの電源が落ちていた。やっぱり停電だ。
廊下の電灯は点いていたが、スイッチを入れたり切ったりしてみても反応しないで点いたまま。これは非常電源みたいなものに切り替わっているのかも知れないなと思った。
心配なのは仕事途中だった原稿のことである。
ちょうど2ページ分ぐらいの原稿が書き上がり、推敲をしようと思っていたところで、すべての書類は保存してあったものの、突然電源が落ちたのでMacに負荷がかかったのではないかと不安だったのだ。
…と思ったところで、急に部屋が明るくなり、すべての家電が動き出した。しかし、
「ああ、よかった」
と胸をなで下ろしたのも束の間、たった10秒ぐらいでまた停電。こりゃ、重症だな。
30分ぐらい経ってから、東京電力に電話してみる。ひかり電話なので停電の場合は使えず、携帯電話からだ。こんな時、つくづくひかり電話は不便だと思う。
さて、電話がつながった。すると自動アナウンスが流れ、
「ただいま一部の地域で停電が発生しております」
と告げていた。ちなみにサイトにも行ってみたが、停電情報はなし。その後調べてみると、停電情報を流すと犯罪に使われる可能性があるため告知しないらしい。
そう言えば、停電後わりとすぐにパトカーが現れて、周辺をパトロールしていたが、停電を利用した犯罪を防ぐためだろうか。
我々が子供の頃には、日本の電気事情も不安定で、停電も今よりはもっとあったように記憶している。
台風が来ると分かっている日などは、昼間から停電してもいいように食料やロウソクの準備など、していたものだ。まあ、子供の頃は無責任だから、逆にワクワクしていたような気がする。
ところで久しぶりに停電というものを体験して、改めて真っ暗な状況がいかに不便であるかが分かった。
まずあまりに使うことがないので、懐中電灯の置き場所を忘れてしまい、焦った。手探りで探してみるが、あると思っていた場所にない。
そこで今度はロウソクをつけることにした。ところが、ロウソクのありかは知っていたものの、仕事場から居間に移動するのに時間がかかる。慣れているはずの自室なのに、このありさまだ。
そこで思い出したのが、机に置いてあったiPhoneの存在。
「確かこれに電灯の代わりになるアプリを入れておいたはずだぞ」
そう思ってホームボタンを押すと、それだけでもけっこう明るくなった。お目当てのアプリはFlashlight.(注意:iTunesが起動します)というやつだ。
さっそく起動してみる。真っ暗な状況だと、これでも十分な明るさだ。
やっとのことでロウソクのありかまでたどり着き、薄暗いながらも明かりを取り戻した。
結局、この停電は1時間以上続き(正確な時間は忘れてしまった)、その後回復した。ちなみにMacの方は問題なく立ち上がり、書類も無事でひと安心。
それにしても、こういう形の停電はいつ以来だろう。ちょっとだけ、現代人にとっての電気と生活について考えさせられる1時間の体験だった。