年の頃なら25歳ぐらい。もう少しいっているかも知れないが、まあそんなところだ。その男、棚に並んでいるスニーカーのひとつを手に取ると、じっくりと吟味し始めた。
先端から眺め、横からチェックし、そして裏返す。まあ、これぐらいのことは誰でもやるのかも知れないが、その男、今度は靴の匂いを嗅ぎ始めた。
「ええっ!?」
その衝撃の光景(というほどでもないのか?)を目の当たりにして、思わず自分のスニーカー選びもそこそこに、つい男の行動を目の端で追ってしまった。
男はまず靴の外側の匂いを嗅ぎ、さらにそれが靴ではなく酸素マスクであるかのように足を入れる部分に鼻を深々と突っ込み、クンクンと匂いを嗅ぎ始めたのだ。
たぶん、1人や2人は試し履きしたであろうその靴の匂いを嗅ぐことに何か意味があるのだろうか。その行為は靴選びに何か役立つのだろうか。ひょっとして、mojoの知らない画期的な靴セレクト法なのか? 20代ではそれがあたりまえなのか?
いろいろなことを訊きたくて仕方がなかったが、男が次の靴に手を伸ばし、同じように目で吟味したのちに、再び匂いを嗅ぎ始めたあたりで、通りすがりのmojoが入ってはいけない世界なような気がして、店を後にした。
そういえば、mojoの兄はインクの匂いが好きで、新聞やチラシ、新しい本などを開くと、よく鼻を近づけていたなぁ。そんなことを思い出した。
世の中は広く、香りの世界もまた奥深い。