立地条件も建物も、そして品揃えも、そこらへんにあるコンビニとなんら変わりはないのだが、ひとつだけ違うところがある。
それはレジにいるおじさん(店長らしい)が、品物にバーコード読み取り機を近づけるたびに声を出すのだ。しかも、店内に響き渡るほどの大きさで。
「100えーん、150えーん、370えーん」
と商品の値段を叫びながらレジを打つ。
最初は面食らったが、今はもう楽しくてしょうがない。その声を聞きたいがために、要らないものまで買ってしまいたくなるほどだ。
「77えーん、260えーん、145えーん…」
このおじさんが、なぜ声を出すのかは分からない。他の店員が声を出しているのは聞いたことがないので、店の方針というわけではないだろう。きっと、凡人には分からないような“何か”があるのだ。
しかしこれが値段ではなく品物名を大声で叫ばれたとしたら、恥ずかしい人も出てくるのではないか。
「ペヤングの焼きそば大盛り〜」
「焼きそばUFOマヨネーズ付き〜」
「一平ちゃん 屋台の焼きそば風〜」
なんて叫ばれたら、他の客に“あの人いつも焼きそばばっかだよね〜”なんて陰口を言われそう。あるいは、
「焼きそばひとつ〜、シャケのオニギリひとつ〜」
なんていうケースなら“炭水化物+炭水化物かよ!”と即座に突っ込まれるだろうな。
さらに困るだろうと想像できるのが、本を買った場合。気の弱いヤカラが、若い男性御用達の怪しいタイトルの雑誌など買おうものなら、店のあちちから冷笑を浴び、グサグサと突き刺さるような後ろ指を指され、涙をにじませながら走り去るしかないのだ。
いや、どうも話が飛躍し過ぎた。
とりあえず現状はそこまで切迫してはいないのだった。今は、“アイツまた安いものばっか買ってんなぁ〜”と思われるぐらいで済んでいる。安心である。
しかし今、mojoの目の前で初めてこのおじさんに遭遇したらしき若者は、明らかにたじろいでいた。おじさんにはケツの青い若者がつけ入るスキなどない。右手にバーコード読み取り機をかまえ、間髪入れずに1つ1つの値段を正確に読み上げる。
若者は、そんなおじさんの「読み上げレジ打ち」をポカーンと口を開けて見ている。勝ちか負けかで判断するのなら、若者は明らかな敗者である。
人生って、そういうものだ。
そんな様子を横目で見ながら、mojoは“また来るよ”と心の中でつぶやき、外へ出た。右手には、おじさんがていねいに品物を入れてくれたコンビニ袋。今度おじさんと、日本の経済の行く末について、じっくり語り合ってみたいと思った。