隠れファンキー


 妻がささやき声で言う、「パパ、来たよ!」
、どっちから?」 前を見つめつつ、できるだけ表情を変えずに聞き返す。
「ほら、対向車。あの白い軽のワンボックス。」
ちらと見て確認する、「あ、ほんとだ。。」

ステアリングから右手を離し、ナビ画面あたりにもってくる。そして、
親指を立てながら、
ファンキーッ!

小声で、けれどしっかりした口調で叫ぶ。
対向車線から向かってくる白い軽に乗った相手は とっぽい兄ちゃん風だ。
ルームミラーにはヤシの木をイラストした芳香剤が揺れている。
彼は、私のとったファンキー・アクションに全く気付くことなく走り去った。

 


把 握

 以前から気になっていたのだ。
ダッシュボード上に置かれた日の丸みたいなマーク。
政治関係?と思ったりもしたが近付いてみると、なにやらサインが書いてある。
あのDJで有名な(古くはベストヒットUSAのジョッキーで知られる)小林克也のサインだ。
そしてNACK5の文字。

 

ネットで調べてみる。
検索ワードは「小林克也 日の丸」 だ。そして謎は判明した。

・小林克也がパーソナリティを務めるNACK5ラジオ番組
・埼玉を中心としているラジオ局 、番組名は「ファンキーフライデー」
・投稿して番組で読み上げられると、小林克也のサイン入りの日の丸を描いた色紙をもらえる
・それをダッシュボードに置いておく
・同じようにそれを掲げた車と出会うと
・親指を立て、「ファンキーッ!」と叫びあう、それがならわし。

 さらにヤフオクで調べてみた。
すると出るわ出るわ、パチモン(=偽物)が。
確かにそうだ、一時は一日車を走らせると何十台ものファンキー車に遭遇したものだ。
そんなにサインをしていたら、小林克也はきっと腱鞘炎になってしまうだろう。

 ヲレも仲間になりたい、と思った。
しかしなんだか出遅れた感がある。
それに車のダッシュボードには基本的にモノを置きたくない。

 ちなみにファンキーステッカーにはいろんな種類が存在するらしい。
あんパンマンのバージョンとか、愛とか。
変異を遂げながら増殖していくようすは、生命体一般の活動と同じだ。



参加するか悩む。

 基本的にマイノリティ(=少数)が好きな性分だ。
だから「ファンキー!」とポーズしあうのは、
秘密を共有してる同士な気がして楽しい。
でも、旬はとうに過ぎていて、
ファンキー車を見かけても最近は、
「あ、またいるよ。」で終わりだ。
今さらその仲間入りするのもモチベーションが上がらない。

その時ひらめいた!

隠れファンキー。
そう、ファンキーぐるまを見かけたら、
相手から見えない位置で親指を立てるのだ。
そして小声で、だけどしっかりした口調で叫ぶ。
「ファンキーッ!。」
でもファンキーぐるまはこちらに気付かない。
なんだか、ちょっと悪いことしてるような気分。

そして、
我が家はこの隠れファンキーを、もう何ヶ月も続けている。
最近では、ママも一緒にファンキー!
時おり息子も一緒にファンキー!、心強い限りだ。
ただ、
小一の娘はばかばかしくてやってられない、という表情をしているが。


壮大なる隠れファンキー計画

 隠れファンキーが口コミで広がっていったら、
最終的にどうなるのか考えた。

全国の車総台数ーファンキーぐるま総数=隠れファンキーぐるま

ということだ。
いったい隠れファンキーぐるまは全国的に何百万台になるというのだろう。
想像も付かない。

ファンキーぐるまを見かけたら、
それ以外の車はすべて、
隠れファンキー!親指立て!

すごいことだ。
ふぁんきーぐるまに遭遇したカローラに乗ったおばちゃんも、
親指を見えないように 構えて「ファンキー!」と叫ぶ。
荘厳だ。

というわけで、
その布教の一環として、このページを見たら
隠れファンキーになっていただけますか?>ALL


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