プーさんのハニーハント、ウェス・モンゴメリー


 先日子供達を連れてディズニーランドに行ってきた。平日なのに相変わらずの人出で、アトラクションを体験しようにも60分待ちとかはザラだった。一番空いていたのは入って右側すぐにあった「meet the world」。とりあえず入ってみたものの、小中学校の時に学校の講堂で半ば強制的に見せられた文部省推薦フィルムのようで、今ひとつピンと来るものがなかった。
 そんな中、一番混んでたのが「プーさんのハニーハント」というアトラクションだった。80分待ちという札が長い間出ていた。子供達にとって、特に二歳のららにとってはプーしゃん(と彼女は言う)がまさに旬。家にはプーさんのパソコンソフト、ぬいぐるみ、グッズが溢れ放題なのだ。まあ最後には空くと思って、閉園の一時間前の9時頃まで待って「プーさんのハニーハント」に向かった。すると昼間ほどではないにしろ、相変わらずの行列。「なんでこんなにここだけ流行ってるのかなぁ」そう思いながらも、ここを行かずして帰宅しようものなら子供達の非難を猛烈に浴びること確実だったので、やむなく並んだ。そして数十分後、パパは予想をはるかに超える感動を得ることになるのである。
 足が棒になるほど並んで、ようやく蜂蜜の容器のような乗り物に座り、いよいよプーしゃんの世界へ。
 数台ごとにまとめて出発し、いろんなブースへと旅していく。普通のアトラクションだと、レールに沿って順番に体感していくトロッコ型なので、大体の予想はつく。しかしこのハニーハントは全く違った。
 まず、レールらしきモノが全く無い。床はただの床なのだ。「やはり誰かが遠隔操作で操縦しているのか。」そう思わせるほど数台の乗り物は交錯しあい、順番が入れ替わりながら、そして360度以上回転しまくりながら、予想もつかないランダムさでもって次々とシーンを進んでいく。
 ティガーのところでは、ティガーお得意のハネる動作に応じて、乗り物もピョンピョン跳ねる。そして夜空のシーンでは、星達が立体的に見える宇宙に満たされた。
 大人の哀しさか、色んなことが頭をよぎる。
「一台ずつラジコンで操縦か、ううむ恐るべしテクニックだ。でも待てよ。もしそうなら1回くらいは他の乗り物とぶつかったりしてしまうものだし。」
「床から強力な磁力線が出ていて、それで制御されてるのか」
「ふぅん、確かにイヤリングはハズしてください、と言ってたしな、磁石に引っ張られて耳が裂けることの無いようにという配慮か。。おおこわっ。」
「いや、でもこの軽快さは自走式かな。」
「もとい、カーナビの誤差を見てわかるように、自走式ではきっとずれてしまうはずだ」
「まさかGPS?。んなアホな。。」
…と考えは巡るものの、舞台の裏側を覗こうとする思いよりも、アトラクションとしての楽しさが完全に感覚器官を支配していた。
 会場を後にした時、子供達に何が楽しかったか、聞いてみた。「プーしゃ、ハニィ、ハ、ト」。ららが一生懸命答える。ディズニーランドには何回か来ているが、この感動は今までの種類と違って、もっと本質的なものだ。スターツアーズも確かにおもしろい、しかしああいうのは、テク的にすごいだろ?というのが露出している、というかそれがウリでもある。そして、我々もそのテクノロジーの凄さ加減に対して感動している節がある。80年代ヘビー・メタルの、「この曲のギター・ソロは、両手を使った超高速タッピングで弾いている」「ほんとだ、うぉー、すごいぜ!」みたいな。
 それに比べるとプーさんのハニーハントの感動はもっとピュアだ。意外性、軽妙さ、ストーリー、どれも卓越していて、しかもそれらがたぶん最先端技術の下支えでもって、実現している。何百人と乗れるあの蒸気船や、カリブの海賊のアトラクションなどは、なんか資金次第ではどっかのリゾート村でも実現できそうな気がする。しかし、おそらくこの独創的なプーしゃんの乗り物と同じレベルのアトラクションは、ディズニーランド以外では実現不可能な気がするのだ。
 話は変わるが、僕にとって究極のギタリストは、ウェス・モンゴメリーだ。聴いている限りはこの上なくスウィートで、たまらないのだが、いざコピーしようとすると、その難しさに圧倒される。ピックでさえおぼつかない速いフレーズを、あろうことか全て親指で弾いているのだ。10年がんばった!とは言えないので大きなことは口に出来ないが、どうあがいても無理、と思えるぐらいのレベルにウェスは、いる。そして、彼の素晴らしさは、その技術を感じさせない音楽的な素晴らしさにある。ギターに関して全くわからなくてもウェスの音楽が好きという人を何人も知っている。そこでプーさんのハニーハントなのだ。「プーしゃん、プーしゃん!」と何度も言いながら目を輝かせている子供らの顔を見てると、ハニーハントこそはまさにウェス・モンゴメリー、という気がしてくるのだ。技術がなんのためにあるのかをちゃんとわきまえてるような。
 音楽として純粋に感動を与えながらも、楽器弾きとしては、実はもんのすごいことをやっている。楽器弾きを超えた、本当のアーティストってそういうことなのかな。ライトハンドの新技を覚えては友達に自慢していた高校時代が懐かしいなぁ。僕もいつか、テクを超えた次元で音楽を伝えられるようになれたらいいな、と思う。そのためにはまだまだ自由に楽器弾けてないから練習か。。まそれもほどほどに、また子供達連れてプーさんのハニーハントへ行こうっと。