「確信」

 毎週火曜日はヤマハ池袋のレッスン。最近は車で行くことも少なくなって、もっぱらチャリで石神井公園駅に行き、電車に乗る。
 今日もいつものように駅へ向かった。ショートカット的細い道の途中、歯医者さんと工事中の幼稚園あたりにさしかかった時、身体がすぅっと伸びていくような、晴れ渡る瞬間を感じた。

確信したのだ。

「少なくともモナコ国王よりも幸せだ。欲する何もかもがある」

 数日前から茨城の実家より家族が戻ってきていた。夏前に実家に戻った時よりも一人増えて。昨日、まゆたんが銀行へ出かけてくると言い残していなくなった数時間、ららと二人きりになった。ららは抱っこしていると10分ぐらいで眠りにつく。布団に彼女をそっと置き、原稿書き。しかし10分ぐらいするとまた抱っこしてくれといって泣き出す。そしてまた彼女を抱きかかえて玄関とかをうろうろと散歩する。それを繰り返すこと十数回。やっと妻が舞人と共に帰ってきた。「救われた」かのような気持ちになったが、さっきの抱っこの繰り返しも悪いものでは無かった。舞人は四六時中、「パパ、こっち座る」と言って足元にからみつく。トミカで遊んでいる時、ふと気が向いたらららの横に行き、彼女の頬をなでる。優しいお兄ちゃん。
 少なくともこれ以上の幸せが見あたらない。世界で一番の幸せ者と言えば、僕を指す。よく笑う息子と、じっと見つめてくる娘、そして、優しい顔で母乳をあげる妻。野望などというよりももっと強いもの。
さっき、寝室のふすまを開けたら、舞人は布団の端からはみ出て、まゆたんは口を開けたまま眠り、ららはもぞもぞ動いていた。今後、日々に追われながらぐちのひとつも言い合うような瞬間が来ることもあるかもしれない。でもきっと、あと百回生まれ変わったとしても、真由美と結婚し、舞人とららを授かることを願うだろう。どうしようもない人間のこの僕が、こんなにもハッピーで生きていけるなんて、他に何を望むって言うんだい?そんな感じなのかな。