あの窓にエール。
娘が生まれた病院は我が家から徒歩五分ほどの場所にある。高台にあるので、我が家の寝室からはその病院と、庭に咲く桜がよく見える。春先に咲く桜はとてもきれいで、なかなかいい借景だねえと常々思っていた。
その病院に入院していよいよ娘が生まれるというとき、立ち会い出産を希望していた私は妻と一緒に陣痛室へ入った。陣痛室では本当にいろいろな経験をして、いろいろなことを学び、考えたのだけれど、そのことはまたいずれ書きたいと思う。
陣痛室で迎えた夕暮れ時、助産師さんが「二人で見る最後の夕焼けですね」といって、窓のブラインドを開けてくれた。窓から見えた、自分たちが住んでいる町並みの中に、ちょこん、と我が家も顔を出していた。そうか、あの寝室から見える部屋はここだったんだね、と、妻と二人、とても不思議な感覚に包まれたのを今でも良く覚えている。
あれから半年経って、夜半に寝室の窓から外を眺めると、時折あの病室の窓に明かりが灯っていることがある。今夜も誰かがあそこで頑張っているんだ、あの、娘が生まれた場所で、今も新しい命が生まれようとしているんだと思う。
顔も名前も、あなたがどんな人か何も知らないけれど、窓の明かりを見るたびに、心のうちでエールを送っている。がんばれ。とても大変だと思うけれど、世界で一番素敵な瞬間まで、あとほんのもう少し。——がんばれ。
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- 8月 14, 2004 at 07:35 午後