神曲法廷 山田正紀


山田正紀というとどうしてもSF作家のイメージが強く、「ミステリ・オペラ」を読んだ後でもその印象は変わらなかった。
確かに、謎に対する合理的な解決という、ミステリとしての落とし前はきちんと付けているが、根底に流れている不可思議な感覚は読了後も消えず、ああやっぱり山田正紀だ、というのが感想。

舞台設定からして幻想的な「ミステリ・オペラ」に比べると、この「神曲法廷」は、東京地裁で起きた密室殺人とそれを追う検事、という現実的な舞台設定。
ところが、主人公の検事・佐伯は精神的に不安定な状態であり、ダンテの「神曲」を読みふけりつつも、つい先日まで精神科医へ通っていたという状態。そんな彼があるとき「正義を果たせ」という神の声を聞く・・・

彼が聞いた神の声が、不安定な精神が生み出した単なる幻想なのか、それとも本当に彼が「神懸かった」のかは明かされず、主人公も読者も不安定な精神状態のまま、捜査と推理が行われていく。この不安定さは最後まで解決される事はない。

快刀乱麻の推理物語とは全く逆方向のベクトル。ディックの現実喪失感覚に近い。
でも、だからといってメタレベルに流れてしまう訳ではなく、正真正銘の本格ミステリとして面白いと断言できる、そんな作品。

4062730537神曲法廷
山田 正紀
講談社 2001-01

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それにしても、「女囮捜査官シリーズ」、ずっと再販されないままだけど、なんとならないですかね。

Posted: 日 - 9月 18, 2005 at 03:19 PM           |


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