骨粗鬆症とビスフォスフォネート製剤について
  内容
   1.脊椎骨にみる骨粗鬆症の粗大構造の変化(写真)
   2.骨の微細構造の模式図
      正常
      骨粗鬆症
      骨軟化症
   3.骨代謝回転にみられる骨粗鬆症の状態
   4.ADFR(同調)療法
   5.ビスフォスフォネート製剤の働き
   6.骨基質のガラス化について
   7.日本人のステロイド性骨粗鬆症:投与量との関係
  1.脊椎(背骨)の断面
上段:加齢による変形性脊椎症性変化はあるが、骨梁はよく保たれ、比較的良好な骨の状態である。骨皮質も厚みがある。(骨粗鬆症の初期)

下段:骨皮質は薄くなり、骨梁も細く、まばらとなっている。完全な骨粗鬆症の状態にある。

  2.骨の微細構造の模式図(鉄筋コンクリートに例えて)
正常の骨の微細骨構造の模式図
コラーゲン繊維を‘鉄筋コンクリート’の鉄筋のようにして、これにカルシウムやリンなどのミネラルがセメントのようにほどよく取り巻いている状態
骨粗鬆症の際の骨の微細構造
骨に含まれる(単位体積あたりの)骨組織の量が全身的に正常範囲を超えて減少した状態

鉄筋コンクリートの鉄筋もセメントも均一に薄くなった状態

骨軟化症(osteomalasia)の状態
骨の質的変化を伴った骨量の減少:鉄筋コンクリートの鉄筋が残りセメントだけが剥がれ落ちた状態

例:骨折した部位の周囲の骨萎縮

  3.骨代謝回転にみられる骨粗鬆症の状態
骨代謝(リモデリング)を局所的にみた場合、左図のような骨代謝回転の中で破骨細胞と骨芽細胞が連携して働いている。

骨粗鬆症では骨吸収(破骨細胞の働き)が骨形成(骨芽細胞の働き)を上回っている(若年成人の正常では、両者のバランスがうまくとれている)

  4.ADFR(同調)療法
ダイドロネルは骨吸収抑制剤として3ヵ月(12週間)のうち2週間用いられる。これの休薬期間はビタミンDやカルシウム剤を投与する(ダイドロネル服用中も通して服用してもかまわない?)。ダイドロネルにより強く骨吸収を抑制し、この代謝のリバウンドを利用して活性化を促す。
  5.ビスフォスフォネート製剤の働き
 ビスフォスフォネート製剤の基本的に大切な性質として「骨基質に強い親和性」を持っています。つまり、体に取り込まれるとすみやかに骨組織を主な居場所として集まってきます。
 現在日本で使用されているエチドロネート(ダイドロネル)とアレンドロネート(ボナロン、フォサマック)やリセドロネート(ベネット、アクトネル)では同じビスフォスフォネート製剤でもその作用機序に違いがあります。
 もともとダイドロネルは‘異所性骨化’や‘化骨性筋炎’の治療や予防のために用いられていたお薬です(現在もこの目的で使用されています)。ただし、この場合には骨粗鬆症の治療の場合とはまったくことなり、相当の多量を用います。これにより少量使用の場合とは違って骨基質の石灰化障害を強く起こし、一種の骨軟化症のような状態に導くものです。
 リセドロネートやアレンドロネートでは、(1998年のLuchmanらの報告によると)「メバロン酸代謝の阻害を介して破骨細胞の機能障害やアポトーシス(細胞死の形態の考え方?)を誘発することによって骨吸収の抑制がおこる」と考えられています。
 これに対してエチドロネートでは、細胞内のATPに関係する部分で:アミノ酸+ATP→アミノ酸・AMP+PPiの部分を阻害する:ことで細胞毒として作用することが知られています。
 エチドロネート:ダイドロネルだけが2週間のんで10〜12週間休薬するのは何故でしょうか。その理由の第1は1979年にFrostが提唱したADFR療法としての使われ方が考えられたからです。第2は大量投与した場合にみられる骨基質の石灰化障害を防止するためです。
 リセドロネートやアレンドロネートもこうした間欠的投与を行ったらどうなのでしょう。こうした研究もきっとなされていると思いますが、実際の報告は残念ながらしりません。
  6.骨基質のガラス化について
 ビスフォスフォネート製剤の作用が骨吸収の抑制(破骨細胞の働きの抑制)だけにあるとすると、当然正常な‘骨改変’(骨の作り替えと修復)が起こらなくなりますので骨構造は硬いガラス状の組織に変化してしまいます。
 エチドロネート:ダイドロネルの間欠投与ではもし本当にADFR療法として効果を現しているなら、正常な骨改変がより良い方向で起こりますのでこうしたガラス化は起こりにくいことになります。
 リセドロネートやアレンドロネートを何年も続けた場合、どの程度骨構造のガラス化が起こり、これによる骨格としての働きにどの程度の影響がでるのかについてはまだ明らかではないようです(2005年11月時点)。
 塩酸ラロキシフェエン(エビスタ:選択的エストロゲン受容体モジュレーター(Selective Estrogen Receptor Modulator:SERM)についてはこの現象は起こらないと言われています。ただ、基本的に閉経前に用いることについては異論がありますので現在のところ、ステロイドを使用しているという理由で閉経前の方に投与するのは問題があるのかもしれません。
  7.日本人のステロイド性骨粗鬆症:投与量との関係
 アメリカリウマチ学会の指針では、プレドニゾロン換算で5mg/day以上の量を3ヵ月以上継続投与する場合には、積極的にステロイド性骨粗鬆症の予防のためにビスフォスフォネート製剤を投与するよう示されています。
 日本でもしきりに検討が進められています。宗圓 聰先生の記述では国内の関節リウマチの患者さんについては、ステロイド投与により明らかに骨量減少を起こしたことが確認されたのはプレドニゾロン換算で7.5mg/day以上だったとされています。
 宗圓先生も書いておられますが、リウマチではステロイドの投与により症状がかいぜんし、身体活動が活発にすることができるようになり、結果的に骨密度が増加した例もあるとのことであり、ひとりひとりついてみた場合にはどの程度の量のステロイドが明らかな骨粗鬆症につながるかは、かなり予想しづらいかもしれません。
 そこでステロイド投与開始時から骨密度を6〜12ヵ月程度の間隔で検査しておくことができれば一番良いのかもしれません。