ベトナムよいとこ
ベトナムよいとこ (その1)
  歳をとって保守的になったのか、知らない土地をウロウロするよりも、行
き慣れた土地でのんびり過ごしたいと思い、ベトナムに来ました。自分に合っ
ているんだろうと思います。中国ほど腹が立つということはないし、インドネ
シアみたいにあまりに親切すぎて拍子抜けする事もないし。適度の不快と刺激
があるようです。食事が合うというのもありますが。でも、うまいと思うのは
華人が営む食堂の食事です。

  さて来るたびにチェックしているカフェの女の子のファッションですが、 3年前はブル ージーンズにTシャツというシンプルな軽装、2年前はスリッ プドレスで、バイクのシートに乗って足を組んでいましたが、今年はチビT (ピッチとしたTシャツ)に黒のスリムジーンズまたはパンツ、そしてミュー ルか厚底サンダル、と日本の女の子のようになっていました。通い続けている カフェの人妻風女主人も、若い子に負けじと同じ格好でがんばっていました。   2日ほど、メコンデルタのカントーに行って来ました。メコンの河口に面 したきれいな街で、早朝の水上市場は壮観でした。でも、美しかったのは、サ イゴンのホテルのバルコニーにたたずむ、アオザイ女性の後ろ姿でしょうか。 風になびく黒髪とアオザイ、いやあ美しい。やっぱりその筋のプロはちがいま すな。                                          サイゴンにて (にしむら)
ベトナムよいとこ (その2)
ベトナムは今、どーなってるの?
  8月に恒例となったベトナム訪問を行なった。訪問地はハノイとサイゴン
の2都市だけだが、8カ月ぶりのベトナムはどうなっていたか、その模様をお
伝えします。

1) ハノイ

  8月のハノイは初めてだが、なんともまあ蒸し暑い土地である。太陽は出
ていないのに、少し歩いただけで、Tシャツが肌にベッタリくっつくくらい汗
をかいてしまう。曇り空の日ばかりだったので、東京ほど暑くはないのだが、
不快なことこのうえない。

  今年になって10万ドン(約800円)紙幣が登場した。従来までの最高額
紙幣は5万ドン紙幣なので、その倍だ。つまり、インフレが進行しているとい
うことなのか。サイゴンでは確かにコーヒーやうどんが、今年の1月に比べて
約1千ドン値上がりしていた。しかし、ハノイでは物価が高くなっていると印
象はなかった。

2) ハノイ「ベトナムの声」

  日本向け日本語短波放送を行なっている「ベトナムの声」放送日本語課を
2年ぶりに訪問。現在、局舎を新築中とかで、同じバーチュウ通にある建物に
仮住まいしていた、長い間課長の職にあった女性のマイさん(本名グエン・テ
ィ・トゥエット)が定年で退局し、後任にはホアイさんが就いていた。ちなみ
にマイさんは退局後、日越友好協会(共産党系)の招きで来日し、1カ月にわ
たり日本を旅した。この時の費用はカンパで賄われ、僕のところにもカンパ金
の依頼が来たので、2年前にお会いしたこともあって、少額ながらカンパした。
マイさんの下にはこの道35年のロアンさんというこれまた女性で副課長がお
られるのだが、なぜかホアイさんが2階級特進で課長となった。ホアイさんは
日本語課に入って約20年、北朝鮮への留学経験がある。

  人事面では他に、2名の新人が入局していた。1人は日本に留学中、もう
1人はスーンさんという、大学の日本語学課を卒業した男性。マイクデビュー
はこの秋とのことだが、彼が作った放送原稿は、使う単語に少し間違いがある
程度で、文法は完璧だった。僕の話し相手になってくれたアンさんは、受け持
つ番組数も最も多く、日本語も達者だ。将来の課長候補最右翼という感じがす
る。こちらの仕事は、同局の記者が作った原稿を翻訳して読むというのが主な
ため、会話も自然と文語調になってしまう。「現在ベトナムにおける最大の懸
念は」「・・・なのです」「・・・しているのです」といった、普段まず使わ
ない言い回しが出てくるので、聞いているこちらもつい「なるほど、それは大
きな懸念材料ですね」などと応じてしまう。

  本棚には日本語課に訪れた人たちが持って来た本が並んでいるのだが、高
校の教科書とか『文芸春秋』だとか、およそ一般的な日本人でさえ興味を示さ
ない本が大半を占めていた。今回僕も『婦人公論』『nonno』『Luci』などの
女性誌を持って行った。女子アナのハーさんは『nonno』を食い入るように見
ていた。カラーページが多い日本の雑誌は新鮮なようだ。

  アンさんとホアイさんによると、今年のベトナムは2年前の自然災害(お
もに北部の干ばつ)による経済的打撃からようやく立ち直りつつあるところだ
という。日本ではベトナムの自然というとメコンデルタばかりが表面に出て来
て「豊饒」という言葉で安易にくくられがちだが、実際には自然災害に毎年の
ように苦しめられている自然環境の厳しい土地なのだ。確かに米の輸出量はタ
イに次いで世界第2位で、コーヒーの輸出量も順調に伸びていることを考える
と、豊かなことには変わりないのだろうが、中南部の台風は、各都市を水浸し
にし、北部は冬の干ばつに悩まされているのが現状だ。

  最後に、アナウンサーのどなたかにインタビューしたいとお願いしたのだ
が、上層部の許可を取らなければならないのでちょっと難しいと言われた。
「私たちは公務員なので、上の許可がないと雑誌のインタビューなどには出ら
れないのです」と文語調で言っていた。僕も「それは私にとって非常に残念至
極です」と堅い表現で応じるしかなかった。2年前に来た時はマイさんが気軽
にインタビューに応じてくれたのになあ。オープンにいろいろ話してくれたし、
開かれた印象をもっていたのだが。このへんは人の器の違いとでもいうべきな
のだろうか。

  いつまでも仕事の邪魔をするわけにはいかないので1時間ほどで失礼させ
ていただいた。別の部屋を通った際、私好みのゴクさんが立ち上がってあいさ
つしてくれた。ショートだった髪を伸ばし、ポニーテールにしていた。これが
またなかなかである。インタビューを取れなかったのが残念だったが、ハーさ
んとゴクさんに会えたのでとりあえず納得しておこう。

カラベラホテルの20階からサイゴン河を眺める
サイゴン市内の交通事故現場
3) サイゴン「バイク事情」   サイゴンはカラリとした気候で、実に快適だった。冒頭にも書いたが、こ ちらはこの8カ月の間に物価が約1千ドン値上がりしている。ハノイでは値上 がり感がなかったことを考えるとやはり経済の中心地はサイゴンなのだと実感 する。第一印象は、タクシーが増え、シクロがかなり減ったということだろう か。初めて来た4年前は、外国人とみるとシクロが寄って来て、無視している のに何百メートルもつけまわされたりしたものだったが、そういうことは全く なくなった。彼らがシクロ以外の生活の糧を得られるようになったのか、市当 局のシクロ排除政策で仕事を失いつつあるのか。   また、2車線の道路では車レーンとバイク及びその他の車両レーンに分け られていた。車が増えているのに車レーンが1車線しかないから、車の方はな かなか進まない。おかげで空港から市内までえらく時間がかかるようになって しまった。朝のラッシュ時以外はバイクレーンは空いているのに。今回の訪問 でまず目についたのは、バイク事故の多さだ。もともとこの国は交通事故が多 いのだが、それにしても今回は頻繁に見かけた。サイゴンのバイクの多さはは 皆さんもご存知かと思う。特に朝の通勤時にはバイクだけで上り線が交通渋滞 を引き起こしてしまっているほどだ。   日本のテレビによく映し出されるベンタイン市場前のロータリーなんかは 、どいつもこいつもてんで勝手に走っているようで第三者から見ると危険極ま りない場所に見えてしまうことだろう。しかし、実際にバイクに跨がっってサ イゴンの道路を走ってみると、そこそこ秩序だっていて、流れに乗って走るぶ んにはそれほど危ない場所ではない。バイクの数は少ないがハノイの方がよっ ぽど危険なのだ。とにかく、あっちの連中はいきなり路地から飛び出すわ、間 に合いそうにないタイミングで右折をかまそうとするわ、僕は何回もパニック ブレーキをかけさせられた。事故のケースとしては正面衝突が最も多かった。 そこそこ秩序だっているとは言え、未だに走行車線を逆走する輩がいたりする。 そんな輩と正当に走っている人が、互いを避けようとしてお見合いをしてしま いガチャンとやってしまうようだ。事故増加は最近の日本製バイクの高性能化 も拍車をかけているように思う。2〜3年前までは、日本製バイクと言えばホ ンダのドリームが独占していたが、ここのところ他社メーカーのスクーター風 高速バイクが増え、それに負けじとホンダがフューチャーという車種を投入し た。一度レンタルバイク屋で借りて乗ったことがあるが、日本国内で売ってい るスクーターとパワー、加速、スピードすべて遜色がない。特に反応の良さは、 いろいろなものを避けながら走らねばならないサイゴンの街では威力を発揮す る。しかし、やっぱり危ないとも思う。急加速したとたんに何かが目の前に飛 び出してきて、ガチャンともなりかねないからだ。そんなことは、サイゴンで は普通に起こり得る。   僕の勤めている会社の社内新聞には「バイクの大量輸出は交通戦争を輸出 していることになるのではないか」との意見が載っていたが、確かにそれは言 えるだろう。日本の各メーカーはそのへんのフォローも考えていくべきだと思 う。                                                     (にしむら)
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