マッチポンプなIT投資擁護論に関心する 


今発売中のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(2004年2月号)に掲載された「ニュー・エコノミーの真実」(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート ディレクター ダイアナ・ファレル著)が、90年代を振り返って、労働生産性の向上とIT投資には相関性がなかったと書いています。

 


論文をダイジェストすると……

アメリカの労働生産性は90年代後半急上昇したが、実態を詳しく調べてみると、生産性とIT投資の間に相関関係はほとんどみられない。
生産性の上昇率は業種によって大きく違い、実際のデータで顕著な上昇が見られたのは「小売り」「証券」「卸売り」「半導体」「コンピュータ」「電気通信」の6ジャンルであり、これらの業種がGDPに占める割合は、約30%にすぎないが、アメリカ国内における生産性の純増分に占める割合は76%に達している。
だが、これはIT投資によるものというよりは、競争の激化がもたらした結果であり、規制や参入障壁のある業種では、競争力が弱まり、イノベーションも起こらず生産性も向上しなかった……

としています。(どこか20対80のパレートの法則を感じさせる議論ですね)。

そう90年代のITバブルを総括した上で、にもかかわらずそれら6業種においてITがイノベーションを促進したのは、集中的な情報処理への依存度の高い業種だったとして、その特徴を以下のようにまとめています。

●取引件数が膨大なところ。
●業務のプロセスが複雑なところ。
●最新技術製品を提供するところ。

しかし、そうした6業種の企業の中にも、IT投資から大きな効果をあげられなかった企業は多く存在する。だが成功した企業の活動を分析すると以下の3つの点で他社と違っているというのです。

●生産性向上のテコとなる分野にIT投資を集中した企業
●IT投資の順序を慎重に検討し、節度をもって投資した企業
●経営陣が先頭に立って、IT投資の効果を引き出せるよう業務プロセスの改善や経営慣行を改善した企業

詳細については同論文をお読みいただくとして、私が注目するのは、ITの導入をすべての特効薬とするような一時の興奮状態が収まってきている論調です。ITは所詮手段や道具に過ぎない。問題はその使い方だという当たり前の話に戻ってきている。しかも著者はこれまで盛んにITを持ち上げてきたマッキンゼーの人。

まあ、状況の変化をすばやく読み取ってそれなりに位置づけるのがコンサルの仕事とはいえ、お上手な論調です。このくらいしたたかなマッチポンプな議論を展開しないとあちらではやっていけないんでしょうね。関心しました。 


Posted @ 木 - 1月 15, 2004   01:26 午前
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