「知りながら害をなすな 優良企業はCSRで生き残る」
連休前、Blog休眠の言い訳に使った単行本の見本が上がってきました。 ほっと一息です。 共著で、僕は全体構成とリライトを手がけました。共著は普通の倍のエネルギーを使います。 書き下ろしとは違って、人の文章に手を入れて全体の文体を統一するのって結構大変だからです。 しかも今回は構成まで手がけたので、内容を調整するのに一苦労でした。 本のタイトルは「知りながら害をなすな 優良企業はCSRで生き残る」(佐久間健+ダイヤモンド社企業情報編集部著 ダイヤモンド社刊 2800円)。 「企業の社会的責任(CSR)」を論じたものなのですが、値段も高いし、一般的には手を出しにくいテーマのものなのですが、このコーナータイトル「企業は顧客からリンクしてもらえる関係を作れるか」とも微妙に関係する話題なので宣伝を兼ねて序章を公開しておきます。 興味を持たれた方は、お買いあげください。10月19日頃には大型書店やアマゾンで手に入ると思います。 また、後日、アマゾンに出たらリンクも貼ります。
「知りながら害をなすな」というタイトルは、2500年前のヒポクラテスの誓いからもってきたものです。プロたるものは、知りながら害をなすことはない。そう信じることができない企業社会などクソ食らえという思いを込めて付けました。最近の企業不祥事を見ていると、いったいプロとしての意識はどこへいってしまったの?と言いたくなりますよね。そうした現状への批判を込めて、このタイトルを付けました。まあとにかく序文を読んでください。だいたいどんな本なのか、検討はつくと思います。「序章」より 20世紀末から21世紀にかけての時代の大きなうねりは、単にモノサシとしての世紀が代わった以上のものを感じさせる。おそらくそれは大きなパラダイムの転換期として、後世、産業革命時のダイナミックな歴史転換と並び称されるだろう。 こうした状況の変化は、企業活動のグローバル化や、地球環境問題、情報社会の確立などいくつかの複合的要因によって生まれてきたが、企業の社会的責任論(CSR:Corporate
Social
Responsibility)はその象徴的な存在だ。 ◆会社は誰のものか ◆ CSRの根源的なところには、会社はいったい誰の信託を受けて監督・執行されているのかという問題が横たわっている。 企業を所有しているのは株主であるが、昨今ではその株主は少数の資本家ではなく、個人の年金を預かる年金基金のような機関投資家や、大衆投資家になってきた。時には従業員が株主の一部を構成することも不思議ではない時代になってきた。 企業は確かに株主の信託を受けた占有者である経営者によって監督・執行されている。だが、その会社の絶対的所有者である株主の質が変化してしまっているのだ。 その結果、企業は一部の資本家のものではなく社会のものだという認識が受け入れられるようになった。つまり、企業は社会を構成するステークホルダーによって認められてはじめて存続可能となるという考え方だ。 CSRを実施するにあたっては、コーポレート・ガバナンスを問われることになるが、このテーマも深く追求すると企業経営は誰の信託を受けて監督・執行されているのかという問題にぶつかる。 企業の社会的責任(CSR)を定義することは本書の目的ではないが、とりあえずそれは、企業活動において、公正さを保ち、企業倫理を遵守し、透明性が高く環境へ配慮した経営を行っていくことであるとしよう。 ピーター・F・ドラッカー流にいうならば、そうすることによって、企業ははじめて利潤の極大化のみを追求する組織体だとする企業観を非現実的なものとして排除することが可能となる。 そして、企業の存続成長という制度的な目的を経営本来の中心課題である「顧客の創造」に転換して実現することが可能となる。 また、顧客の創造にあたっては、安全で良質な製品・サービスを提供することが眼目となる。 そして、その過程全般にわたって、各ステークホルダーとの利害を調整し、満足感を高める努力をしていくことが必要となる。 それが企業としての社会的責任の遂行につながる。 つまり、企業を存続させ、社会を持続させるためにも、株主への業績に関する責任だけではなく、消費者に対しての品質保証、従業員に対する社会的保障、取引先への気配り、地域社会や環境に配慮した経営が必要だというわけだ。◆ストックホルダーからステークホルダーへ◆ ステークホルダーとはストックホルダー(株主)を含む「利害関係者」を指す。 具体的には、株主、顧客、従業員、取引先、地域社会、政府など、企業存続に必要不可欠な人々のことだ。 そしてその言葉が使われる多くのシーンではストックホルダーだけを意識して経営するだけでは社会の一員としての企業責任を果たすことにはならないという意味が込められている。 企業とステークホルダーとの関係は相互的なものである。 そのため、企業の社会的責任遂行活動においては、企業と各ステークホルダーとの十分な相互コミュニケーション活動が必要となる。 おそらく多くの経営者はCSR活動は、ひところの環境問題と同じように、めんどうで費用のかかるものだという考え方に陥るだろう。そう考えはじめると、さまざまなCSR活動が余分なコストに見えてくる。だが、その考え方は捨てたほうがよい。 そして、ステークホルダーのプラスになるための経営資源の投入は、本来企業活動を営む上での応分の負担、あるいは投資と考えたほうがよい。 CSR活動は結果的には企業の業績、利益と成長にも結びつくと考えられるからだ。 そのような認識があるからこそ、欧米で企業の社会的責任が新しい企業戦略として注目され、社会からも支持されるようになってきたのだ。 EUは、企業の社会的責任の遂行がEUの社会的結合・統合にとっての重要なテーマだと考えている。それは、企業の社会的責任の遂行が、EU統合を促進する基盤となり、経済的安定をもたらすと判断しているからだ。 たとえば、2002年に発行されたドイツの大手電機会社シーメンスの「企業責任報告書」には以下のように記述しているところからもそれが窺える。 「企業の持続的な成功の基盤は、四半期や年間の利益だけではない。長期的な企業の取り組みやステークホルダーとの対話も重要である」◆存続と成長のバランス◆ CSRはグローバル時代の企業戦略だ。持続的社会の実現を図ることなしに企業は存続しえないし、存続を維持する以上、企業は成長を目指さざるをえない。 この存続と成長という二つの命題をバランスよく舵取りすることこそ、経営者の課題であり企業戦略なのだ。 先に紹介したシーメンス社では、監査役会と取締役会が経営の監督と執行を分離するドイツ企業の伝統的な企業統治にプラスして、社外の人材、従業員、組合代表などが参加する監査委員会やエグゼクティブ委員会などを監査役会や取締役会とは別に設置してグループの監督機能を高める努力をしている。 また、「持続的成長のためには、利益とモラル(倫理)は相反しない」と企業責任報告書の発行に先駆けて従業員の「行動規範」も策定している。 この中で、金品授受やインサイダー取引、データ保護などについて法律を上回る規定を明示して、従業員のみならず取引先などサプライチェーンにも同じ対応を取ることを求めている。 不祥事を起こせばたちまちにして社会から批判されたり、株価を下げることになり組織を継続的・安定的に保つことは難しくなるからだ。◆CSRの適正な実行は企業の利益に影響する◆ 世界の企業の経営者はCSRについてどのように考えているのか、世界経済フォーラムとプライス・ウォーターハウス・クーパースが共同で行った調査がある。 それによると約70%のCEOが「CSRの適正な実行は企業の利益に影響する」と回答し、CSRがグローバルな潮流であることを認識している。 企業の社会的責任についての企業行動を報告または表示する方法としてCSR報告書がある。この報告書は将来、年次報告書と同等の重要性を持つものになるだろう。 CSR報告書は、環境報告書をベースとして、環境だけでなく、企業の財務的側面、社会的側面などから企業の活動現状を報告するトリプルボトムライン報告書へと進展し、サステナビリティ・レポートと呼ばれるようになった。 欧米では社会への責任を果たしていることをステークホルダーに報告する接点として、社会的責任報告書とかCSRレポートを発行するのがごく普通の状況になっている。 そしてその内容も企業の透明性を強調するものになりつつある。 情報開示を積極的に進め企業の透明度を高めることは結果として企業危機のリスクを下げることになるという認識が定着しはじめているのだ。◆CSRのメリット◆ その背景には、事後対応で危機が発生してから対処する危機管理では今日的状況に対応できないということがある。事前にさまざまなステークホルダーの視点で考え、個々の危機がどのように相互連関するかを総合的に捉え対応を考えないと、実際の危機に際して適切な対応ができない。 CSRの持つ視点は社会的問題になりそうなテーマについて事前対策を考える際のいいガイドラインとなる。そういう意味ではCSRは危機管理の一環と見てもよいだろう。 一般に、CSRに取り組むことによって、企業は以下の六つのメリットが得られるとされる。 ・組織の継続的・安定的な成長 ・社会からの信頼性の確保 ・グローバル市場での企業競争力の向上 ・効果的な企業倫理とコンプライアンスの確立 ・地域社会との協調 ・社会的責任投資(SRI:Social
Responsible
Investment)からの支持 ステークホルダーとの長期的な対話によって、企業イメージと利益を獲得するのは経営戦略そのものだ。 筆者は適切なCSR体制を構築できない企業には、今までにない新たな企業危機が発生すると予想している。 企業間にCSRデバイド(企業格差)が発生し、戦略がない企業は市場からの退陣を迫られるケースも出てくるだろう。 CSRはもうすでに、この段階まで来ている。このように透明度を高める努力をすることにより、企業危機を避けることが可能となる。◆CSRはダイナミックに変化する◆ CSRの内容は市場や地域・国によってダイナミックに変化する。 どこに注目し、何に取り組むのかは文化や風土の中で異なってくる。 また、科学技術の進歩・発達が、それまで認知できなかったものを認知できるようにしていることもCSRの定義を難しくしている。メカニズムが解明され、測定方法が確立されるにしたがって、CSRに取り込まれる基準も変化する。 それ故に、CSRを普遍的なものとして定義するのはとても困難だ。 しかしどこで経済活動をしようと、どんなに基準が変わろうと、重視されるのは企業活動を展開する社会・環境との共生だ。相手の文化や歴史を尊重し、受け入れられるように相互補完的に行動することだ。 この視点こそが企業が自らの危機を克服する際の最高の視点だと私は信じている。 したがって、私は本書においてCSRの精密な定義づけを試みることよりも、CSRが持つ視点を軸に危機管理の話を進めることにする。 そして、今、日系企業が注目すべき話題や、取り組むべき課題など事前対策について力を注ごうと思う。 結果として、本書ではCSR以外の企業危機についても触れることになるが、それらも根本での対策はCSRと同様であり、得られるメリットも同じだと考えるからだ。 というわけで本書では企業危機管理の最重要テーマとしてCSRに対する基本知識と応用知識、さらにCSRに基盤をおいたさまざまな危機管理対策などに多くのページを割いている。 本書がCSRを真剣に導入しようとしている経営者や企業担当者の役に立つことができれば幸いだ。
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月 - 10月 11, 2004
02:07 午前
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