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ラーメン好きの編集長がニコニコしながら、
「いやはや、日刊スポーツに連載されておる『ラーメン一杯の幸せ』という特集記事、なかなかおもしろそうじゃわい。
行列のできる有名なラーメン屋の秘話が満載らしいんじゃよ。
普段ならスクラップなんぞしたコトがないこのワシでさえ、今回の特集ばかりはしっかりスクラップしておるんじゃ」
と、鼻息も荒く、一冊のクリアファイルを持ってきた。
この特集記事、2002年2月15日から日刊スポーツ紙の社会面に連載されていて、ラーメンブームを作った有名店を紹介しながら、ブームの裏側に隠された数々のドラマをドキュメンタリーとして紹介しているものである。
しかし、なぜ編集長がこの記事を大切に切り抜いているのか、もしかしたらラーメン屋でも開きたいとでもいうのだろうか。
その真意は知る由もないし、知りたいとも思わないので、そのまま無視しようとした。
ところが、
「ほれ、見てみなされ、特集の第一話に掲載されておる写真、こんなに行列ができておる。
たかがラーメンを食うために並ぶなんて、ワシらの子ども時代には考えられなかったコトじゃ」
と言いながら、無理やりスクラップを見せてくれた。

なるほど、ラーメン屋の店頭に椅子まで用意されていて、缶ビールを飲みながら待っている人もいる。
これは確かにすごい。
しかしこの写真、よーく見てみると、

なんと並んでいるお客さんの中に、見慣れた顔があるではないか。
よくわからないと思うので、拡大してみよう。

後ろの方で、あのモモ兄が、おじさんの読んでいる新聞を覗き込んでいるのである。
これには正直驚いた。
あのモモ兄が、ラーメンを食うなんて、聞いたコトがない。
それも、そばにいる人たちから好奇の目で見られるコトもなく、すっかり溶け込んでいて………、容姿は異なっていてもラーメン好きの心はひとつ、といったところだろうか。
すると編集長が、
「ここだけの話なんじゃが、実はこの切り抜きを持って行くと、ナニかしらサービスがあるらしいんじゃ」
と、あのモモ兄が並んでいるというスクープにもおかまいなしで、ボソボソとつぶやき始めた。
「そんなこと、どこにも書いてありませんよ」とたしなめると、
「書いてないからレアなんじゃよ。
『この切り抜きをお店に持って行くと、たぶんラーメンが半額になりますじゃ』なんて書いてみなされ。
読者の方々がみんな切り抜きを持って行くコト間違いなしじゃ。するとお店は大パニックじゃ。
書いてなくともワシにはわかる。
まさに長年の勘じゃな」
なるほど、それでこの切り抜きを大切にスクラップしていたというわけか。
まさに捕らぬ狸の皮算用である。究極の思い込みである。
「でも、このラーメン屋は東京でしょ? 新幹線で行くんですか? たかだか半額のラーメンのために………」
そう言うと、核心を突かれた編集長は、少々オロオロしながら、
「だ・大丈夫じゃ。
そんな時には、こ・この切り抜きをファックスでお店に送ってみなされ。きっと悦んで出前をしてくれるハズじゃ」
いやはや、ますます話にならない。
「でも、この記事にはファックス番号が書いてありませんよ」
と、畳みかけるように言うと、
「と・当然じゃよ。ファックス番号を書いてみなされ。
読者の方々がみんな切り抜きをファックして、出前を頼むコトになってしまうから、お店はもう大パニックじゃ。
書いてなくともワシにはわかる!!!!
まさに長年の勘じゃな………」
いやはや、ここまで来ると、こりゃもうホントに話にならない。
「それでは今すぐ、ファックスで送ってみましょう」と、言うのもバカらしいくらい、話にならないので、
「出前を頼むときには、ぜひボクの分もお願いしますよ」
と、歩調を合わせたら、編集長は急に安堵の表情を浮かべて、
「うん。わかった」
と、まるで子どものように大きくうなづいたのであった。
一体どこまで本気なのか、ホント、わからない人である。
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