『A Hard Day's Night』は電子出版の始まりだった


本とおなじ要領で目次がある(左)、最初の章をクリックすると、本文(右)が開き、QuickTimeムービーによるオープニング映像が『I'll Cry Instead』のサウンドとともに動き出す。モノクロとはいえ90分の映像がまるまる入ったCD-ROMは、当時ほとんど考えられなかったし、映像の品質もかなりのものだった。実は、この品質はLDの静止画像を一コマづつQuickTimeに取込むという途方もない忍耐作業のたまものだった。




目次パレットから「Song」を選び、『And I love her』を表示させると、映画の該当シーンが出てメロディーが流れる。ムービーの画像サイズは通常は208×156だった。これを面積比で4倍の416×312でプレビューできたのだが、モザイク状の画素が目立って、お世辞にもいいとはいえなかった。右が拡大された映像。

映像と読み物との共存をどう考えていたか。検索はどのようにできたのか。シナリオとのリンク。映像サイズの変更。付加情報の数々……これらの実際が伺える。

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“ビートルズ”という名前のおかげでこのCD-ROMは人気となり、ちょうどパソコンに常備されつつあったCD-ROMドライブの宣伝に格好のコンテンツとなった。しかし皮肉にも、魅力を一番明らかにできたはずのMacにはバンドルができなかった。アップルコンピュータとビートルズのレコードレーベル「アップル」とは商標上のトラブルをかかえていたからだ。
“ビートルズ”という名前には注目が集まったが、誰もこの作品が電子出版の多くの課題を込めてつくられていたことを顧みる人はいなかった。同じような企画が次々つくられたがみんなアーティストのネームバリューに依拠しただけで、さっさと撤退していったのはその証拠で、しぶとくその後も電子出版に噛みつく素振りなど一切なかった。
ハッキリいって、私たちにとっては“ビートルズ”でなければいけないことはなかった。たまたま幸運にもこのタイトルをCD-ROM化する立場に私たちがあったというだけのことだった。
CD-ROMに先立って、ボイジャーは『A Hard Day's Night』と『Help』という二つのビートルズ映画をレーザーディスク化していた。プロデューサーのウォルター・シェンソンにかけあってボイジャーはCD-ROMの権利を獲得したのだが、シェンソンは一体なにをするのかよく分かってはいなかった。ただレーザーディスク化権として与えられた残りの期限一杯に限り、例外的にCD-ROMの権利も許されたのだ。私たちに残され権利の残存期間はたった1年と数カ月だった。

ZDNet 週間ドットブック より