(1)皇帝と宮内官の紋章

16世紀前半の神聖ローマ帝国の領域(イタリア半島部を除く)
※スイスは1648年までは名目上神聖ローマ帝国に属していました。ヴェネツィアは帝国外。


掲載紋章です

宮内長官の紋章
世襲宮内官の紋章

神聖ローマ皇帝とローマ(ドイツ)王

オーストリア皇帝


Weltlische Amtszeichen

Römisches Kaiser u. Könige

Österreichscher Kaiser


神聖ローマ帝国宮内官の紋章


神聖ローマ帝国の宮中職のいくつかには、その職位を示す紋章がありました。これらは任命された人物の紋章に組み込まれました。


四大宮内官と内帑長官の紋章


神聖ローマ帝国宮廷の最高職には、帝国尚書局長官(帝国大法官)と四大宮内官(献酌長官・侍従長官・式部長官・大膳職長官)がありました。
これらの職には7人の選帝侯が任ぜられました。三十年戦争後に選帝侯が増員されると、新たに内帑(ないど)長官(=財務長官)職が追加されました。

以上の6つの官職のうち、4職に職位を表す紋章がありました。

Erzkaemmerer

【侍従長官】

青地に金色の錫。

ブランデンブルク選帝侯が任ぜられました。


Halter

Brandenburg

Erzmarschall

【式部長官】

黒と銀で分割された盾に、交差した赤いサーベル。

ザクセン選帝侯が任ぜられました。

選帝侯がポーランド王を兼ねていた期間は、ポーランド王国の紋章にも取り入れられていました。

Halter

Sachsen

Erztruchsess

【大膳職長官】

赤地に金色の宝珠。

ライン宮中伯(プファルツ選帝侯)が任ぜられました。
1623年に選帝侯位と共にバイエルンに渡りましたが、1706年から1714年の期間はライン宮中伯が再任され、1714年以降は再びバイエルンが任ぜられました。
1777年にバイエルン選帝侯家が断絶すると、ライン宮中伯がこれを継承したので、プファルツ、バイエルンの選帝侯位は結合しました。


Halter

Bayern

Erzschatzmeister

【内帑(ないど)長官(=財務長官)】

描かれている冠はカール大帝(シャルルマーニュ)の冠です。
三十年戦争で選帝侯位を失ったライン宮中伯は、1648年のウェストファリア条約によって、新たな選帝侯位と内帑長官の職を与えられました。ライン宮中伯が大膳職長官に復職していた期間と1777年以降はハノーファー選帝侯が任ぜられました。
こういった事情から、内帑長官の紋章は1837年までのイギリス王の紋章にも描かれています。


Halter

Hannover


職位を示す紋章がなかったのは、帝国尚書局長官(帝国大法官)と献酌長官です。なお、ドイツ大法官が宮廷で最高位の官職です。

ドイツ大法官

Erzkanzler durch Germanien

マインツ大司教兼選帝侯

イタリア大法官

Erzkanzler durch Italien

ケルン大司教兼選帝侯

ガリア=ブルグント大法官

Erzkanzler durch Gallien und Arelat (Burgund)

トリーア大司教兼選帝侯

献酌長官

Erzschenk

ボヘミア王兼選帝侯

その他の帝国宮内官の紋章


いくつかの官職には、職を示す紋章がありました。これらには世襲職と非世襲職がありました。これらの中には、上掲の長官と同じ紋章が使われた職位もあります。


世襲職

Erbkämmerer

【世襲侍従職】

赤地に交差した金色の錫。

シュヴァーベン系ホーエンツォレルン家の世襲職です。
1576年に同家が2家に分かれると、ホーエンツォレルン=ヘヒンゲン家がこの職位を受け継ぎました。

Halter

Hohenzollern

Erbmundschenker

【世襲献酌侍従職】

金色の杯。

背景となる盾形の地がなく、この図形がそのまま保有者の紋章に重ね描きされました。

リンプルク伯家の世襲官職です。1714年の同家断絶後は、アルタン家が本職を引き継ぎました。

Halter

Limpurg


以下の世襲職は、長官と同じ紋章を用いました。


【世襲式部官】
【世襲大膳官】
【世襲内帑官】
Erbmarschall
Erbtruchsess
Erbschatzmeister
Halter
Halter
Halter
Pappenheim
Waldburg
Sinzendorf
パッペンハイム家
ヴァルトブルク家
ジンツェンドルフ家


非世襲職

Bannerherr

【旗手】

青地に槍のついた金色の三角旗。描かれているのは神聖ローマ帝国の旗です。帝国の旗に描かれているのは鷲は単頭の鷲です。帝国旗には古い帝国の紋章が使われていたので、旗手の紋章にも双頭の鷲は描かれませんでした。

ヴュルテンベルク公が任ぜられました。

Halter

Württenberg

Stallmeister

【主馬の頭(しゅめのかみ)】

金地に赤いピックフォークと馬の毛すき櫛。役職を象徴する道具の図案化です。

ロイテンベルク領主とシュヴァルツブルク伯(のち侯)が任ぜられました。
主馬の頭の紋章は、神聖ローマ帝国解体後もシュヴァルツブルク侯の紋章に残りました。

Halter

Schwarzburg



Erbtürhüter

【(世襲)門衛】

ヴェルトヘルン家が任ぜられました。



Jägermeister

【狩猟官】

ウーラハ家が任ぜられました。


以下の官職には職位を表す紋章がありませんでした。

郵政長官

Postmeister

トゥルン・ウント・タクシス家

治水長官

Teichmeister

オルデンブルク伯

漁労長官

Fischmeister

ヴェルニゲローデ伯

砲兵司令官

Feuerherr

ロートリンゲン公

太刀持ち

Schwerttraeger

執事

Hofmeister

バイエルン公

(訳語不明)

Protovestiarius

ヘルデルラント公

皇帝の紋章

神聖ローマ皇帝の紋章は、もとは単頭の黒鷲でした。これは、帝国の理念上の創始者カール大帝(シャルルマーニュ:西ローマ皇帝在位800−14年)の紋章に由来すると言われます。
双頭の鷲に変わったのは15世紀で、皇帝ジギスムント(在位1411−37)が変更しました。

1806年に帝国が解体すると、双頭の鷲はオーストリア皇帝の紋章に引き継がれます。皇帝フランツ1世(神聖ローマ皇帝1792−1806:オーストリア皇帝1804−37)は、鷲の頭の部分に描かれていた後光を省き、代わりに、鷲の頭に冠を被せました。

一方ドイツでは、1871年にドイツ帝国が成立すると、単頭の黒鷲が皇帝の紋章に採用されました。鷲の紋章は、ヴァイマール共和国や第三帝国を経て、現ドイツ連邦共和国の国章に引き継がれています。

神聖ローマ皇帝/ローマ王、オーストリア皇帝、ドイツ皇帝とも、盾地は金色で鷲の胴体は黒色です。嘴や足も、初期には黒色に塗られましたが、その後、金色ないし赤色に塗られるようになりました。嘴や足の色は、基本的に、神聖ローマ皇帝やローマ王、オーストリア皇帝は金色、神聖ローマ帝国の鷲としては赤色に塗られることがあり、ドイツ皇帝は赤色です。


Kaiser u. Könige

Römischer König
Ferdinand I.

【ローマ王】

フェルディナンド1世(在位1531−1564)。

単頭の鷲はローマ王を表します。
鷲の胸の部分の紋章盾の構成:ハンガリー、ボヘミア、オーストリア&ブルゴーニュ、カスティーリャ&レオン。



その他の主な保持称号
神聖ローマ皇帝(在位1558−1564)
ハンガリー王(在位1526−1564)
ボヘミア王(在位1526−1564)
オーストリア大公(在位1521−1564 )



ローマ王としてのフェルディナント1世の紋章には、数種のバリエーションがありました。

Römischer Kaiser
Ferdinand I.

【神聖ローマ皇帝】

フェルディナント1世(在位1558−1564)。

紋章盾の構成:中央の小盾はオーストリア、スペイン(カスティーリャ)。
背後の盾は、ボヘミア、ハンガリー。



その他の主な保持称号
ローマ王(在位1531−1564)
ハンガリー王(在位1526−1563)
ボヘミア王(在位1526−1562)
オーストリア大公(在位1521−1564 )


Römischer Kaiser
Maximilian II.

【神聖ローマ皇帝】

マクシミリアン2世(在位1564−1576)

紋章盾の構成:中央の小盾はオーストリア、ブルゴーニュ。
背後の盾は、ボヘミア、ハンガリー。



その他の主な保持称号
ローマ王(在位1564−1576)
ハンガリー王(在位1563−1576)
ボヘミア王(在位1562−1576)
オーストリア大公(在位1564−1576 )


Römischer Kaiser
Rudolf II.

【神聖ローマ皇帝】

ルドルフ2世(在位1576−1612)

紋章盾の構成:ハンガリー、ボヘミア、オーストリア&ブルゴーニュ、カスティーリャ&レオン。



その他の主な保持称号
ドイツ王(在位1576−1612)
ハンガリー王(在位1576−1608)
ボヘミア王(在位1576−1612)
オーストリア大公(在位1576−1612 )
ティロル伯(在位1595−1612)



現存する皇帝冠はルドルフ2世が作らせたものです。

Römischer Kaiser
Joseph I.

【神聖ローマ皇帝】

ヨーゼフ1世(在位1705−1711)。

紋章盾の構成:オーストリア、ブルゴーニュ。


その他の主な保持称号
ドイツ王(在位1690−1711)
ハンガリー王(在位1687−1711)
ボヘミア王(在位1705−1711)
オーストリア大公(在位1705−1711 )


Römischer Kaiser
Karl VI.

【神聖ローマ皇帝】

カール6世(在位1711−1740)。

紋章盾の構成:中央の小盾はオーストリア。
背後の盾は、スペイン王、ハンガリー王、ボヘミア王、ブルゴーニュ公。


その他の主な保持称号
ドイツ王(在位1711−1740)
ハンガリー王(在位1711−1740)
ボヘミア王(在位1711−1740)
ナポリ王(在位1707−1734)
シチリア王(在位1720−1734)
オーストリア大公(在位1711−1740)
対立スペイン王(在位1700−1711)


Römischer Kaiser
Karl VII.

【神聖ローマ皇帝】

カール7世(在位1742−1745)。

紋章盾の構成:中央の小盾は帝国大膳職長官。
背後の盾は、バイエルン公、ライン宮中伯。


その他の主な保持称号
ドイツ王(在位1742−1745)
バイエルン公兼選帝侯(在位1726−1745)



カール6世の死後に継承権を主張、列国の支持を得て皇帝に選出されます。皇帝に選出された同じ日、本拠地ミュンヘンはオーストリア軍に占領されました。

Römischer Kaiser
Franz I.

【神聖ローマ皇帝】

フランツ1世(在位1745−1765)。

紋章盾の構成:中央の小盾はロートリンゲン、トスカーナ
背後の盾は、ハンガリー王、ナポリ王、イェルサレム王、アラゴン王、アンジュー公、ヘルデルラント公、ユーリヒ公、バール公。


その他の主な保持称号
ドイツ王(在位1745−1765)
トスカーナ大公(在位1737−1765)
ロートリンゲン公(在位1729−1737)


Römischer König
Joseph II.

【ドイツ王】

ヨーゼフ2世(在位1761/4−1790)。

単頭の鷲はローマ王を表します。
鷲の胸の部分の紋章盾の構成:オーストリア、ロートリンゲン。



その他の主な保持称号
神聖ローマ皇帝(在位1765−1790)
ハンガリー王(在位1780−1790)
ボヘミア王(在位1780−1790)
オーストリア大公(共治1765−1780/単独1780−1790)


ドイツ王としての紋章です。より完全な形では盾の構成が二重になり、ハンガリーやボヘミア、クロアチア、ブルゴーニュ、トスカーナその他の紋章が加わります。載せられている冠はオーストリア大公冠です。ヨーゼフ2世の国王選挙用に作られた大公冠はウィーンの美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)に展示されています。

Römischer Kaiser
Joseph II.

【神聖ローマ皇帝】

ヨーゼフ2世(在位1765−1790)。

紋章盾の構成:中央の小盾はオーストリア、ロートリンゲン。
背後の盾はハンガリー王、ボヘミア王、ブルゴーニュ公、トスカーナ大公。


その他の主な保持称号
ドイツ王(在位1761/4−1790)
ハンガリー王(在位1780−1790)
ボヘミア王(在位1780−1790)
オーストリア大公(共治1765−1780/単独1780−1790)


Römischer Kaiser
Leopold II.

【神聖ローマ皇帝】

レオポルト2世(在位1790−1792)。

紋章盾の構成:中央の小盾はロートリンゲン、オーストリア、トスカーナ。
背後の盾は、ハンガリー王、ボヘミア王、ガリチア王&ロドメリア王、ブルゴーニュ公。


その他の主な保持称号
ドイツ王(在位1790−1792)
ハンガリー王(在位1790−1792)
ボヘミア王(在位1790−1792)
オーストリア大公(在位1790−1792)
トスカーナ大公(在位1765−1790)



皇帝即位時に用いた紋章です。その後は兄・ヨーゼフ2世と同じ紋章が使われました。

Österreicher Kaiser

【オーストリア皇帝】

双頭の鷲の頭部の後光がなくなり、代わりに鷲の頭に冠が被せられました。

紋章盾の構成:ハプスブルク、オーストリア、ロートリンゲン。

まだ…

Deustcher Kaiser

【ドイツ皇帝】

帝国北東部

 

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