(1)国王・王太子の紋章と官職のアクセサリー Roi, Dauphine, Grands Officiers de la Couronne

15世紀後半のフランス
百年戦争終結後の諸領地の様相。



国王と王太子 Roi, Dauphine
宮内官職 Grands Officiers de la Couronne

国王と王太子の紋章

France-Ancien
- Charles V.

【14世紀末まで】

青地に金色の百合の花がちりばめられた紋章で、フランス=エンシェンと呼ばれます。シャルル6世の代まで使用されました。

14世紀後半までに成立した王家一門の紋章や、王家の紋章を取り入れた紋章(例えばパリ市など)はフランス=エンシェンで描かれます。

France-Moderne
Charles V. - Charles VIII.

【シャルル5世〜シャルル8世】

シャルル5世の治世末期頃に、百合の花が3個に変更されました。フランス=モダーンと呼ばれます。
百年戦争中の変更ですが、1405年には敵対するイングランド王家の紋章もこちらのタイプに置き換えられました。

Louis XII. - Henri III.

【シャルル8世以降】

シャルル8世の頃から、紋章図や貨幣にはクローズドタイプの王冠が描かれ始めます。ただし、次のルイ12世の代にもこちらへの完全移行はなされなかったようです。

1589 - 1792

【ブルボン朝(革命まで)】

フランスとナヴァール王国の紋章。
1589年、ナヴァール王アンリ3世がアンリ4世としてフランス王位を継承したため、二つの王国の紋章が組み合わせられました。
盾を分割して組み合わせられる他に、二つの盾を並べて描かれることもよく行われました。


歴代王の紋章

Louis X.

【ルイ10世強情王】1305年以降

縦に分割したフランス(古)とナヴァールの紋章を組み合わせました。

父王フィリップ4世がナヴァール女王兼シャンパーニュ女伯ジャンヌ1世と結婚したため、1305年に母の跡を継いでナヴァール王兼シャンパーニュ伯に即位しました。
彼は1314年にフランス王に即位。これによって、当時経済の先進地帯だったシャンパーニュの広大な領土が王室領に組み込まれました。
なお、1328年にカペー王家が断絶すると、ルイ10世の王女ジャンヌがナヴァール王国を継承します(ナヴァール女王ジャンヌ2世)。ナヴァールにはサリカ法が適用されず、多くの女王が君臨します。

Louis XV.

【ルイ15世】

盾地を4分割し、フランスとナヴァールの紋章を組みました。
1710年代後半の紋章図鑑やエキュ銀貨に描かれています。ごく短期間の使用だったようで、治世の大半は縦二分割の紋章が用いられました。


王太子 Dauphine

1350 -

【ドーファン(王太子領)】シャルル6世まで。

フランスとドーファンをX字に組んでいます。ドーファンの紋章は、その名の通り、イルカを図案に採用しています。

ドーファンは、1350年前後に王太子の紋章にはじめて登場し、以後、王太子の紋章として受け継がれました。

【ドーファン(王太子領)】シャルル7世以後。

シャルル6世がフランス王の紋章を変更したので、王太子の紋章も変わりました。

この紋章を最初に使ったのはシャルル7世の3人の兄達(いずれも早世)でした。「ドーファン」に会いに行ったジャンヌ・ダルクも、この紋章を目にしたかもしれません。

イルカをあしらった王太子冠が用いられるようになるのは16世紀頃からと思われます。


フランス王国官職の紋章アクセサリー


フランス王国では、その職位をアクセサリーとして紋章図に描き加えました。
アクセサリーで描かれた職位は、文官・武官に多岐にわたります。王国時代に制定された官職の中には、現在に引き継がれているものもあります。



(1)宮廷関係の職位を示すアクセサリー

Connétable de France

【フランス元帥(王軍長)】

剣を持つ腕。剣は王の剣を意味し、王に代わって武力を行使することを象徴しています。

国王不在時に王に代わって全軍の指揮を執る任を与えられた役職です。軍事関係では最も重要な地位です。



Chancelier

【大法官】

交差した金銀のメイス。

宮中第二位の地位にあった官職で、1627年以降は宮中最高位の地位とされました。

Grand Maître de France

【王室執事】

交差した塗金された銀のスタッフ。スタッフには王家の百合の花がちりばめられ、また、先端には王冠がついています。

王室宮内官の長にあたる職位です。17世紀後半からはコンデ親王家が代々任ぜられました。

ヴァロア朝断絶時の「3アンリの戦い」の当事者の一人、ギーズ公アンリも本職に任ぜられていました。

Grand Bouteiller-échanson

【献酌長官】

王家の紋章が描かれた塗金された銀の壷。

※左図はルイ15世時代のものです。紋章の下に、ルイ15世のイニシャルと王冠が描かれています。

Grand Chambellan

【侍従長官】

交差した王冠付の二個の鍵。鍵は王の部屋の扉を開ける鍵で、役職を象徴するアクセサリーです。

1551年に第2代ギーズ公フランソワが任ぜられたのを皮切りに、1668年まではロレーヌ公家の一族によってほぼ独占されました。

なお、ギーズ公フランソアはユグノー戦争を引き起こした人物です。

Capitaine des Gardes de la Porte

【守衛長】

王冠のついた二個の鍵。役職を象徴するアクセサリーです。

Grand Écuyer

【主馬の頭】

ベルト付きの鞘に収まっている国王の剣。

13世紀以来の官職で、1617年以降は宮内官の主要7官に数えられました。
この職位は、17世紀の半ば以降、革命によって廃止されるまで、ロレーヌ公家の一族によって独占されました。

この職は第一帝政時代に復活し、第二帝政まで存続しました。ただし、王政復古の期間は任命されなかったそうです。



Grand Panetier

【料理長】

金色のネフ(舟形飾り容器)と紅茶入れ。王のテーブルに置かれたセットを表現しています。



Grand Veneur

【狩猟長】

狩猟用のホルン。

Grand Fauconnier

【鷹匠長】

王の紋章があしらわれた一対のデコイ(狩猟用のおとり)。



Capitaine des Gardes du Corps du Roi

【近衛騎兵連隊長】

交差した鉄製の指揮杖?(調査中です)。


(2)軍関係の職位を示すアクセサリー

Marchal de France

【元帥】

金色のユリ花模様をあしらった青のベルベットにくるまれたスタッフを交差させたもの。スタッフの端部を覆う金色のカバーには標語が刻まれています。

もともとはフランス元帥(王軍長)の補佐でしたが、1627年以降は、軍の最高位の地位とされました。
当初の定員は4名でしたが、時代と共に変動しました。
この職位は現在も存続しています。

Doyen des Maréchal

【首席元帥】

フランス元帥(王軍長)と元帥の標しの組み合わせ。

最先任の元帥を表します。この地位にあった人物は、准貴族達の紛争問題専門の裁判所を主催しました。



Grand Maître de l'Artillerie

【砲兵連隊長】

砲架に載せられた2門の大砲。彩色は特に決まりがなく、紋章学上『ごく自然な』彩色をするように指定されています。

1601年に王国の主要官職とされました。1755年に廃止。



Colonel Général de l'infanterie

【歩兵連隊長】

交差した6本の軍旗。

フランソア1世治下に創設された組織で、17世紀初頭頃に王国の主要官職となりました。

Colonel Général de la cavalerie

【騎兵連隊長】

フランス王の紋章が描かれた6本の連隊旗。

アンリ2世時代に組織として整備されました。

Colonel Général des Dragons

【竜騎兵連隊長】

左右に5本ずつ、扇形に配された連隊旗。

1668年に創設された連隊で、ルイ14世は竜騎兵をユグノーの居住地に駐屯させ、武力による迫害を行わせました。
連隊はフランス革命で廃止されますが、帝政下に再結成され、1830年の7月革命まで存続しました。



Colonel Général des Gardes francaises

【近衛連隊長】

1661年に歩兵連隊が廃止されると、代替組織として設立されました。



Colonel Général des Suisses et Grisons

【スイスおよびグラウビュンデン連隊長】

スイス人傭兵部隊を指揮する職位です。スイス連隊は1568年に設置され、以後、フランス革命に至るまで軍の中核を担いました。
1792年8月10日、革命派による国王宮殿襲撃で王宮警護のスイス部隊が全員玉砕したことは有名です。その10日後の20日に全スイス傭兵が解雇されて連隊は消滅しました。
王政復古の1814年に復活します。革命時と王政復古時の連隊長は、アルトア伯シャルル・フィリップ(後のフランス王シャルル10世)でした。
最後の連隊長だったボルドー公ルイ・フィリップは、フランス王に即位するや外人部隊創設を公布し(1831年)、スイス連隊は廃止されました。

Amiral de France

【フランス海軍司令官】

交差する2個の錨。

中世以来の職位で、一時期廃止されましたが1669年に復活しました。
ナポレオン体制下ではヨアヒム・ミュラが任命され、彼が治めたベルク大公国の紋章にも図案として取り入れられました。
この職位は第二帝政が崩壊するまで存続しました。

Vice-Amiral

【海軍副司令官・海軍中将】

金色の錨。

Général des Galères

【ガレー船隊司令官】

金色の二重錨。

フランス北部

 

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