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STAR

WARS EPISODE1 全米公開レポート・1



JAPANESEMAN IN NEW YORK

〜1日目:New York到着

texts & photographs by Mr.N

 N氏が「STAR WARS EPISODE1」の全米公開に合わせてNewYorkに行くと聞いた私は、ずうずうしくも現地レポートをお願いしました。N氏はアメリカでの超過熱ぶりに不安を覚えつつも出発していきました。そして無事帰国のメールを受取って十日余り‥‥この詳細なレポートが届きました。さて、N氏がNewYorkで体験してきたことは?

N氏プロフィール+++元・某外資系銀行マン。現在は出版社で編集の仕事をされています。小学6年生の時に「STAR WARS」の一作目に出会い、この先発表されるいずれかのエピソードのアメリカ公開初日に立会うことを心に誓ったとか‥‥。少年時代からの映画フリークぶりに私は圧倒されるばかりです。

1999年5月20日(日本時間)

 今日から「スター・ウォーズ エピソード1」を観るためニューヨークへ。しかし仕事が終わらない。朝8時に会社に入り、絶対に必要な仕事だけやっつけて、会社を出たのは11時。
 家に帰ってパッキング。といっても替えの下着とパスポートしか持っていかないので、3日分の下着と靴下をバッグにつめるだけ。10分で完了。

 出発。電車の中ではちょうど昨日届いた、定期購読のニューズ・ウィーク日本版5/26号を読む。おりしも特集は「ベールを脱いだスター・ウォーズ」。信頼しているNW誌の映画番記者デビッド・アンセンが記事を書いているが、「エピソード1」を酷評している。そうかもしれない、という予感は確かにある。不安の一つはユアン・マクレガーとナタリー・ポートマンがいかにもやる気なさげな演技をしてやしないか、ということ。けれど、これはある種のお祭りだ。雰囲気を楽しめれば何より。筆者もそう書いている。

 新宿に寄って、シティ・バンクに作っているドル口座からドルを引き出しておく。TCなら無料なのだが、現金でおろすと1ドルにつき1円の手数料がかかる。少し計算した上で、TC300ドル、現金100ドルを作ることにする。
 
「この場ですぐに作れますよね?」と受付に聞くと、深々と頭を下げられ、いかにも申し訳なさそうに、「申し訳ありません。ただいま大変混み合っておりまして、10分少々お待ち頂きます…」と言われる。 全然OK。 日本の銀行なら10分など空いてる方じゃん。

 待ってる間、書類を記入。と言っても、都銀のようにカウンターみたいな所で、客に立って書かせるようなことはしない。記入用のボードを貸してくれて、ソファに座ってゆったりと書くことができる。
 
やがて番号が呼ばれるが、これも都銀のように、こちらから窓口に行くのではなく、向うがこちらにやって来て窓口まで案内してくれる。そして客が座るイスには手をかけて、座るのを助けてくれるのだ。
 
さらには、現金・TCの受け渡し窓口は別フロアになるのだが、そっちに行くよう指示されるのではなく、何とクラーク自身が席をたって、「お連れします」と、そちらに案内してくれる。次のクラークに客を引き渡すまで、責任を持って客に付き添う。むー、シティはまだまだ伸びるかも。

 ドルを手に入れると、もう一つの検討事項、デジカメを買うかどうするか。ここは思い切って買うことに。こんなきっかけでもないと、なかなか買わないもの。基本的に「エピソード1」に関わるアメリカでの現象は、すべて記録しておきたい。それにはためらわず撮影できるツールが欲しい。「さくらや」で59,800円。オリンパスC-900を購入。有効に使えるといいのだけど。

 成田。搭乗券を受け取り、とり急ぎ三省堂へ。最新のガイドブックくらいは必要だ。一番安いJTBポケットガイド「ニューヨーク」を購入。1,070円。しかしこれには映画館に関する情報がないので、他のガイドブックで、マンハッタン最大規模の劇場をいくつかピックアップ。そこのアドレスを盗み、買ったガイドブックにすぐさま印を入れてしまう。

 そんなこんなで、最終搭乗の案内が出てしまった。出発時間は6:00PMだ。あわてて出国手続きをすませ、急いでゲートに向かう。飛行機はコンチネンタル航空C008便だ。

 このままNYまで約11時間半。離陸して落ち着いたら、デジカメの勉強。バッチリ使いこなせるようにしてしまおう。面白い。練習用にスチュワーデスさんを盗撮しまくる。ズームもできるのでとても楽しい。
 
隣に座ってる黒人のおばちゃんに変な顔されないうちに、カメラ遊びは止めて、本でも読もう。ずっと読み残していた、ゲリー・ジェンキンズ「ルーカス帝国の興亡」(扶桑社)。「スター・ウォーズ」製作にまつわるノン・フィクション。やはり面白い。もっと数字的なデータや、アメリカ文化史・社会史的な側面からの考察が欲しい気もしたが、現場のスタッフとルーカスの軋轢・人間関係のおおよそを知るだけでも有意義な本だ。全400ページあまりのうち、半分くらいを一気に読んでしまう。


 やがて着陸。NY時間の6時過ぎ。空港はJFKでなく、ニューアーク空港。何となく規模の小さな空港だ。けれどその分、入国審査では並ぶことなくあっさり通過。とうとうNYだ!
 
旅行会社が用意したバスで、一気にマンハッタンへ。1時間ほどで着くという。気持ちが高鳴ってきた。今日のNYは快晴。昨日は大雨だったそうだ。昨日といえば「エピソード1」の初日。そういうのも興行成績に影響するのだろうか。

 やがて摩天楼が見えてくる。ホテルはRamada Milford。45番街で、ブロードウェイのド真ん中だ。部屋数は多いが(約1200室)、ほかに何もないという大味なホテル。どうせ寝るだけなので充分。割り当てられたのは2504号室。
 
部屋に入ると荷物を投げ出し、すぐに劇場へ。あらかじめ目星をつけたのは、Siegfeld Theatreだ。NY最大の座席数と、スクリーン・サイズを誇るという。

 ホテルを出ると、もう目の前はブロードウェイ。まぶしいばかりのネオンに、無数のミュージカルのポスター。何度来ても、ここにはうっとりしてしまう。全世界のエネルギーがここに集まってるかのようだ。少しだけ余韻を楽しんで、劇場へ向かう。もうすぐ8時。日没は近い。歩みを少し早る。一分でも早く「エピソード1」の劇場の様子をこの目で見ないと、大変な後悔をしてしまいそうだ。

  ↑HARRODSのショーウィンドウでは何故かピカチューと。右はタイアップしている「ピザ・ハット」の店先

 少し迷って、やがて向うにややオレンジがかった看板が見える。目を細めて見ると、間違いない。確かに "EPISODE 1" と書いてある。走った。どんな様子だ? 行列は? 残席はあるか? いろんな思いが頭をよぎる。
 
が、予想に反して行列はないし、人もそんなにいなかった。ただ、ひっきりなしに人はやって来て、窓口でごそごそやっている。どんな感触なんだろ。
 入り口付近にあるポスター類に思わず見とれてしまうが、振り切って、窓口に向かう。入り口の脇は工事中。ものすごくうるさい。この騒音って、劇場内には聞こえないのか? 少し不安になる。

 窓口まで来たはいいものの、いささか勝手がわからず往生してしまう。えーと、何をどう言えばいいんだ? と、迷っていると、でっかい白人のあんちゃんが来て、チケットを買っていった。む、買えることは買えるのだな。また一人来た。その人も買っていった。その次に来た黒人は何やら言い合った末に、何も買わずに帰っていった。 窓口の上の所に、タイム・テーブルが掲げられている。一日の上映スケジュールはこんな感じ。

 6:30 -- 9:45 -- 1:15 -- 4:45 -- 8:15 -- 12:00 -- 3:30

 なんと1日7回転。それこそ24時間べったり上映しっぱなし。間隔が3時間半もあって、「スター・ウォーズ」がまさか3時間を超える作品な訳がないから、ずいぶん長い休憩をはさんでるわけだが、やっぱりスゴイ。
 
貼り紙があって、「エピソード1」は最低でも、7月末まではこの劇場で、このタイム・テーブルで上映する、ということが書いてある。これも大したもんだ。こんなことをはっきり宣言することだって例外的なはずだ。
 
さて、どうしたもんか。次に来た黒人と窓口のおばちゃんのやりとりを、少しマジメに聞いて見る。

「STAR WARSのチケットちょうだい。」

「いつの?」

「今日の。」

「今日のはもう3:30AMのしかないよ」

「SHIT! 3:30AM!?」

 この人もしょぼしょぼ帰っていった。なるほどー、状況がわかった。一瞬この3:30の回を買っちまうか?と思ったが、さすがにやめておく。いくら何でもまだ心の準備ができていない。しかし、そんな時間のしかないってのはなあ…。どうしたもんか、と悩んでいたら、窓口の左やや下に、むこう2週間ぶんのカレンダーに、タイム・テーブルが記してあり、売り切れてしまった回は、マジックで消してある。
 
あ、大丈夫。見れるぞ。NY時間で明日は金曜日の平日。さすがに午後は全滅だが、朝6:30、9:45、夜中の3:30のが残っている。どうする。6:30と9:45のを押さえるか? いや、6:30なんてデタラメな早朝では、観客の盛り上がりもイマイチだろう。やっぱりなるべく満員の方がいい。9:45の回にしよう。

 その翌日も同じ。土曜日も日曜日も同じ回のが残っている。翌月曜日からは、12:00AMのが残り始めて、さらにその翌週からは全回残っている。
 
安心した。というか拍子抜けした。舞台やコンサートと違って、この辺はやはり映画は映画だ。初日に7回分すでに裁いたら、他にもマンハッタンだけで4館劇場があるわけだから、もうずいぶんな観客を吸収できたのだろう。どんなに初日に行列ができたとはいえ、さすがに7回も回せば処理しきったか。まあ、確かにこの劇場がキャパ2千だから、その7回転。すでに1万4千人を収納している。これ以上の人数が映画に並ぶ、という事態にはさすがにならなかったか。

 …と思い始めると、改めて初日に来損ねたことが悔やまれる。やっぱり熱狂のピークを見たかった。ともあれ、明日も明後日も見れることはわかった。両日とも朝9:45のにする。そもそも選択の余地はないのだ。

「5/21と5/22の9:45AMの回をちょうだい。」

「1枚?」

「そう1枚。」

「9ドル50セント。」

「明日のだけじゃないよ。明後日のも欲しいんだよ。」

「まず、明日の分を払いなさい。」

「はい。」

「OK。」 (チケットを発券する)

「それから? 何だって?」

「あさって。土曜日の9:45だよ。」

「9ドル50セント。」

「はい。」

「OK. (発券する) See you tomorrow.」

 うーん。一枚づつってのは何なんだ? セキュリティの問題か、それともシステム上、入金を確認しないと発券できないのか? よくわからないけど、とにかくチケットは買えた。が、もう一つ不安だ。指定席と書いてあるものの、なんか落とし穴があるような…。そこで、劇場をちょっと入ったところにいたヒスパニックの男性事務員に聞いて見る。

「このチケットは指定席なんだよね?」

「そう。ここはぜーんぶ座席指定。もう席はあるよー。」

「じゃあ、時間通りに来ればいいんだね? 早めに来て並ぶ必要はないんだね?」

「大丈夫だよ。みーんな席はあるからね。あなたの席はもう決まってるからOK。あ、でもね、20分くらい前には来るんだよ。でないと、ポップコーンやソーダを買う時間がなくなるぞー。」

「ああ(笑)もちろん。ちなみにぼくの席ってどの辺かわかるかな?」

「Sure! (座席表を出してくる) チケットを見せて。えーと、N−108だから…。この辺だよ。土曜日のは…この辺だ。」

「おお、いい席だね。」

「イエース。すっばらしい席だ。」

「どうもありがとね。」

「Enjoy the show!!」

 ラッキー。どっちもほとんど真ん中の席だ。やっぱり全席指定っていいな。立ち見なしで、しかもずっと先の日の券も買えるし。日本でもこうすればいいのに。メジャー系の劇場とミニシアターのいい点だけを取り入れてるみたいだ。

 買ってしまってから、連日同じ劇場ってのも脳がないな。劇場を変えて観るべきじゃないか? と贅沢な気持ちになってきた。でもまあいいか。ともかく観れるんだ。


 さて、そろそろ9時近いけどどうしよう。「エピソード1」をやってると思われる、もう一つの劇場、Lincoln Centerにも足を伸ばして、そっちも見てみるか? この劇場は72番街。セントラル・パークを越えた所。暗くなってあんまりあっちには行きたくないな、どうしよう。と思いつつ20ブロック程度だからいいか、歩いても15分くらいだし、とそちらに足を向ける。場所的にはジュリアード音楽院に隣接している。パークの中に入らなければ大丈夫だろう。

 やがてセントラル・パークが見えてくるが、この辺りから歩いてる人々の雰囲気が変わってくる。あんまり好きじゃない。スーツ姿の人はぐっと減って、いかにも安そうな服装の人が増えてくる。そもそもネオンがぐっと少なく、暗いので不安な気持ちにさせられる。

 やがてLincoln Centerに。ここは複数の劇場が入ったシネコン形式の所だった。えーと、でも「エピソード1」はかかってない。ないどころかなんだ? この上映作品は? アンゲロプロスの「永遠と一日」なんかやってるぞ? それにルイ・マルの遺作に、デビッド・マメットの新作。サンダンス映画祭で何かの賞を取った作品と、カンヌで女優賞をとった何とかって映画。何とアート系の劇場だった!さすがに隣がジュリアードだけあって、観客の知的レベルが高いということか。ちょっとびっくり。

 これじゃしょうがないのでタイムズ・スクエアに戻る。ずいぶん歩いたので地下鉄を使いたかったけど、この時間の地下鉄にはあまり乗りたくないな。歩いてしまおう。
 
そうしてブロードウェイをのこのこ歩いて、タイムズ・スクエアあたりまで戻ったら、驚いた。2人のポン引きに声をかけられてしまった。NYでポン引きに引かれるたあ、私もずいぶん一人前になったものだ。
 
こちらのポン引きは歌舞伎町のそれみたいに、いつまでも話しかけてこない。何か写真みたいなものをピッ!と出して、「どうだ?」という目で見る。「NO」と首を振ると、またそれをピッ!と下げてしまう。何だかスマートだ。

 タイムズ・スクエアには巨大なバージン・メガストアがある。ここで残った夜を過ごそう。
 
入った所すぐに、スター・ウォーズ関係の書籍・CD-ROMのゲーム・CDが置いてある。書籍類は25%引きだ。うれしい。映画を見た上で、買うならばここにしよう。

↑ バージン・メガストアの「STAR WARS」コーナー

 ここの1Fはロック・ポップス。B1はクラシック・ジャズ・インポート・ミュージカル・映画音楽だ。インポートの所はなーんと、日本版ばっかり。アメリカのアーチストのCDでもなぜか日本版が置いてある。どうしてだろう、とよく見ると、あ、なるほど。日本版特典として入ってるボーナス・トラックだ。あるいは、初回限定でよくあるLPジャケット仕様の奴。やっぱりマニアは少々高くてもこういうのを買おうとするんだな。日本は変なバージョン作るから。

 B2は書籍・ビデオ・ゲーム類。驚いたのはフロアの半分がDVDだ。アメリカではもうこんなにDVDが普及してるのか? CDの普及はめちゃくちゃ遅かったのに。
 
ビデオ売り場で面白かったのは、ゲイ・レズビアンというコーナーに、ハードなポルノに並んでトム・ハンクスの「フィラデルフィア」やアル・パチーノの「クルージング」が置いてあったことだ。そんな見られ方してるのか?

 たっぷり1時間近く書籍売り場で過ごす。何か有益な映画の本はないかと探すが、それほどのものはない。ドン・シーゲルのインタビュー集を買おうかな、と迷うが、何だか荷物になりそうなので、とりあえず保留した。

 もう夜の12時過ぎ。 この店は何時までやってるんだろう? いいかげん何か食べよう。 すぐ隣にあるピザ屋さんのSBBAROに入る。NYに来る度にこの店には本当にお世話になっている。ここのピザはとてもうまい。
 
今日もイタリアン・ソーセージのピザに(2.89ドル)、ミート・ボール(1.49ドル)をつけて、ペプシ(1.45ドル)にする。高いとも安いとも思わない。こんなもんだ。
 
席につくと、すぐ前の席で年寄りの黒人が飲んだくれて眠っている。寝かしといてもらえるんだ。ふーん。

 ようやっとホテルに戻ったのは1時近く。シャワーを浴びて、ちょっと本を読んでベッドに入ったのはもう3時過ぎ。横になったらどっと疲れが出て来た。フロントに電話をかけてモーニング・コールを頼む。朝8時に起こしてもらう。

 とにかく明日はいよいよ「エピソード1」だ。ばっちり眠って明日にそなえよう。

texts & photographs by Mr.N


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