そうした描写の中、次第に浮かび上がる『ターミナル』のテーマは、「待つ」ということである。(夢の実現のためには)「待つことである」、とビクターは言うのだが、このとき不意に「待つ」という言葉をタイトルに持った、ある映画を思い出す。それはエルンスト・ルビッチの不滅の名作、『天国は待ってくれる』(1943)=原題“Heaven Can Wait”のことだ(同じ原題を持つウォーレン・ビーティの『天国から来たチャンピオン』(1978)は、それはそれで大好きな映画だが、ケタが違いすぎて比較対象外)。
幸せ、すなわち天国は、必ず待ってくれる。スピルバーグだったら、この幸福感に満ち溢れたルビッチの傑作のことを、撮影中に思い描かなかったはずがない。『ターミナル』の幸福感は、それ故にもたらされたものだと信じるのだ。
(2004:12.24)