2008年3月27日 更新

・近況コラム「対応を迫られる原子力行政」を改訂。

since2002.9.11

Information
『原発震災を防ぐ全国署名』途中経過! 
詳細はコチラまで
賛同人に坂本龍一氏、民主党・広中和歌子氏、古田悠氏(元日本原子力研究所主任研究員)、住野昭氏(ツーリズム研究会代表)、福島瑞穂・社民党党首参加!
OBサミット・ハイレベル専門家会合(2005.4.2)詳細報告
OBサミット・総会(2005.6.22〜23)出席 詳細報告
柏崎刈羽原発問題などにつき、外国特派員協会で発言
著 書
新しい文明の提唱−未来の世代へ捧げる−
(株)文芸社刊・1200円(2000年12月刊行)04.7-増刷! 詳細
原子力、新エネルギー関連サイトなど。なお、当サイトはリンクフリーです。
原子力と日本病
朝日新聞社刊・1200円(2002年6月刊行) 詳細

●歴史の危機の入り口に立つ日本(2006.11発売)
http://books.yahoo.co.jp/book_detail/31792944
中西輝政、加地伸行、大越俊夫、村田光平、各氏による共著(ごま書房)

村田氏への直通メール

トピックス
村田光平氏の「最近の主な活動」 以前のものは「文書室」

・中国向け小冊子(日本語訳含む・日本語タイトル『現代文明を問う〜運命共同体の関係にある日本及び中国の将来のために』)を、胡錦涛国家主席ほか首脳陣に送付。(2006.8.8)
・松浦ユネスコ事務局長と会見、OBサミット議事長報告に盛り込まれた「人権は未来の世代を含むすべての人の所有物である」との思想を、ユネスコでも具体的に実施されるよう申し入れる。(2006.8.18)
・インターネット新聞JANJANに『原子力の危険性に目覚めたフランス報道界』https://www.janjan.jp/living/0608/0608239971/1.phpが掲載される。(2006.8.24)
・インターネット新聞JANJANの「アドバイザー」に任命される。https://www.janjan.jp/editor/0608/0608250080/1.php(2006.8.26)
・小論『杜撰な耐震指針の見直しに抗議の辞任』がJANJAN に掲載される。http://www.janjan.jp/government/0608/0608300347/1.php(2006.8.31)
・松浦ユネスコ事務局長との写真を資料室に掲載。(2006.9.18)
・フランスより来日した旧知のミシェル・アルベール氏(世界的ベストセラー「資本主義対資本主義」の著者)と名古屋で懇談、エネルギー問題につき意見交換を行う。(2006.9.18)
・小論「世界を脅かすメディア中毒」が、アルベール・シュヴァイツァー国際大学学長がロンドンで発行しているnewsletter「London Diplomatic Academy」に1ページに及び掲載される (2006.11)
・小論『「国策」というなら全責任をもて〜原子力政策の転換を訴える』がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.2.8)
・上記と同内容の小論(タイトル「日本の原子力政策の転換を訴える」)を、政府関係、電力会社など関連機関および専門家などに発出。(2007.2.6〜)
・論文「新しい文明を求めて〜人間復興をめざす文化の逆襲」を読んだフランコフォニー(フランス語圏国際組織=OIF/参考)事務総長アブドゥ・ディウフ前セネガル大統領より、『新しい文明の創設について、フランコフォニーとして何ができるか意見交換したい』旨の書簡を受け取る。(2007.2.7 資料室に掲示)
・小論「日本の原子力政策の転換を訴える」がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.3.8)
・小論「動き出した地熱エネルギー開発」がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.3.13) [上記2論や同主旨の内容は、各県知事、政府関係、電力会社、識者などに発信されている]
・週刊誌「FRIDAY」(4/13号・講談社)の記事「東海大地震&富士山が危ない」にて取材を受け、談話が掲載される(2007.4.3)
季刊「軍縮地球市民」春号(明治大学軍縮平和研究所・西田書店刊)で約100ページに及ぶ「原発シンドローム」との特集記事が掲載され、計19名の執筆者に村田氏も参加。
・村田氏が名誉委員を務めている「エネルギー・フォーラム Sun21」の10周年記念行事=太陽エネルギーのみを使用するエンジンボートによる大西洋横断の達成記念式典に参加。詳細はこちらまで。(2007.5.8)
上記「SUN21号」の記事が、インターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.5.22)
・経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会に対し、「原発震災を防ぐ全国署名」の提出と要請書提出(意見交換)を行う。また、防災担当大臣に要望書を発出した。(2007.6.18)
「署名88万筆 原発震災対策を政府に申し入れ 浜岡原発」がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.6.26)
・外国特派員協会主催の記者会見にゲストスピーカーとして出席。発言の模様がインターネット新聞JANJANに動画で掲載される(「国は設置許可を取り消すべき・柏崎刈羽原発」)。(2007.7.25)。
・世界で最も権威のある総合学術雑誌の一つである英国の「Nature」448号(7.26発売)で、2ページにわたり柏崎刈羽原発関連問題が報じられる中、上記外国特派員記者会見での村田氏の発言が引用され、浜岡原発の危険性について言及された。
・英国誌「Times」(7/21号)が、上記外国特派員記者会見での村田氏の発言を引用し、浜岡原発の危険性などについて言及。
・2007年ノーベル平和賞受賞者「アル・ゴア前米副大統領」より、中越沖地震を踏まえ「原発ルネッサンス」に疑念を呈する村田氏の書簡に関して、関心を示す返書が寄せられた。(2007.10.1付。詳細は、下記「近況コラム」および「資料室」にて)
・インターネット新聞JANJANに小論「原発ルネッサンス」の潮流を揺るがした中越沖地震・柏崎刈羽原発が掲載される(2007.10.22)
・2007年ノーベル平和賞を受賞したIPCCのラジェンドラ・パチャウリ議長より、村田氏の活動への賛同・関心が寄せられた。(2007.11.23付。詳細は、下記「近況コラム」および「資料室」にて)
・インターネット新聞JANJANの中国向けページに、柏崎原発問題OBサミット脳内汚染原子力政策の転換反「原発ルネッサンス」といった各論が掲載される。(2007.11〜2008.2)
・インターネット新聞JANJANに、小論『「原発ルネッサンス」の潮流を逆転させる中越沖地震・柏崎刈羽原発』が掲載される(2008.1.29)
アル・ゴア前米副大統領、IPCCラジェンドラ・パチャウリ議長、『資本主義体資本主義』で著名な仏化学院終身書記Michel Albert氏からの書簡を「資料室」に掲載。

近況コラム

以前の近況コラム
「原発における初の死傷事故発生」「社会が脱原発に向けて大きく動き出した」「『原発震災を防ぐ全国署名』第一次集計結果がまとまった」「新潟県中越沖地震発生」「OBサミット」ハイレベル専門家会合へ「増える原子力報道」については、こちらまで。

急がれる原子力政策の転換

2008年3月22日
村田光平


 原発大事故がもたらす破局を未然に防ぐためには原子力政策の転換が急がれます。そのために「大連立」が必要であれば、立派な大義名分となります。それほど急を要するのです。
 以下の諸点につき改めて述べさせて頂きます。

1. これまでに正しさが証明されてきた市民サイドの直感からすれば、柏崎刈羽原発に関する最高裁判決は設置許可取消しを求める原告側勝訴しか考えられません。中越沖地震が同原発に与えた被害はその再開を許すものではありません。

2. 最近、日本で米国のフォード核不拡散特別代表が言及した日本の再処理施設からの200kgのプルトニュームの行方不明事件は、深刻な問題に発展する可能性があると見られております。ジャック・アタリ元仏大統領特別顧問の著書『核という幻想』によれば1994年4月、IAEAは東海村の再処理施設から70kgのプルトニュウムが「紛失」したとされたことに関し、日本政府に懸念を表明しております。

3.今年2月17日のTBSテレビ「報道特集」は松田時彦東大名誉教授の衝撃的証言を伝えており、その反響は各方面に拡がっており、原子力行政に対する不信を深めつつあります。

4. 平成16年下旬に関電が3600を上回る不正報告を行ったことを報道で知り、衝撃を受け、関電には原子力を扱う資格はない旨、政府首脳、日本経団連などに訴えましたが、その直後美浜原発事故が発生しました。
 3月14日付け産経新聞によれば、同社は運転開始から30年を迎える大飯原発1,2号機の10年の運転延長の許可を原子力安全保安院に申請した趣です。老朽化の全貌を十分把握することなく原発の寿命を関係者のみの判断で延長することは決して認めるべきではありません。このことは関電のみならず全ての原発について言えることです。一町長に原発設置の可否の権限を与えるご都合主義と相通ずるものがあります。


 以上の諸点を踏まえ、どうかよろしくご尽力をお願い申し上げます。
 最近の黄砂の飛来は国民に中国での原発事故の影響を思い知らせたようです。私の関係知事宛発信も漸く反応が返ってくるようになりました。

対応を迫られる原子力行政

平成20年3月27日
村田光平


 
最近一部マスコミの原子力問題に関する報道振りに変化が見えだしました。
 今年1月1日より8回にわたる「新潟日報」の特集記事は、柏崎刈羽原発の設置審査に対する信頼を根底から覆すものとして反響を呼んでおります。月刊「ウェッジ」2月号には、日本の原発の深刻な「八方塞がり」が伝えられております。
 また、2月17日のTBSテレビ「報道特集」が報じた柏崎刈羽原発の建設許可にかかわった地質学者の証言は、当時の現地調査が如何にいい加減であったかを示すものとして衝撃を与えております。さらに「週刊現代」(3月29日、4月29日各号)は、関西電力関係者による高浜市長「暗殺指令」という驚くべきスクープ記事を掲載しました。

 日本の原子力政策は「事故は起きない」との誤った大前提に立脚していることが、中越沖地震を契機としてますます自明となりました。これに固執することは破局のリスクを高めるのみとなるとの認識が広がりつつあります。
 とりわけ原発震災に脅かされる浜岡原発と、内外から批判が高まりつつある六ヶ所再処理工場の問題は、日本の統治能力をも問うものとなっており、緊急な対応が求められております。ロスアンジェルス紙が報じた日本の再処理工場からのプルトウム行方不明事件(上・下段に掲出)には、核テロとの関連で重大な関心が寄せられ出しており、去る2月15日、米国務省のクリストファー・フォード核不拡散特別代表は、日本国際問題研究所における講演会で、査察に完全は期しえない例として、この事件に言及したことが注目されます。
 しかしマスコミは何故かこの問題を取り上げません。

 世論もようやく地元から目覚め出しており、政治的決断を生む「臨界点」に達しつつあると思われます。破局の到来を未然に防ぐためには政策転換が不可欠であり、その実現こそ現下の最重要課題と思われます。「大連立」も正当化され得る問題です。

「原発ルネッサンス」の潮流を逆転させる中越沖地震


平成20年2月9日

東海学園大学教授
村田光平

原発の再評価・促進傾向(原発ルネッサンス)に根拠はない

 2007年7月16日に発生した中越沖地震は、核の世界に温暖化を口実に原発を促進しようとする「原発ルネッサンス」の動きとは逆方向の新しい潮流を生みつつあると思われます。
 同年7月23日付ロスアンジェルス・タイムズ紙は、次のような指摘を行っております。
a) 温暖化の対策として原発を有効なものとするためには、今世紀半ばまでに、毎週あるいは隔週に一基ずつ原発を建設していく必要があり、そのためには部品製造すら間に合わず、非現実的である。
b) 現存する104基の原発(電力の20パーセントを供給)は寿命が近づいており、その代替には4、5か月に一基のペースで今後40年間、原発を新設する必要がある。温暖化対策にはとうてい間に合わないであろう。
c)日本の六ヶ所再処理工場から200kg、英国のセラフィールド再処理工場から30kgのプルト二ウムが行方不明となっている。6kgのプルと二ウムで長崎原爆は作られた。

 このような立場は、最近米国の知人(会社社長)から寄せられたよう次のようなメッセージと軌を一にしております。

「米国では温暖化対策として原子力を容認するようにとの圧力があります。私はこれに強く反対します。お送りいただいた資料は私の所属するグループの会員に配布いたしました。
 エネルギー保存計画も代替エネルギー戦略への財政支援もない状況の下で原子力を擁護することは、倫理的に許されません。ご指摘の核拡散、廃棄物、大災害の可能性は極めて現実的なものです。核燃料が核兵器に転用される危険性は、核拡散とともに高まります。
 エネルギー問題は統合されたグローバルな問題であり、国際協力が求められます。だからこそ軍国主義が最大の危険であると信じます。
 世界平和と全ての核物質の削減のために、ともに力を合わせましょう。」


活発化する「原発不信」の潮流

 このたびの中越沖地震は、原発事故は発生しないとの大前提に立脚する日本の原子力政策の根底を揺るがしました。そして、同政策の抱える問題点は世界中に知れ渡りました。

 例えば、英国のNATURE誌(448号)、The Times紙(2007年7月23日付)は、同地震が柏崎刈羽原発に与えた被害を大きく報じております。その中で、特に強調されているのは、「原発震災」の可能性が立証されたこと、そして東海大地震がこれを惹起する可能性の強い浜岡原発の差し迫った危険性です。浜岡原発問題は、大きな国際関心事になったと思われます。
 また、原発輸出の対象国の一つであるインドネシアでは、最大のイスラム団体(NU)が、原発導入に反対することを決めたことが報じられております。

 国内では、中越沖地震により、国民の原発の危険性に対する意識が確実に質的変化を遂げています。原発を抱えた地元からは、原発の定期検査期間の変更反対、耐震構造審査に関する第三者委員会設置の要求など、政府不信の動きも具体的に出てきております。
 自民党の河野太郎議員は、ある週刊誌のインタビュー記事で核燃料サイクル政策を痛烈に批判し、「こんなバカな政策は一刻も早くやめなさい」と発言した旨も、報じられております。
 このように、中越沖地震を契機として、新しい潮流の萌芽が見え始めています。

 中越沖地震が原発に及ぼした被害については、日が経つにつれ新しい事実が次から次と明るみに出てきています。地震発生直後に来日し、拙速と批判されたIAEA調査団による再調査も予定されております。その全貌が判明した時の影響も、全世界に及ぶことが予見されます。すでに、柏崎・刈羽原発の全面廃炉の可能性も強力に主張されるに至っております。月刊「ウェッジ」誌2008年2月号は日本の原発の深刻きわまりない八方塞がりの状況を伝えております。

「地球の非核化」と「新しい文明の創設」へ向けて

 2007年7月20日、私は外国特派員記者会見で浜岡原発および六ヶ所村再処理工場の危険性を訴えるとともに、「原発ルネッサンス」の下で原発を輸出する動きが活発化しつつあることへの深い憂慮を表明いたしました。
 このような活動を含めた私の近況報告に対しては何人もの世界の有識者より声援が送られてきました。

 アル・ゴア前米副大統領からは2007年10月1日付の返書が寄せられました。同返書が、地球の非核化と新しい文明の創設を理想に掲げ、温暖化を口実とする「原発ルネッサンス」に強い懸念を呈する私の立場に一定の関心を示していることは、アル・ゴア氏が私と波長を同じくすることを示唆するものと受け止めております。同氏の『不都合な真実』が、地球環境に対して最大の破壊力を潜在的に有する原発の推進に利用されている現状に不本意の筈だからです。同氏が2007年度のノーベル平和賞を受賞したことにより、米国での温暖化対策への取り組みが加速され、天然資源を節約する新しい文明の創設の必要性について、全世界が認識を深めていくことを期待し得る状況になりました。アル・ゴア氏からは、私の祝意表明に対してファーストネイムで呼びかける今年1月10日付返書が来ました。

 また、アル・ゴア氏と同時にノーベル平和賞を受賞したIPCCのPachauri 議長は2007年11月23日付の私宛メッセージの中で私がこれまで表明してきた懸念が正しかったと指摘しております。

 さらに、フランス語圏諸国が加盟する国際機関「フランコフォニー」のDIOUF事務総長(前セネガル大統領)からは、2007年12月10日付私宛書簡の中で、私の活動が「世界の全ての市民にとって重要な問題に関する論議を起こし、その内容を深めるものであり極めて有益である」との熱い声援が送られてきました。

 そのほかにも各国、各方面より多くの心ある人たちの理解と支援に接しておりますが、未来に希望を抱かせる新しい潮流が生まれつつあるのが感じられます。


急がれる中越沖地震による被害の総括

「原発ルネッサンス」の動きは2007年の国連演説でサルコジ仏大統領が原発を希望する国全てを支援する用意があると述べ、すでに中国、アルジェリア、リビア、カタール、アラブ首長国連邦、及びインドとの協力に合意するなど活発化しております。中国は2020年までに原発を30基も増設する方針であると報じられ、さらに50基、100基の増設計画もあると伝えられております。英国も原発新設に踏み切ると報じられております。

 しかしながら、このような危険な流れがいつまでも続くとは思われません。核テロ、核拡散、各種放射能災害などへの配慮が全く欠落しているからです。批判が起きるのは必死と思われます。

 特に注目を要するのは米国が最も恐れている核テロの可能性です。2003年、国際原子力機関(IAEA)は核物質の盗難件数が660件に達したことを公にしております。また、上記のロスアンジェルス・タイムズ紙の中で日本の六ヵ所村の再処理工場から200kgのプルトニウム(長崎原爆30発以上製造可能)が行方不明になっていること(英国のセラフィールド 再処理工場からは30kg)が報じられております。これらの事例は氷山の一角に過ぎません。

 米国にとり核物質の管理を国際的に強化することは緊急の課題のはずです。核拡散の防止と原発促進という二つの矛盾する任務を与えられたIAEAの抜本的改革を含め、米国が何らかの対策を講ずるに至ることは確実と思われます。
 最近、私を昼食に招いたフランス人記者はフランスがテロの対象となる動きが見られだしたこともあり、仏国内で上記のサルコジ大統領の姿勢に対する批判が耳にされ出したと述べておりました。また、同記者は上記のプルト二ウム行方不明事件に重大な関心を示しておりました。

「原発ルネッサンス」が中越沖地震の教訓を一切顧慮することなく突き進むのは正当化し難いことです。中越沖地震が原発に与えた被害は恐るべきものと思われます。その総括を急ぎ、これを世界に発信することは日本の使命であると確信いたします。これにより「原発ルネッサンス」に取って代わる新しい潮流は大きく促進されることになると思われます。

日本の原子力政策の転換を訴える

2007年2月9日

村田 光平

1 はじめに
 このたび明らかにされた東京電力による199件の偽装工作は、原子炉の炉心冷却装置における非常用ポンプの故障という重大なものを含んでおり、国民の安全を最優先する立場からすれば、同社に原発を取り扱う資格はないと判断せざるを得ません。ほか、次々と各電力会社の不祥事(検査ミスや隠蔽、臨界事故疑惑など)が明らかとなっており、国の監督責任は重大であります。
 この機会に原点に立ち戻り、原子力政策のあり方を見直す必要があります。特に、政策の修正を一切なしえないという、我が国独特の原子力政策の決定のあり方の改善が早急に望まれます。我が国の原子力政策に見られる硬直性は、諸外国に比べて異常なものと言え、これは主管省のみで政策を決定するメカニズムに起因しているものです。
 破局の到来を未然に防ぐためには、(1)原発の国有化、(2)原子力安全・保安院の主管省からの独立、(3)浜岡原発の全面閉鎖、及び(4)六ヶ所村再処理工場の閉鎖を早急に実施すべきです。とりあえずの緊急課題は、これを可能にする政策決定メカニズムを確立することであると思われます。

2 戦後体制を象徴する原発
 原発開発のきっかけを自ら生み出したことを深刻に反省したアインシュタインは、死の5カ月前、「今度生まれ変わったらブリキ職人か行商人になりたい」と述懐したそうです。「核のない世界」が人類の理想であることは、誰も否定できません。
 被爆国である日本が、今日55基もの原発を有していることは、まさに異常と言えます。世界一の地震大国日本が、米、仏に次ぐ原発大国になっているのです。これは、放射能の危険性を国民に知らせないという「原子力タブー」があってはじめて可能となったことと言えます。こうした事態は、経済至上主義に立脚する戦後体制を象徴するものと思われます。
 原発テロリズムを考えれば、安全保障の見地からして、日本は実質的に最も脆弱な国になっていると言って過言ではありません。放射能汚染も避けられません。原発事故の可能性も増しています。
 そうした実情からして、東海大地震が予測される地域のど真ん中に存在する5基の浜岡原発の運転停止を求める全国署名は、現在90万筆近くを数えています。また、一日に「原発1基1年分以上」といわれる放射能を日常的に放出している六ヶ所村の再処理工場は、浜岡原発とともに、日本のみならず世界を脅かすものとして、国際的にもその実態が注視されております。

3 原子力の危険性に対する世論の認識の深まり
 最近の世論の動きを見ると、原子力の危険性に目ざめつつあることが看取されます。チェルノブイリ原発事故20周年に関する多くの報道が、これに大きく貢献しております。また最近は、原発事故の悲惨さを描いたドイツの映画『みえない雲』、『六ヶ所村ラプソディー』、『東京原発』などに多くの観客が集まりました。私が関係する大学でも、多くの学生が原子力の危険性に対する認識を深めております。
 現在、アル・ゴア前米副大統領の地球環境に関する警告の著書、またそれをもとにした同名の映画『不都合な真実』が世界的に大きな注目を集めています。この著書ならびにドキュメンタリー映画の主題は「地球の温暖化」ですが、これを「原子力の脅威」と置き換えてみてもすべて当てはまることに驚かされます。
 アル・ゴア氏がよく引用する比喩があります。「カエルは熱湯に飛び込めばすぐに飛び出すが、ぬるま湯から少しずつ熱していけば、お湯が沸騰するまで気がつかず死んでしまう」というものです。この比喩は、人類が直面している脅威を見事に暗示しています。
 また、アル・ゴア氏は「すべては倫理の問題である」と強調し、温暖化の実態に関する科学者の報告書が政治的圧力で改ざんされる事例、あるいはマスコミを通じた情報操作を指摘していますが、これも原子力問題を想起させるものです。
 『不都合な真実』が最も強く訴えているのは、脱原発など資源多消費型文明からの決別の必要性だと思われます。新しい文明の創設は、これを支えるエネルギーについても、脱石油、脱原発など、新たな課題への取組みを必要としているのです。事実、脱原発を進めているスウェーデンでは、2020年までの脱石油を決定しております。

4 原子力に対する批判の高まり
 原子力に対しては、今後次のような観点から批判が強まることが予想されます。

(1)未来の世代の人権を蹂躙する
 処理方法が見いだされておらず半永久的に有害な原発の廃棄物を後世に残すことは、倫理的に許されることではありません。放射能は人間の生殖機能(遺伝子)を傷つけ、その被害は幾世代先にまで及ぶものです。未来の世代の人権保護の見地から、対策が必要とされます。
(2)原子力の使用は倫理の根本に反している
 原発は当初より、その廃棄物の最終的処理法を持たないまま運転されています。また、万全の事故対策も存在せず、放射能汚染から住民を守る措置もまったく不十分です。これは「無責任」そのものと言えます。
 また、原子力の危険性を直感する住民の反対を抑えるため、交付金や匿名寄付など巨額の金をばらまいているのは周知のことであり、こうして破局の種を植えつけることは倫理の根本に反しています。
(3)核兵器、原発は地球環境を破壊する最大の潜在力を有する
 これまでに行われた各国の核実験は、数千万人規模の被曝者を生んでいます。また原発大事故の恐ろしさは、チェルノブイリ事故、スリーマイル島事故などにより立証済みです。
 また、ロバート・ストレンジ・マクナマラ・元米国防長官が述べているように、「キューバ危機」をはじめ、これまで核戦争を回避できてきたのは「幸運」によるものであり、この「幸運」をいつまでもあてにすることはできません。
(4)原子力の平和利用は核拡散をもたらす
 イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮などの核開発がその証左です。「原子力の平和利用」により生ずるウラニウム及びプルトニウムなどは、核テロリズムの脅威を現実のものとしています。最近ロンドンで元KGB職員がポロニウムにより暗殺されたことが想起されます。
(5)原発は新しい文明を支えるエネルギーとして適さない
 原発は常時「フル稼働」を必要とし、夜間に余計となるエネルギーを活用するため揚水ダムを造るなど、電力消費を助長するものです。

5 「原発ラッシュ」の潮流と地球の非核化
 上述のように、世論の動きが原子力の危険性に目覚めつつある中で、最近、原発の新規開設の動きが「原発ラッシュ」として報じられています。この点に関して指摘しておきたいことがあります。
 一つは、このような潮流は、原発大事故がどこかで発生すれば消え去るものであるということです。昨年7月、スウェーデンで原発の緊急用発電機が動かず、あと7分で大惨事になるという重大な事態を引き起こしました。これにより、原子力の安全性に関する論議が欧州各国で活発化しております。
 また、報じられているように、原発がアジア諸国、アラブ諸国にまで拡散することは、平和利用を超えて核開発に至り得るものです。これが核テロリズムの可能性の増大につながるものであることは、言うまでもありません。
 2005年6月、スタンフォード大学で開催されたOBサミットにスペシャル・ゲストとして出席したAmitai Etzioniジョージ・ワシントン大学教授は、論文で骨子次のような見解を発表し注目されています。
(1)国家安全保障の見地より、50万人の即死者と大都会の壊滅をもたらし得る核テロリズムの防止が最優先されねばならない。
(2)そのためには、核兵器及びその製造を許す核物質へのアクセスを断たねばならない。
(3)NPT(核不拡散条約)体制下では、核物質の管理された保有が認められているが、これを改め、核物質の回収を行うべきである。
 このような見解からすれば、「核の平和利用」に対する規制強化は、早晩不可欠となります。しかしイランの例が示すように、これに対する抵抗は強く、最近の原発復興の潮流はさらにその代価を高めると思われます。結果として、核保有国が本格的な核軍縮に応ずることによってのみ、「核の平和利用」の規制を実現できるような事態となることも想定し得るのです。
 これまで核保有国は、NPT条約上課せられている核軍縮の義務を、真剣に果たそうとはしてきませんでした。しかし、北朝鮮及びイランへの対応に見られるとおり、米国は核テロリズム防止を含む安全保障上の要請から、今後原子力の平和利用を規制する方向で動かざるを得なくなるでしょう。そしてその代価として、自らも他の核保有国とともに核軍縮に踏み切らざるを得なくなると思われます。こうして、民事・軍事を問わない地球の非核化という理想が現実味を帯びることになります。
 人類は現在、核問題をはじめとする危機的状況にあります。理想を実現しなければ、存続が危ぶまれる状況にあるのです。その意味で理想と現実は紙一重となっております。ここに天の摂理が感じられます。

6 今後の課題
 原子力政策の転換を行う際に考慮すべき点としては、次のような諸点を挙げることができます。
(1)原子力関係の仕事に携わる人々の生活を、不安のないものにするための施策を講ずること。
(2)国が事故防止、事故処理、放射能災害対策などにつき、全責任を負う体制を確立すること。
(3)燃料電池、太陽エネルギー、風力エネルギーなど、新エネルギーの開発に本格的に取り組むこと。権威ある外国の専門家が、エネルギー需要の4割まで開発可能としている「地熱エネルギー」の活用見直しも求められる。
(4)原子力分野を専攻する学生の深刻な不足が取り沙汰されているが、既設原発、使用済み核燃料及び核廃棄物の安全管理の専門家を育成し、その使命に充分誇りを感じさせる体制を整えること。
(5)ドイツ、イタリア、オーストリア、スウェーデンなど、欧州の主要国は脱原発に踏み切っているが、その根拠となる理由は、連帯の精神から他国とも共有し得るはずである。他国での事故が自国にも及ぶことを考えれば、このような連帯は不可欠と考えられる。こうした国際連帯を日本は世界に訴えていくべきである。

7 おわりに
 原発が「核の平和利用」と銘打たれ人類の夢のエネルギーとして登場し、多くの優秀な人材が献身的にその開発に貢献してきていることは評価されねばなりません。しかしながら、広島・長崎の悲劇、不幸な原発大事故などにより放射能の危険性が立証されている今日、「ぬるま湯の中のカエル」となっている日本そして世界は目覚めなければなりません。
 この小論は、原点に立ち戻ることにより「核のない世界」の実現を訴え、すべての関係者の奮起を願うものです。みなさまのより一層のご理解とご尽力を、心よりお願い申し上げます。

(c)2007村田光平