|
日本語版・文書室
|
[村田光平氏の最近の活動]
・インターネット新聞JANJANに小論「六ケ所再処理のアクティブ試験、米議員も反対」(「青森県知事への要望書」含む)掲載。
・師友塾・東京校にて「新しい文明を求めて〜人間復興をめざす文化の逆襲」と題した講演を行う。(2006.2.4)
・スイス・バーゼル都市部政府が後援するエネルギーフォーラム「Sun21」(エネルギーの節約と自然エネルギー開発の促進を目的とする)の名誉会員に就任(2006.2.28)
・「世界を脅かすゲーム・ネット中毒」とのタイトルにて、『脳内汚染』(岡田尊司著、文藝春秋社)に関する小論がインターネット新聞JANJANに掲載される。また、同内容を各党党首、政府関係などに発信。(2006.4.26)
・小論「世界を脅かすメディア中毒」が『LIVE LIFE』紙(2006年5月号、トランタンネットワーク新聞社)に掲載される。
・五井平和財団主催“国際フォーラム2005「新しい文明を築く」”(ゴルバチョフ氏参加)に出席の折の写真を資料室に掲載。(2006.5.7)
・「原発震災を防ぐ全国署名」賛同人に、ツーリズム研究会代表・住野昭氏が参加。(2006.5.15)
・(財)日本ナショナルトラスト(国土交通省所轄)評議員に再任される。(2006.6.1付)
・インターネット新聞JANJANに『原子力の危険性に目覚めたフランス報道界』https://www.janjan.jp/living/0608/0608239971/1.phpが掲載される。(2006.8.24)
・インターネット新聞JANJANの「アドバイザー」に任命される。https://www.janjan.jp/editor/0608/0608250080/1.php(2006.8.26)
・小論『杜撰な耐震指針の見直しに抗議の辞任』がJANJAN に掲載される。http://www.janjan.jp/government/0608/0608300347/1.php(2006.8.31)
・松浦ユネスコ事務局長との写真を資料室に掲載。(2006.9.18)
・小論『「国策」というなら全責任をもて〜原子力政策の転換を訴える』がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.2.8)
・上記と同内容の小論(タイトル「日本の原子力政策の転換を訴える」)を、政府関係、電力会社など関連機関および専門家などに発出。(2007.2.6〜)
・小論「日本の原子力政策の転換を訴える」がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.3.8)
・小論「動き出した地熱エネルギー開発」がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.3.13) [上記2論や同主旨の内容は、各県知事、政府関係、電力会社、識者などに発信されている]
・週刊誌「FRIDAY」(4/13号・講談社)の記事「東海大地震&富士山が危ない」にて取材を受け、談話が掲載される(2007.4.3)
・季刊「軍縮地球市民」春号(明治大学軍縮平和研究所・西田書店刊)で約100ページに及ぶ「原発シンドローム」との特集記事が掲載され、計19名の執筆者に村田氏も参加。
・電気事業連合会/藤洋作会長、日本経団連/奥田碩会長あて、「原発問題に関する提言」を提出。(2007.8.4、8.6) 「資料室」へ
・美浜原発死傷事故を受け、西川一誠福井県知事宛、関西電力の全原発総点検の要望書を提出(2007.8.10)
・経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会に対し、「原発震災を防ぐ全国署名」の提出と要請書提出(意見交換)を行う。また、防災担当大臣に要望書を発出した。(2007.6.18)
・「署名88万筆 原発震災対策を政府に申し入れ 浜岡原発」がインターネット新聞JANJANに掲載される。(2007.6.26)
・外国特派員協会主催の記者会見にゲストスピーカーとして出席。発言の模様がインターネット新聞JANJANに動画で掲載される(「国は設置許可を取り消すべき・柏崎刈羽原発」)。(2007.7.25)。
・世界で最も権威のある総合学術雑誌の一つである英国の「Nature」448号(7.26発売)で、2ページにわたり柏崎刈羽原発関連問題が報じられる中、上記外国特派員記者会見での村田氏の発言が引用され、浜岡原発の危険性について言及された。
・英国誌「Times」(7/21号)が、上記外国特派員記者会見での村田氏の発言を引用し、浜岡原発の危険性などについて言及。
・インターネット新聞JANJANに小論「原発ルネッサンス」の潮流を揺るがした中越沖地震・柏崎刈羽原発が掲載される(2007.10.22)
・インターネット新聞JANJANの中国向けページに、柏崎原発問題、OBサミット、脳内汚染、原子力政策の転換、反「原発ルネッサンス」といった各論が掲載される。(2007.11〜2008.2)
・インターネット新聞JANJANに、小論『「原発ルネッサンス」の潮流を逆転させる中越沖地震・柏崎刈羽原発』が掲載される(2008.1.29)
・村田氏ほか3名にて、「原発震災を防ぐ全国署名」が900,034筆になったこと、また茂木清夫元地震予知連絡会会長(地震予知連絡会は政府組織・国土地理院内の機関)も署名したことを、原子力安全委員会に報告し、意見交換した。(2008.5.13)
・「原発震災を防ぐ全国署名連絡会」会長ほか数名と村田氏が、原子力安全保安院・森山善範氏(原子力発電安全審査課長)ほか数名に、署名結果の途中報告などをし、率直な意見交換を行う。(2008.6.2)
日本の原子力政策の転換を訴える
2007年2月9日
村田 光平
1 はじめに
このたび明らかにされた東京電力による199件の偽装工作は、原子炉の炉心冷却装置における非常用ポンプの故障という重大なものを含んでおり、国民の安全を最優先する立場からすれば、同社に原発を取り扱う資格はないと判断せざるを得ません。ほか、次々と各電力会社の不祥事(検査ミスや隠蔽、臨界事故疑惑など)が明らかとなっており、国の監督責任は重大であります。
この機会に原点に立ち戻り、原子力政策のあり方を見直す必要があります。特に、政策の修正を一切なしえないという、我が国独特の原子力政策の決定のあり方の改善が早急に望まれます。我が国の原子力政策に見られる硬直性は、諸外国に比べて異常なものと言え、これは主管省のみで政策を決定するメカニズムに起因しているものです。
破局の到来を未然に防ぐためには、(1)原発の国有化、(2)原子力安全・保安院の主管省からの独立、(3)浜岡原発の全面閉鎖、及び(4)六ヶ所村再処理工場の閉鎖を早急に実施すべきです。とりあえずの緊急課題は、これを可能にする政策決定メカニズムを確立することであると思われます。
2 戦後体制を象徴する原発
原発開発のきっかけを自ら生み出したことを深刻に反省したアインシュタインは、死の5カ月前、「今度生まれ変わったらブリキ職人か行商人になりたい」と述懐したそうです。「核のない世界」が人類の理想であることは、誰も否定できません。
被爆国である日本が、今日55基もの原発を有していることは、まさに異常と言えます。世界一の地震大国日本が、米、仏に次ぐ原発大国になっているのです。これは、放射能の危険性を国民に知らせないという「原子力タブー」があってはじめて可能となったことと言えます。こうした事態は、経済至上主義に立脚する戦後体制を象徴するものと思われます。
原発テロリズムを考えれば、安全保障の見地からして、日本は実質的に最も脆弱な国になっていると言って過言ではありません。放射能汚染も避けられません。原発事故の可能性も増しています。
そうした実情からして、東海大地震が予測される地域のど真ん中に存在する5基の浜岡原発の運転停止を求める全国署名は、現在90万筆近くを数えています。また、一日に「原発1基1年分以上」といわれる放射能を日常的に放出している六ヶ所村の再処理工場は、浜岡原発とともに、日本のみならず世界を脅かすものとして、国際的にもその実態が注視されております。
3 原子力の危険性に対する世論の認識の深まり
最近の世論の動きを見ると、原子力の危険性に目ざめつつあることが看取されます。チェルノブイリ原発事故20周年に関する多くの報道が、これに大きく貢献しております。また最近は、原発事故の悲惨さを描いたドイツの映画『みえない雲』、『六ヶ所村ラプソディー』、『東京原発』などに多くの観客が集まりました。私が関係する大学でも、多くの学生が原子力の危険性に対する認識を深めております。
現在、アル・ゴア前米副大統領の地球環境に関する警告の著書、またそれをもとにした同名の映画『不都合な真実』が世界的に大きな注目を集めています。この著書ならびにドキュメンタリー映画の主題は「地球の温暖化」ですが、これを「原子力の脅威」と置き換えてみてもすべて当てはまることに驚かされます。
アル・ゴア氏がよく引用する比喩があります。「カエルは熱湯に飛び込めばすぐに飛び出すが、ぬるま湯から少しずつ熱していけば、お湯が沸騰するまで気がつかず死んでしまう」というものです。この比喩は、人類が直面している脅威を見事に暗示しています。
また、アル・ゴア氏は「すべては倫理の問題である」と強調し、温暖化の実態に関する科学者の報告書が政治的圧力で改ざんされる事例、あるいはマスコミを通じた情報操作を指摘していますが、これも原子力問題を想起させるものです。
『不都合な真実』が最も強く訴えているのは、脱原発など資源多消費型文明からの決別の必要性だと思われます。新しい文明の創設は、これを支えるエネルギーについても、脱石油、脱原発など、新たな課題への取組みを必要としているのです。事実、脱原発を進めているスウェーデンでは、2020年までの脱石油を決定しております。
4 原子力に対する批判の高まり
原子力に対しては、今後次のような観点から批判が強まることが予想されます。
(1)未来の世代の人権を蹂躙する
処理方法が見いだされておらず半永久的に有害な原発の廃棄物を後世に残すことは、倫理的に許されることではありません。放射能は人間の生殖機能(遺伝子)を傷つけ、その被害は幾世代先にまで及ぶものです。未来の世代の人権保護の見地から、対策が必要とされます。
(2)原子力の使用は倫理の根本に反している
原発は当初より、その廃棄物の最終的処理法を持たないまま運転されています。また、万全の事故対策も存在せず、放射能汚染から住民を守る措置もまったく不十分です。これは「無責任」そのものと言えます。
また、原子力の危険性を直感する住民の反対を抑えるため、交付金や匿名寄付など巨額の金をばらまいているのは周知のことであり、こうして破局の種を植えつけることは倫理の根本に反しています。
(3)核兵器、原発は地球環境を破壊する最大の潜在力を有する
これまでに行われた各国の核実験は、数千万人規模の被曝者を生んでいます。また原発大事故の恐ろしさは、チェルノブイリ事故、スリーマイル島事故などにより立証済みです。
また、ロバート・ストレンジ・マクナマラ・元米国防長官が述べているように、「キューバ危機」をはじめ、これまで核戦争を回避できてきたのは「幸運」によるものであり、この「幸運」をいつまでもあてにすることはできません。
(4)原子力の平和利用は核拡散をもたらす
イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮などの核開発がその証左です。「原子力の平和利用」により生ずるウラニウム及びプルトニウムなどは、核テロリズムの脅威を現実のものとしています。最近ロンドンで元KGB職員がポロニウムにより暗殺されたことが想起されます。
(5)原発は新しい文明を支えるエネルギーとして適さない
原発は常時「フル稼働」を必要とし、夜間に余計となるエネルギーを活用するため揚水ダムを造るなど、電力消費を助長するものです。
5 「原発ラッシュ」の潮流と地球の非核化
上述のように、世論の動きが原子力の危険性に目覚めつつある中で、最近、原発の新規開設の動きが「原発ラッシュ」として報じられています。この点に関して指摘しておきたいことがあります。
一つは、このような潮流は、原発大事故がどこかで発生すれば消え去るものであるということです。昨年7月、スウェーデンで原発の緊急用発電機が動かず、あと7分で大惨事になるという重大な事態を引き起こしました。これにより、原子力の安全性に関する論議が欧州各国で活発化しております。
また、報じられているように、原発がアジア諸国、アラブ諸国にまで拡散することは、平和利用を超えて核開発に至り得るものです。これが核テロリズムの可能性の増大につながるものであることは、言うまでもありません。
2005年6月、スタンフォード大学で開催されたOBサミットにスペシャル・ゲストとして出席したAmitai Etzioniジョージ・ワシントン大学教授は、論文で骨子次のような見解を発表し注目されています。
(1)国家安全保障の見地より、50万人の即死者と大都会の壊滅をもたらし得る核テロリズムの防止が最優先されねばならない。
(2)そのためには、核兵器及びその製造を許す核物質へのアクセスを断たねばならない。
(3)NPT(核不拡散条約)体制下では、核物質の管理された保有が認められているが、これを改め、核物質の回収を行うべきである。
このような見解からすれば、「核の平和利用」に対する規制強化は、早晩不可欠となります。しかしイランの例が示すように、これに対する抵抗は強く、最近の原発復興の潮流はさらにその代価を高めると思われます。結果として、核保有国が本格的な核軍縮に応ずることによってのみ、「核の平和利用」の規制を実現できるような事態となることも想定し得るのです。
これまで核保有国は、NPT条約上課せられている核軍縮の義務を、真剣に果たそうとはしてきませんでした。しかし、北朝鮮及びイランへの対応に見られるとおり、米国は核テロリズム防止を含む安全保障上の要請から、今後原子力の平和利用を規制する方向で動かざるを得なくなるでしょう。そしてその代価として、自らも他の核保有国とともに核軍縮に踏み切らざるを得なくなると思われます。こうして、民事・軍事を問わない地球の非核化という理想が現実味を帯びることになります。
人類は現在、核問題をはじめとする危機的状況にあります。理想を実現しなければ、存続が危ぶまれる状況にあるのです。その意味で理想と現実は紙一重となっております。ここに天の摂理が感じられます。
6 今後の課題
原子力政策の転換を行う際に考慮すべき点としては、次のような諸点を挙げることができます。
(1)原子力関係の仕事に携わる人々の生活を、不安のないものにするための施策を講ずること。
(2)国が事故防止、事故処理、放射能災害対策などにつき、全責任を負う体制を確立すること。
(3)燃料電池、太陽エネルギー、風力エネルギーなど、新エネルギーの開発に本格的に取り組むこと。権威ある外国の専門家が、エネルギー需要の4割まで開発可能としている「地熱エネルギー」の活用見直しも求められる。
(4)原子力分野を専攻する学生の深刻な不足が取り沙汰されているが、既設原発、使用済み核燃料及び核廃棄物の安全管理の専門家を育成し、その使命に充分誇りを感じさせる体制を整えること。
(5)ドイツ、イタリア、オーストリア、スウェーデンなど、欧州の主要国は脱原発に踏み切っているが、その根拠となる理由は、連帯の精神から他国とも共有し得るはずである。他国での事故が自国にも及ぶことを考えれば、このような連帯は不可欠と考えられる。こうした国際連帯を日本は世界に訴えていくべきである。
7 おわりに
原発が「核の平和利用」と銘打たれ人類の夢のエネルギーとして登場し、多くの優秀な人材が献身的にその開発に貢献してきていることは評価されねばなりません。しかしながら、広島・長崎の悲劇、不幸な原発大事故などにより放射能の危険性が立証されている今日、「ぬるま湯の中のカエル」となっている日本そして世界は目覚めなければなりません。
この小論は、原点に立ち戻ることにより「核のない世界」の実現を訴え、すべての関係者の奮起を願うものです。みなさまのより一層のご理解とご尽力を、心よりお願い申し上げます。
「原子力政策大綱(案)」に対する意見
平成17年8月23日
東海学園大学教授(元駐スイス大使)
村田 光平
今年3月、私はサンタ・クララ大学で開催されたOBサミットの専門家会合に出席し、また今年6月にはスタンフォード大学で開催されたOBサミット総会にスペシャル・ゲストとして出席いたしました。その折、会議で発言の機会を与えられ、世界の最新情勢について幅広く意見交換して参りました。
今回案出されました本「大綱(案)」の理念及び厳しい現状認識には賛同できますが、第3章に盛られた具体的方針については、最近の国際的動きなど下記のような基本的要素をふまえて見直す必要があると考えます。
1.原子力の平和利用の限界
現在、米国の最大の関心事は核テロリズムを防止することにあると言えます。この立場から、「原子力の平和利用」を目的とした核物質が拡散しすぎている現状を是正するため、国際原子力機関(IAEA)を改革し、核物質を回収させる案も浮上しつつあります。
エルバラダイIAEA事務局長の核物質の国際管理案も同様の狙いを持つものと思われますが、日本のみが例外として過剰のプルトニウムの蓄積を許す核燃料サイクル政策を進めていくことが、今後長期にわたり国際的に認められるのか、楽観は許されないと考えられます。
現にペリー元国防長官、ノーベル受賞者6名を含む米国の「憂慮する科学者同盟」は、去る7月に、六ヶ所村再処理工場の凍結を日本政府に対して申し入れる声明を発出し、日本国内からもこれに呼応する動きが見られております。
2.現行の発展モデルの限界
上記のOBサミット総会にスペシャル・ゲストとして出席したレスター・ブラウン博士は、中国が現行の発展モデルを続ければ、20、30年以内に中国一国だけで石油、穀物、鉄鋼などの重要資源の大半を消費することとなる、インドも同様の可能性を持っており、もはや新しいモデルが必要とされる旨を指摘しました。これは新しい文明の必要性を示唆するものとして、出席者に強い印象を与えました。
原発は現行の発展モデルを支えるために必要とされるものであり、新しい文明への歩みが始められれば事態は一変するものと思われます。このような可能性は今から想定しておく必要があると考えられます。
3.未来の世代の人権を無視する原子力
今回のOBサミット総会における最終声明文では「人権は未来の世代を含むすべての人の所有物である」ことが謳われました。ユネスコも1997年に「現代の世代の未来世代への責任に関する宣言」を発出しております。
原発は半永久的に有害な放射性廃棄物を後世に残すものであり、DNA及びそれを含む染色体を傷つけ未来の世代に対し大きな罪を犯すものと言えます。
今回のOBサミット総会が未来の世代に対して表明した立場により、ユネスコの参画も得て、新しい国際的・具体的な行動に結びつくことが期待できることとなりました。原子力が未来の世代に対して犯している罪を是正するための重要な足がかりができたと言えます。
4.明るみに出された「原子力タブー」の背景
航空機あるいは鉄道の危険性などが、原発の危険性が指摘されるとよく引き合いに出されますが、これらの潜在的破壊力には被害者数だけを考えても千単位と百万単位の相違があり、比較になりません。
本来、潜在的な破壊力を考えれば、原発を使用することは人間の理性に反することです。外からの力と「原子力タブー」の存在がこれを許したとしか思えません。
1954年3月、米国が行ったビキニ環礁での水爆実験で第5福竜丸が被曝し、同年9月、久保山愛吉さんが死亡しました。日本人医師団は死因を「放射能症」は発表しましたが、米国は「放射能が直接の原因ではない」との見解をとり続けております。しかし7月23日付毎日新聞では、その背景として、日本の反核反米運動の高まりを恐れた米政府高官の発議で情報操作が画策されていたことが、情報公開された米公文書により判明したと報じています。
この報道は、6月17日付で毎日新聞が報じた“米国ジャーナリストによる「長崎原爆ルポ」”の発見と相まって、放射能の危険性を知らせない「原子力タブー」の淵源を白日に晒すものです。今後日本のマスコミは、これまで国民に十分周知されていなかった放射能の危険性について報道していかざるを得なくなるものと予想されます。
5.報道され出した放射能の危険性
最近、「原子力タブー」を破り、放射能の危険性について考えさせられる報道が目立つようになりました。原子力行政に影響を及ぼしていくことが予想されます。
特に注目されるのは、7月1日付東京新聞の記事です。同紙はワシントン発共同電をキャリーして「放射線被曝 低線量でも発がん危険」とする米科学アカデミーの報告書の内容を伝えています。
これによれば、低線量の被曝による人体への影響に関し、「一定量までなら害はない」「低線量の被曝は免疫を強め健康のためになる」といった説が否定され、低線量でも発ガンのリスクがあると結論づけています。全身のX線CTを受けると千人に一人はガンになるとのことです。この報告書の指摘の正しさが確認されるならば、深刻な影響を各方面に及ぼすことになると思われます。
これとの関連で注目されるのは、国内の53基から排出されている放射能の問題です。インターネット新聞JANJANの8月12日付記事でも指摘されておりますが、その被害はほぼ日本列島全体に及ぶ可能性があると言われており、また原発周辺のモニタリング体制も不十分であることが専門家により指摘されております。また原発の煙突からの排出ガスについての規制は「目標値」に過ぎないなどとも言われ、実態の究明が急がれます。これは原子力行政の根幹に関わる問題です。
昨今、アスベストによる被害が社会的に大きな問題となっていますが、次々に明るみに出されている放射能の危険性についても、後世の裁きを受けることのないよう「疑わしきは罰す」の方針で対応することが求められます。
6.迫り来る巨大地震
去る8月16日に発生した宮城県沖を震源とした地震(M7.2)は、女川原発3基が想定以上の揺れに遭遇し緊急停止しました。このことは、同原発の耐震構造に深刻な問題があることを浮き彫りにしています。しかも今回の地震は想定されていた「宮城県沖地震」ではなく、より巨大な本震の発生が確実視されています。
さらに大きな懸念の対象になっているのは、マグニチュード8以上の東海大地震が予測されている地域のど真ん中に存在する5基の浜岡原発です。これらの運転停止を求め、昨年4月より全国署名が行われ、1年間で55万筆余りが集められました。同署名の賛同者には、稲盛和夫、梅原猛、下河辺淳、坂本龍一、広中和歌子ら諸氏60余名が名を連ねています。
その成果として、中部電力は耐震構造の不備を認め補強作業を始めていますが、浜岡原発の停止の求めに応ずる動きは一切見られないのが現状です。
原発震災の発生という現実に迫っている危険性に対し、早急に対応が取られることが強く求められます。
7.結論
本「大綱(案)」は、原子力の平和利用が従来通り国際的に認められるとの前提に立っております。しかしながら、「平和利用」が核開発を許し、核テロへの道を開くものであるとの認識は深まりつつあり、核テロ防止を最優先とする立場から、米国は「平和利用」を厳しく規制する方向に動くものと思われます。
イラン・北朝鮮の例に見られるように、平和利用の権利を支持する立場と核保有国の立場との対立が強まりつつありますが、核テロを防止する観点から、核保有国は実質的な譲歩を強いられるにいたり、早晩、民事・軍事を問わない地球の非核化が現実の課題になるものと予想されます。
本「大綱(案)」は、上記の諸点を踏まえた見直しが必要と考えます。
(以上)
●週刊新潮(2005.5.11号)の「掲示板」にて掲載されたものの原文
福田赳夫氏が首相引退後に創設した「OBサミット」は、アメリカ・旧ソ連・ドイツをはじめ世界各国の大統領・首相経験者が、毎年30名ほど集まって開催される国際会議です。今年は6月に総会が開かれ、例年のように世界全体の重要課題につき提言をとりまとめる予定です。
その準備段階として、去る3月末に米国サン・ノゼにて、フレーザー元豪州首相を議長とした「ハイレベル専門家会合」が開催され、私も招致されて出席しました。
会合では、OBサミット総会で採択される文書の原案作成を行いますが、人権に関して「未来の世代」の視点が含まれておりませんでしたので、その不備を指摘しました。結果、強い抵抗もありましたが、「人権は未来の世代を含むすべての人の所有物である」との文言が入ることとなりました。未来の世代に対する配慮が明記されたことにより、資源・環境・核問題なども視野に入ることになるわけで、誠に喜ばしく思っております。
OBサミットは1997年に「人間の責任に関する世界宣言」をとりまとめ、国連総会でこれが採択されるよう働きかけを行っていますが、今回の成果もそこに盛り込まれることになります。
私はスイス大使時代より「未来の世代の代表」を名乗って活動を続けております。ネットワーク拡大のためにも、この場を借りて皆様のご協力をお願い申し上げる次第です。
村田光平
●脱原発への試案●
平成15年11月
村田光平
1 「国策」転換を必要とする理由
(1)浜岡原発の異常性
マグニチュード8クラスの地震が予測される東海地域のど真ん中に、原子力発電所4基が建設され、さらに5基目が建設中という現実。地震学の権威である茂木清夫東大名誉教授および石橋克彦神戸大学教授は、すでに今年7月、札幌で開催された国際会議において、原発震災による未曾有の破局の可能性につき、重大な警告を発している。
(2)六ヶ所村の異常性
六ヶ所村の下記のような動きは、青森県のみならず、日本全土にも影響を及ぼしうる重大な危険性をはらんでいる。
イ. 再処理工場
最悪の場合、原発1000基分という人間の想像をはるかに超えた事故となり世界の人口の半分近くの犠牲者を生むと言われている六ヶ所村の再処理工場に、最近300ヶ所余りの不正溶接が発見され、ズサンな工事の実態が世間を驚かせている。当局による監視の強化で済まされる問題ではない。
ロ. ITER(国際熱核融合実験装置)
六ヶ所村はITER(イーター)の誘致を決めているが、これに対しては、ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊氏、およびマックスウェル賞受賞者の長谷川晃氏が、今年3月、連名で同装置が200万人を殺傷する可能性のあるトリチウムを使用することに言及しつつ、同誘致に絶対反対するとの嘆願書を、小泉総理宛に発出している。
(3)原発のズサンな管理体制
管理体制のズサンさを示す事例には事欠かない。最近、新聞各紙は原発の圧力制御室に多数の異物が放置されていたことを報じている。10月26日付毎日新聞は、東京電力、中部電力、中国電力の三社11基に、合計610個の異物が見つかった旨伝えている。原発のトラブル発生件数も激増しており、2000年度は経済産業省および文部科学省関係合わせて55件であったものが、2002年度は経済産業省関係のみで102件を数える。このように老朽化が進んだ段階で東電の不祥事を契機として「維持基準」が導入されたことは、国の管理体制に信を置けないと言わざるをえない。
(4)巨大地震発生に伴う原発震災の可能性
地震学者の多くは「大地動乱」の時代の到来を告げている。最近の東北地震は警戒地域ではない「空白地帯」が存在することを示すものであり、これにより「原発震災」発生の可能性は、日本中すべての原発について想定せざるを得なくなった。世界有数の地震国である狭い日本に、世界第三位という数の原発が存在すること自体、異常である。
(5)倫理と責任に欠ける原子力
「原発大事故の発生はない」という根拠なき大前提により、地震の被害予測において原発を完全に無視しているのは無責任の極みと言える。旧ソ連はチェルノブイリ事故に際しては事故鎮圧のため90万人近くの人員を動員したが、日本にはそうした対策は存在しない。スウェーデンは事故を想定し、16歳以上の国民の協力義務を立法化している。
また、原発は正常に運転されている時も、原発での労働者や周辺の住民に放射能による被害を与えている。日本では、1970年から2000年までの31年間に、延べ140万人を超える被曝労働者を出している。その中には、帰国した外国人労働者は含まれていない。
人類は未だに核廃棄物の処理方法を見出しておらず、恒久的に有毒な物を後世に残すことは倫理の根本に反する。劣化ウランの武器への転用・大量使用と小型原爆の実用化に対して、日本は非難の声をあげるべきである。唯一の被爆国として、日本は民事・軍事を問わない地球の非核化を世界に訴える責任と義務を有すると考える。
2 脱原発へ向けての具体的方策
(1)「三方一両損」の方式による脱原発のヴィジョンを打ち出すこと
(一両の損) → (大きな利益)
・企業 脱原発に伴う経済的損失→日本経済の壊滅的打撃の防止
・国 企業に対する補償→回復不能な未曾有の大災害発生から逃れる
・国民 電気料金の値上げ等、物質的不便→命・健康の損失等を防ぐ
(2)原子力関係組織の抜本的改組
チェルノブイリ事故以来21基もの原発の建設を許した責任は重大である。
(3)独占的公益企業である電力会社のあり方の見直し
特に資金使途の管理強化
(4)核燃料サイクル政策の見直しに関する国会審議
数十兆円規模の経費が見込まれる同政策は国会審議を経ていない
(5)原発建設および中間貯蔵施設に関する近隣県の決定参画の立法化
町長の権限見直し
(6)エネルギー供給構造の抜本的再検討
新エネルギーや省エネルギー技術の開発、多消費型ライフスタイルの改革
●浜岡原発の運転停止を求める全国集会における発言●(2003.11.2)
1.私の立場
みなさん、こんにちは。村田です。みなさんの心がけがいいから、このようなすばらしい天気に恵まれました。まず冒頭、日頃この浜岡の原発の問題で大変なエネルギーを注いでおられる皆様に心から敬意を表させていただきます。初めてお目にかかる方も多いと思いますので、私がどういう立場から他のこの原子力の問題に取り組んでいるか、そこから話に入らせていただきます。
私は、スイスで未来の世代の代表を名乗っておりました。初めは冗談で言っておりましたが、スイス国民から激励を受けまして、今では真面目に未来の世代の代表と称しております。その時に気が付くのが、今の世代はどんなに罪深いことをしているかと云うことです。未来の世代に属する天然資源を乱用して繁栄を築いてる。そして永久に有毒な廃棄物をどんどん垂れ流してる。更に巨大な財政的つけを未来の世代に回している。これは大変罪深いことであります。そして私はこの罪深い世代で最も罪深いことは、原子力を使ってることだと思います。この負の資産を取り除くということが、現世代に与えられた責務であると考えているわけであります。私は長い間、外交官として政府、国、そして国民を代表する立場にありました。そういうことで私の役割は、政策を決定するのは政府でありますので、市民社会と政府の協力関係を深めること、そして市民社会と政府の間の橋渡しを行うことにあると考え、その心がけで活動を続けているわけであります。
2.「国策」の転換を必要とする理由
今日は、みなさまにこれからの具体的な解決案というものを、私なりに考えてきたことを最後にご披露したいと考えております。私は、物事を逆算します。まず今の政策がこのまま続けば必ず破局が訪れる。しかし日本国民は必ずその破局を避けるであろう。その場合に大前提となるのは今の国策となっている原子力政策の転換であります。それではその政策の転換を果たすにはどうしたらいいか。これは世論の喚起しかない! みなさまが代表される世論の喚起しかない。そして世論の喚起に決め手となるのはマスコミであります。マスコミが動くにはタブーを破ることが大前提となるわけであります。そういうことで、今日のお話の中では私が取り組んでいるタブー破りにつきましても触れさせていただきたいと思っております。
私は無限の楽観主義に基づいて活動しております。それは何故か? 私は一つの哲学を持っております。それは「善き思い天が助ける」という哲学であります。そして天の摂理ということも信じております。天の摂理というと、大学で教授をやってる者が非科学的だというふうに思われるかも知れませんが、文明の歴史を勉強すれば、いわゆる超合理的なところに真理があることに気が付きます。歴史は天の摂理が存在することを立証しています。日本国民は平家物語の「盛者必衰の理」という言葉で、素直にそのことを信じられるわけでありまして、そういう意味では学問、科学を乗り越えた天の摂理というものがあるということで、私はみなさんの運動の成果につきましては極めて楽観しているわけであります。
それからもう一つ、私の支えとなっている先哲の言葉があります。それは「全ての人を短期間だますことは可能かも知れない。それから一部の人間を永遠にだますことも可能かも知れない。しかし全ての人間をいつまでもだますことは不可能である」と云うことです。原子力につきまして、また核融合につきまして、安全性については真っ赤なウソがある。日本国民は必ずこれに目覚める。そのように確信しておりまして、そこが私の楽観主義の源泉であります。私は今日、みなさんの熱気に支えられながら、今日の全国集会を手始めとしまして、力強く国策の転換を国民の皆様に訴えていきたいと思っております。そして浜岡がその突破口になるわけであります。
なぜ私がこの国策は旗を降ろさなければならないと言うのか。これを言うのは私の立場としては非常に辛いものがあったわけでございますが、今はその覚悟ができております。私が思い出しますのは吉田茂元総理が軍部に反対し、戦争政策に反対して牢屋に入れられたことです。しかし彼の反対した国策は正に日本を破局に導いたわけであります。今原子力政策は破局を招きかねないということで、正に昔の軍部の政策と同じような面があるわけであります。これまでは、どのような事故が起きても国策は堅持されております。またその国策を口実に、国策に反対するものは町からでていけと言うような町長さんもいると聞いております。後ほど申し述べますが、このような現在の体制は見直さなければならないと確信しております。
1)浜岡原発の異常性
国策を変えなければならない理由として、私は今日、五つの点を挙げます。まず第一は浜岡原発です。国策がいかに国民の生命を脅かす存在になって、国策の名前に値しないかということを示す第一の事例が浜岡原発であります。昨年5月、私は6名の方々と一緒に浜岡原発を止める声明を出しました。その直後に検査を終え運転を再開した2号機が水漏れを起こしてしまいまして、私はそのとき確信を持ちました。やはり専門家よりも市民の直観のほうが正しいことを確認できたわけであります。これからは専門家よりも市民の時代であり、技術よりも市民の直観がより重要であるという考えを、私はそこで強固なものにしたわけであります。
この浜岡につきましては、今年の7月札幌で開かれました国際会議で、予知連の会長を10年余りも務められた茂木清夫先生、それから神戸大学の石橋克彦先生、お二人が非常に強い警告を出されましたことは、みなさんがご存じの通りであります。石橋先生は、首都圏から2000万から3000万の避難民がでるとまで言われました。そして茂木先生は必ず地震には、起こってみなければ分からないことがあり、それを安全だというのは学者の慢心であるという趣旨のことも言われております。そしてもう一つ、耐震設計の審査指針はマグニチュード6・5までしか考慮にしていないのです。今予測されるのはマグニチュード8以上のものです。地震に対する措置は失格であるということはもう明白なわけであります。特に、石橋先生が指摘されていることですが、東海大地震は直下型地震でもあるということに対する配慮が全然ないということは、決定的な点だと思われます。
2)六ヶ所村の異常性
(イ)再処理工場
2番目は六ヶ所村です。青森県六ヶ所村。ここでみなさんご存じの通り再処理工場が作られようとしております。私は浜岡と六ヶ所村は世界を壊す可能性があるということを、私の本の中で書いております。再処理工場は最悪の場合、原発一千機分の天文学的な事故を起こすということを、広瀬隆さんが本で書かれております。世界の人口の半分が犠牲になると。そこには広島原発100万発分の死の灰を集める計画である。その再処理工場のずさん工事は目に余ります。最近、なんと300余りの不正溶接がみつかったということであります。
私はよく言うのでありますが、六ヶ所村の再処理工場は放射能を含んだ配管が総計で1500キロメートル。そして一つですら問題の多い溶接箇所がなんと40万カ所もある。そのようなものの安全を長期に確保できるという専門家が現れれば、私はその人の責任感を問いたいと思います。市民の直観で長期にそのようなものの安全を確保することは不可能であると断言できると私は確信しているわけであります。
(ロ)国際熱核融合実験装置(ITER)
六ヶ所村にはもう一つ大変残念なことがあります。六ヶ所村が熱核融合実験装置(ITER)の誘致を決めていることであります。この核融合につきましては、私がスイスにいる頃、ドイツの元原子力研究所所長のクラウゼ博士から、いかにこれが危険であるかを聞いておりました。従いまして私は昨年6月出版しました『原子力と日本病』の中で、二人の学者の意見を引用しました。一人は小柴先生です。その後ノーベル賞をとられました小柴先生。もう一人はマクスウェル賞をとられた長谷川晃先生。このお二人の意見を引用したわけです。そういう経緯がありましたので、このお二人が嘆願書を書かれることになりまして、私はその転達役を仰せつかりました。
トリチウムという大変危険なものがあります。その実験装置では2キログラムを使います。これは200万人殺傷する可能性がある。そして廃棄物は4万トン。これが残るわけであります。そして中性子による環境破壊。放射能による地下水汚染。こういったものが予見される。そういうことで小柴先生と長谷川晃先生は絶対反対であるという嘆願書を出されたわけです。しかしながら今日にいたるも政府の立場には変更が見られません。しかし私は大学で学生の意見を聞きますと、小柴先生が絶対反対とするものを進めるというのは、どのようないかがわしい理由があるのだろうということをみんな言います。みなさんもこの問題にぜひご関心を寄せていただきたいと思っております。
3)原発のズサンな管理体制
3番目に挙げたいのが、原発の管理のずさんさであります。それから老朽化であります。この管理のずさんさにつきましては、東電の不祥事でも明らかになりましたし、最近、ある意味ではタブー破り的に日本経済新聞が、福島原発で圧力抑制室から40余りの異物が見つかったという記事を大きく出しました。その後朝日新聞が267まで辿りました。そうしましたところ今度は10月26日付毎日新聞が中国電力・中部電力・東京電力三社合わせて11基で610の異物が見つかったと報じました。作業靴からスパナまで、もう開いた口がふさがりません。なおさらにびっくりしたのが、そういう事態を前に電力会社は安全性には問題ないと言ったことであります。この感覚の麻痺は恐ろしいことだと思われます。
私は一年前に出した本で、原発のトラブルの数がどれだけあるのか一覧表を載せました。そこは文部科学省と経済産業省の所管する原子力関係施設で55件が2000年に見られたわけです。それでも大変なことだと、私は本に書いたわけです。ところが2002年の数字が今年の4月に経済産業省から発表されました。その数字の中には文部科学省関係は含まれておりません。その数が102件でありました。これは老朽化を具体的に示すものとして、深刻に受け止めねばなりません。そういう中で、東電の不祥事件を契機に「維持基準」が導入されて、今後5年はたくさんのひび割れを抱えた原発の運転が許されることになりましたが、これを私は非常に危険だと受け止めております。ドイツでは、ひび割れがあったビルガッセン原発を廃止しました。このドイツの考え方と日本の考え方との違い、これは私は大変深刻な違いだと考えております。
4)倫理と責任に欠ける原子力
それから4番目に、私は原発の存在そのものが倫理と責任に欠けると考えます。
皆さんよくご存じですが、原発は存在するだけで煙突から放射能が出て周辺に被爆の害を与えている。これはいろいろな本が書いております。
それから被爆労働の問題があります。私は小論「倫理と責任に欠ける原子力」にて、1970年〜2000年までの31年間に延べ人数140万人の被爆労働者が出たということを書きました。しかもその中にはアジア・アフリカなどから来て短期働き、そのまま本国に帰ってしまっている人々の数は含まれておりません。これは何と罪深いことであるかと、私はその中で書きました。
それから無責任さです。要するにチェルノブイリの時には90万人近くを動員して事故の鎮圧に当たらせたわけですが、日本では大事故は起こらないとの根拠のない前提により、その対策も考えない。すべて民間の会社に委ねるのです。これほど無責任なことはない、と私は嘆いております。
皆さん、スウェーデンではどのような措置をとっているかご存じですか。16歳以上の国民は事故が起きた場合には協力する義務がある、ということを立法化しております。私はこの立法化措置を日本で進めれば、国民はそんな危険なエネルギーを使用するべきではないという結論に達すると信じております。しかし日本ではそういうことを一切取り上げようとしないのです。
5)「大地動乱」の時代
5番目には、この浜岡とも関連しますが、最近石橋先生が強調されている「大地動乱の時代」の到来と巨大地震が迫りつつあるという事実であります。これは浜岡のみならず日本で今運転されている52基全部に、原発震災の可能性があるということです。最近の東北地震が「空白地域」というものの存在を如実に示したということから、ますますその懸念が深まっているのです。
以上5つ理由を挙げました。このように、わが国の原子力政策は、もう国策の名に値しないことは明白であります。そして国策の旗を降ろさないと、私は電力会社だけを責めても脱原発はなかなか実現しないのではないか、そのように考えております。
3.「欠陥原発」に関する情報
それから皆さん。ここでひとつ重要な情報を改めて紹介いたします。それは原発の核心部分である圧力容器に、ひび割れがあるものが10基以上運転されているという情報が存在するということであります。これは1973年に欧米で大問題になったものであります。その製法によりますと、毛状の亀裂が無数生ずる、ということであります。そして圧力容器のその部分は、中性子によって鉄が劣化しておりますから、緊急炉心冷却装置が作動すると、240度の温度差によって鉄がパリンと割れてしまう、という実験結果が、アメリカのオークリッジ研究所に存在するというものであります。この情報はタブーのためかなかなか日の目を見なかったのですが、1年くらいたって今年8月初旬にようやく表沙汰になりました。しかし今日に至るも未だ、関係方面からの説明責任は果たされておりません。
私は2週間ほど前、梶原拓全国知事会長に書簡を送りまして、国が説明責任を果たすよう、そして「欠陥原発」の安全の確認をするよう国に申し入れて欲しいと要請致しました。その書簡の中で同時に私は2点取り上げました。ひとつは地震の被害予測に原発の「げ」の字も入れていない、この責任放棄を是正するよう、国に申し入れるということであります。
私はタブー、タブーとよく言いますが、それが最も見事に立証されるのは、地震被害予測で原発を完全に無視しているという点でありまして、これは到底許されないことであります。
それからもうひとつは原発関係施設が及ぼす影響は、大変広い地域にわたるわけです。少なくとも関係県、近隣県を決定の参画に関与させなければならないわけです。ところが今、原発の建設や中間貯蔵施設の誘致を1町長の実質的権限に委ねている。これは到底国民が受け容れ得るものではなく、町長の権限を見直す法改正を国に申し入れて欲しいということです。
この3つ、私はいずれも正論であると確信しますが、今のところ、全国知事会がどういうアプローチをとってくれるか見守っているところであります。私はこの3点につきましてはすでに国の方にもコピーを回しております。本来は国が率先してとるべき措置だと思っておりますが、こういった正論をこれから実施するように求めていきたいと考えております。
4.タブー破りの成果
私はこの夏、「欠陥原発」に関する上述の情報を伝え、政策転換を訴える書簡を1000通くらい発出しました。お蔭で3キロくらいスリムになりました。その中には小泉総理以下関係閣僚、国会、最高裁判所、日本経団連、経済同友会、マスコミ、政界、官界、学会、連合、市民グループなど各界の有力者が含まれております。その成果でしょうか、去る9月、私は静岡県庁で記者会見を求められました。そしてその結果が、これもタブー破りで私が原発震災の防災訓練を訴えるというかたちで写真入りで『中日新聞』に報道されました。その他、『静岡新聞』『朝日新聞』も報道してくれました。タブー破りの成果が少しずつ現れております。私の書簡はあちこちで転載され、また一部の雑誌や新聞にも全文が掲載されました。
それから私は全国5万の会員を抱える日本青年会議所から講演依頼を受けまして、9月20日に講演し、全国から集まった評議員、役員の前で話すことができましたのは幸いでした。日本経団連にも私は来週話し合いに呼ばれております。それから先週ですが大変注目すべき記事が出ました。それは10月27日付『名古屋タイムズ』に「名古屋は居住禁止」と大きく出たのです。それは何かと思いましたら、京都産業大学の朴講師が、福井県の大飯原発が事故を起こした場合の50年にわたっての被害総額が最悪の場合460兆円。国の予算の10年分です。そして40万人が死亡、というような、大変ショッキングな記事が出ました。『中日新聞』もこれを書いておりました。これは大変注目される記事だと思います。これが新聞に出たということも、私はタブー破りのひとつの兆候ではないかと考えているわけであります。
5.脱原発への試案
さて最後に、今日私が冒頭に申しました具体案について、説明致します。皆さんお若いので説明しますが、大岡越前守という名奉行が日本におりまして(笑)、「三方一両損」という解決方式でよく知られております。要するに大工さんが3両入った財布を落として左官屋さんがそれを拾って、どっちも受け取らないということで大岡越前の守が1両自分から出して、4両にして2両ずつ2人で等分させたという「三方一両損」ですね。私は日本の原発はこの「三方一両損」で具体的歩みを始めるべきであると思います。
まず企業としては、脱原発により経済的損失を被るわけです。国が補償しなければ会社はつぶれてしまうと思います。ですから皆さんがいくら強く迫っても、企業が自分から自殺行為には出られない面があると思います。国も国策を転換する。そして企業に対してある程度の補償をしなければならない。ヨーロッパでは産業界と国が交渉して脱原発を歩んでいるわけです。それから国民ですが、国民はやはりこのエネルギー多消費型の市民生活を改める。もう過度な贅沢はある程度あきらめる。それから若干の電気料金の値上げには応じる。こういった3方が痛みを分かち合って、脱原発を達成していくという、具体的なビジョンを打ち出すことが必要だと言うことで、私はこの「三方一両損」による脱原発というものを、私の具体的提案として皆様にお伝えする次第です。
そして中間措置として、私は3つの措置が必要だと考えております。
1つは原子力関係組織の抜本的改組であります。チェルノブイリ以降、原発の建設を世界はどこも認めていない。それなのに日本だけが21基も認めている。これを許した組織の責任は重大だと私は思います。それから2番目、電力会社は公益事業であります。その電力会社のあり方の見直しです。特に巨大な資金の管理の強化が必要だと私は確信しております。皆さんご存じのように、住民の直感で破局の種だと感じたものを、カネをばらまいてその破局の種を植え付ける、これは罪深いことだと私は確信しております。
それから3番目であります。これは先ほどの六ヶ所村の再処理工場とも関係するわけでありますが、核燃料サイクル政策は国会で審議されていないのです。今、八方塞がりの核燃料サイクル政策の見直しについて、国会で審議をすること。これを私は提案したいと考えているわけであります。
6.結論
最後に私の理念の一端をご披露したいと思います。私は日本は地球の非核化を世界に訴える義務と責任があると考えております。地球の非核化、そのポイントは軍事利用と民事利用を分けない、区別しない地球の非核化であります。いろいろ平和運動や反核運動がありますが、核軍縮だけでは魂が入っておりません。北朝鮮、イラン等々、原発は核開発の拡散の元になっている、ということがもう天下に示されております。原発の廃止を含む地球の非核化、これが必要なわけであります。これを世界に伝えるべきは、放射能災害を体験し理解している唯一の被爆国たる日本をおいて無いわけであります。私の「日本病」という言葉を先ほどご紹介頂きましたが、今「日本病」は世界病になっております。劣化ウランの使用などはとんでもないことです。また小型原爆の実用化の動きが報ぜられておりますけれども、なぜこれにたいして轟々たる非難が出ないのでしょうか。とんでもないことだと考えております。
私は理想を取り戻すことが、今最も世界で必要とされていることだと思います。ましてや日本においてをや、であります。そして私は今回のこの集会をきっかけとしまして、国策転換のきっかけとなる世論の喚起を図るために、全国の国民の皆様にできるだけ幅広く働きかけるよう、是非皆様のお力をお借りして努力していきたいと考えております。
本日、ここで取り上げた深刻な問題の存在を承知しておりながら、見て見ぬ振りをすることはもはや許されないと信じます。私はこの原発、原子力の問題というものは、いつの日か指導者の資格を問うリトマス試験紙になると考えております。
最後に、冒頭申しました「善き想い天が助ける」という確信の下に、未来を楽観しながら全方位の発信を続けてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。