AOC2007 趣旨

福岡という都市は日本の文化状況のなかでかなり特殊な位置を占めている。
福岡ほどに多くの文化人、アーティストを輩出している都市圏はそれほど多くない。気がついてみると、あの人も、この人も、福岡の街の出身であったり、この街を経由した経歴を持っている。だがその豊穣なる才能の培養地は、その才能を開花させる役割を東京に譲り渡し、現在でもなお一つの文化的中心となりえないでいる。

産炭地の影と華麗なる消費都市、九州と東京を結ぶ中継点、中国や韓国の深い影、上昇志向と伝統的共同体、才能の培養と離脱、そうした様々な要素が交差する地点に福岡は位置する。交差都市・福岡のそうした潜在力に光を当て、その深い文化的背景を探り、個性的な地方都市に内在する文化的可能性を探るため、福岡の才能の受け皿となってきた東京の視点から福岡を捉え直してみたい。そしてまた、その視点を踏まえた上で、なお福岡と東京のあるべき関係のあり方を探ってみたい。

アート・オープン・カフェは、2004年から福岡市内の画廊やインテリアショップにゲストを招き、少人数の参加者とともに濃密な討論をすることを目的に実施されており、今回で3回目を数える。その討論成果は『アート・デザイン・クロッシング』(vol.1-2)として出版され、福岡や東京のアート専門書店で平積みになるなど一定の関心を持って受け入れられた。今回の企画は東京と福岡でそれぞれ開催され、参加者もそれぞれ異なったものとなるが、出版の段階でその両者を媒介し、統一した視点と展望を提示することを予定している。

今回の企画は、東京ミッドタウンと福岡イムズを会場とし、共通のテーマに従ってそれぞれ4回、計8回を九州大学の公開講座というかたちで開催するものである。九州大学芸術工学研究院は2008年度から東京ミッドタウンのデザインハブ内に「芸術工学東京サイトG-PARN」を設置し、東京と福岡を媒介する機関拠点としての機能を果たそうとしている。そこのオープニング企画の一環にも本企画は位置づけられる。

ファシリテータ紹介

■古賀徹ー/KOGA,Toru
北海道大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位取得退学。文学博士。
現在、九州大学大学院芸術工学研究院准教授。哲学専攻。現代哲学の立場からデザインの認識論・存在論・倫理学を探求する。
主要著書として、『超越論的虚構』(状況出版)、『ドイツ・オーストリアのデザイン』(九州芸術工科大学)、翻訳:アドルノ著『認識論のメタクリティーク』(法政大学出版局)など。

■白川隆三/SHIRAKAWA,Ryuzo
1968年に市立北九州大学卒業後、CBS/SONY入社(現ソニー・ミュージック)。
邦楽制作部長、宣伝部長を経て、エピック・ソニー宣伝部長、ソニー・ピクチャーズ出向常務取締役、SPE・ビジュアルワークス設立(現アニプレックス)代表取締役社長 、ソニー・ミュージック取締役を歴任。2004年にソニー・ミュージック定年退職後、九州大学USI特任教授に就任。2006年にはリバーサイド・スタジオ設立、代表取締役。2006年から九州 大学USI客員教授、また福岡女学院非常勤講師も兼任(2007年)。

■佐々木喜美代/SASAKI,Kimiyo
福岡生まれの福岡育ち。
福岡のタウン情報誌「シティ情報ふくおか」の創刊(1976年)に携わり、編集長、発行人などを務めた。
2000年、編集者生活を中断し、九州大学大学院に入学。研究テーマは一貫して福岡の都心。修士論文テーマは大名の町になぜ人が集まるのか。博士論文は戦後の「福岡市の都市文化史 」を紐解いた。2006年博士(比較社会文化)学位を得て、現在は福岡市広報課に任期制で勤務している。

■山内泰/YAMAUCHI,Yutaka
福岡を中心に様々な文化的出来事をレビューし、web上にて公 開する活動「ドネルモ give the word project“donner le mot ”」(http://dlmblog.jpn.org/)のディレクター。
従来の「批評・議論」の堅苦しいイメージにとらわれない表現と言葉の 関係、言説のあり方を模索中。
現在、九州大学芸術工学府博士 課程在籍。美学・芸術学専攻。