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楽譜の本棚
ショパンの作品にまつわるエピソードや、珍しい楽譜を紹介しています。


ショパンの楽譜の中で現在、最も高い信頼を得ているのはエキエル編ナショナル・エディションだと思います。自筆譜のみならず仏・独・英それぞれの初版、再版から弟子が使っていた楽譜にいたるまで、大変多くの資料を比較・検討、校正していますので他の楽譜と比べて信憑性も高いといわれています。

譜例:Op.9-1さて、左写真を見て下さい。これはナショナル・エディションのノクターン集、OP.9-1変ロ短調から13小節目の画像です。※注1を見て下さい。この記号はデクレッシェンドです。では、※注2はどうでしょう。これはアクセントなんです。この二つに見た目の差はありません。ショパンの楽譜を読み込んできた専門家なら分かるかもしれませんが、初めてこの譜を読む人にとってはどうでしょう。混乱を招くのではないのでしょうか?学習者とよばれる人たちが皆、正しい指導を受けられれば良いのですが、下手をすると間違ったまま練習を積んでしまうことにもなりかねません。これくらい初見で区別をつけよというのなら、研究されつくした楽譜を使う意味って何なのでしょう。

書き分けられない理由
ショパンは即興演奏の名手だったといわれています。そして、ショパンの楽譜もまた即興的であるかのように、別の言い方をすれば即興性を失わないようするために、逆説的ではありますが、ショパン自身によって推敲に推敲を重ね入念に仕上げられました。それは図形として見るときに「>」や「<」が長いか短いかという表面上の問題にこだわるのではなく、その位置、高音部なのか、譜表間なのか、低音部なのか、dim.なのかcresc.なのか、単に演奏者へ注意を促す意味でわざわざ書き足すこともあれば演奏解釈上必須ともいえる理由から当然のように書かれた部分もあり、より作品の意図を正確に伝えようとするあまり皮肉にも上で述べたように混乱を招く結果となってしまったのです。

ショパンの書法
ただ、残念なことにショパン存命中、出版社及び写譜屋などはそのことにあまり注意を払わなかったようです。念のために手持ちの初版譜など他の楽曲も含めて確認してみましたがデクレッシェンドやアクセントは一般的な記譜法に則り印刷されていました。 最後にこの問題に関してエキエル教授の言葉を引用してみましょう。

「ショパンの作品においては、短いアクセントは強いアクセントを指し示し、長いアクセントは表現の強調という意味で使われている」

これはウィーン原典版でエキエル編のものには必ず書かれていますが、ナショナル・エディションには書かれていません。一見混乱を招くショパン独自の記譜法ですが上記のルールでおおまかに分ければ譜を読み解くヒントになるかと思います。いずれにせよ初めてショパンを学習する人でエキエル版を使用する方はこの事を念頭において他の版と比較するなどの工夫をされると良いかと思います。


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