さあ、長々と書いてきました「私とストーンズ」。いよいよ現実の時間に近づいてまいりました。
嵐のような「Voodoo Lounge Tour」が終わり、気の抜けたようになった私の生活は、ひょんなきっかけから動き始めました。何でも、「Windows95」とかいうものが出るらしい、というのを小耳にはさんだのが始まりです。
当時、私の勤める会社でもWindows 3.1入りのパソコンが使われ始めており、比較的よく使えた方の私でも、その面倒くささにうんざりしているのが現実で、みな口々に「これで便利になったのか?」「確かに計算は楽だけど、覚えるのにこんなに時間がかかるんじゃ、意味がないな」といっている有様でした。
今では笑い話ですが、当時は「Windows 95がパソコンを誰でも使えるようにする」という某MSさんの触れ込みが信じられており、「早く導入されないかなあ……」と私ですら思っていました。まあ、空念仏に過ぎなかったわけですけど。
そんな時、あるニュースがわれわれストーンズ・ファンを震撼させました。
だいたい見当がつきましたね?
そう、「Windows 95のCMソングが“Start Me UP”になる」というニュースです。
だいたいがそれまでのストーンズ・ファンなんて、パソコンなんか嫌っている連中ばかりで、そういう技術的なことから最も遠いところにいるのがストーンズ、という抜きがたい固定観念で凝り固まっていましたから、ちょっとした驚きと嫌悪感を持ってこのニュースは迎えられました。
私もご多分にもれずパソコンなんか大嫌いでしたから(今でもけっして好きではありません)、「こんなもんに歌を提供しやがって……」というのが正直な感想でした。
時を同じくして、会社に出入りしているカメラマンのSさんがPower Macintosh 8100/100AVを買い、しきりに自慢をするようになりました。Photoshopで作成したポジなんかを、来社のたびに見せびらかすようになったのです。
いやあ、驚いたの何の。我が社は(今でもそうですが)DTPに関してかなり遅れており、印刷会社からプレゼンを受けた時以外、接することがありませんでしたから、強烈な印象でした。
「マックが欲しい!」うれしがりの私としては、当然の反応です。
そうこうするうちに、もっと大きな衝撃がありました。
ストーンズがCD-ROMを出すというのです! おおおおお、何て世の中だ! ミックがいくら新し物好きだといっても、こんなハイパーでサイバーなテクノロジーの世界に踏み込むとは!
しかも、雑誌のインタビューで「ストーンズ・ファンはパソコンなんか持ってないんじゃないですか?」ときかれると、ミックはこう言ったのです。
「頼むから情けないことを言わないでくれよ! あんなもの(CD-ROM)、30分も真剣に取り組めばできるようになるんだから、ストーンズ・ファンの名誉にかけてマスターしてくれよ!」
がぁ〜〜〜〜〜ん(笑)!
よし!決めた! 俺も買おう! 名誉なんて言われたんじゃ、黙ってられないでしょ。
私のパソコン生活は、こんなイージーな形で始まることになりました。
でも、ここで問題がありました。そう、Macintoshにするか、Windowsにするか、です。
単純に考えれば、95のコマーシャルソングをストーンズがやっているんだから、Windowsで決まり、と行きそうなもんですが、当時すでに伝えられていたWindows95の画面がどうしても好きになれなかったのです。な〜んか、だまされているというか、おしつけがましいというか。しかも、すでにWindows3.1の使い勝手の悪さに触れていましたから、この延長線上にあるものを買うのは嫌だという考えが抜けませんでした。
しかも、Windowsパソコンのデザインのひどさも、「こんなもの、家に置いたら恥ずかしい! それに、家が職場みたいになってしまう」という感覚を呼び起こしました。コピーとかFAXとか事務机とかと見事に融合するようなデザインですからね(笑)。
まあ、結局Macintoshにしたんですけど(笑)、そのきっかけとなったのは、ストーンズ・ファンの特権、“噂”でした。
何でも、ストーンズのメンバーはマック・ユーザーだというのです。確かに、ビル・ワイマンがマックを使うという話を聞いたことがありました。しかも、Windows95に「Start Me Up」を使わせたのは、ハイブリッド版のCD-ROM「Voodoo Lounge Interactive CD-ROM」制作の資金稼ぎだというではありませんか!
私は踏ん切りをつけ、私の初代マシンであるMacintosh Performa 5220を買ったのです。
その後、マックに関する商品の企画を会社に提出したところ、いつのまにやらその話がWindows95の話にすりかえられ、その商品を開発することになりました。会社にも制作・編集用にPower Macintosh 8500/132を導入し、連日の深夜残業ロードに突入しました。
都合7ヶ月半くらい、深夜残業ばかりしていたでしょうか。休日出勤もちょこちょこやり、自分がこんなに働き者だったということに驚いたものです(笑)。しかも、この間外出はほんの数回。ほとんどマックの前に座りっぱなしでした。終電を過ぎてタクシーで帰宅すると会社から金が出ることも、この頃に初めて知りました(笑)。
このくらいは他の会社ではよくあることなんでしょうけどね。うちの会社では画期的な労働量なんです(笑)。私と一緒に働く2人の仲間以外の社員が帰った後、マックのとなりのFMVにストーンズのCDを入れて聴きながら働けたのが、救いになりました。
ある朝、上のガキが「お父さん、行ってらっしゃい。また明日ね」と言ったことは、一生忘れられません。
そんなこんなでまったく遊べなかったもので、金だけはそこそこ貯まり、それを元手に今の住居へ引っ越ました。もっとも、ちょっと驚くような売り上げと、その割に少ないと言ってもかなりの利益が上がったにもかかわらず、特別なものは一切出ませんでしたけどね。私一人でやった仕事じゃないとはいえ、余計にもらえたのは残業代だけでした。1万円だって、もらえりゃ全然違うんだけどね。
さあて、ようやくストーンズの話。1997年の9月、ストーンズにしてはずいぶん早いペースで、ニュー・アルバムが発売されました。タイトルは『Bridges To Babylon』。おお、何か期待が盛り上がるタイトルだなあ……。
ところが、2回も発売日が延期になり、だんだんイライラがつのってきます。どういうことだよ、まったく。人が死ぬほどウキウキしながら待ってるのに。
都合3回目の“発売日”、どうやら本当に発売されそうな雰囲気になってきました。ええと、9月だったと思います。
当然、発売日前日の先売りを入手すべく、会社に近いレコード屋に行きました。バビロニアの砂漠らしいところで変な金属製のライオンが後足立ちになっているジャケットです。何か、ストーンズのアルバム・ジャケットって、だんだんセンスがなくなっていくなあ……。
前日の新聞広告で「先着○○○名様にオリジナルCDケース進呈!」とか書いてあったので、結構楽しみにしていたのですが、何のことはない。本体CDケースを包むような、模様付きのプラスチック・スリーブでした。
そんなことはどうでもいいとばかりに、家に帰りついてすぐにステレオに突っ込みました。
……結論から言うと、その時は“中途半端なアルバム”という印象でした。何曲か傑作があるものの、一部の駄作が足を引っ張っているように思えたのです。まあ、あえて曲名は挙げませんが、「Already Over Me」とかね(笑)。1曲目から3曲目まではよかったんですけど、『Voodoo Lounge』の時の「Love Is Strong」ほどのインパクトはなかったです。
それでも、「Saint Of Me」は良かったねえ。歌詞は「聖パウロがどうのこうの」という、キリスト教にあまり縁のない私には今ひとつ、いや、今よっつくらい理解できなかったんですけど、今でも通勤中に聴いていると体が動き出すような感覚があります。いやほんと、何曲かは本当に凄い曲なんです。
時期的には前後しますが、ついにワールド・ツアーの記者会見が持たれました。場所はニューヨーク。『Bridges To Babylon』というタイトルに引っかけて、赤いオープンカーに乗ったメンバーが、ブルックリン・ブリッジを渡って来ます。
その時の印象は……「老けたなあ」でした(笑)。とくにキースの老け具合は尋常ではありません。一部でささやかれたように、“ゾンビ”のようです。ミックにしても、笑っている時は元々しわくちゃなのでわかりませんが、フツーの顔をしている時、アゴの下がたるんでたり、目尻のしわが以前の3倍になっていたり、衰えは隠せません。
その後、プロモーション用の写真を見た時も、ミックの化粧では隠しきれない老化を目の当たりにして、不安に駆られました。
アルバムに大したことがないという印象を持っていたのとあいまって、まともにコンサートができるんだろうか、とさえ思いました。
ことによっちゃあ、今回の来日が最後かもしれない、とさえ思ったものです。
今回のツアーがこれまでのと違ったのは、インターネットの存在でした。何せ先行して始まった全米ツアーの曲目が、2〜3日の遅れですぐに知ることができるんです。シマさんの「Bridges To Babylon Tourist Lounge」なんて、毎日のようにチェックしましたよ、もちろん。
悲しいことに見逃しましたけど、ライブの生中継までインターネットで行われ、AOLではミックやキースとのチャットまでできたってんだから。おまけに専用のwebでリクエストまで受けているんだから。私も何回か投票しましたけど、あれは多分“作り”ですね。ストーンズが人気曲を探るアンケートをやってるんですよ、きっと。だって、でなきゃあんなにしょっちゅう首位が入れ替わらないでしょう、普通。どっちでもいいんだけど(笑)。
もっとも、ストーンズ・ファンの仲間でインターネットをやっているのなんて、私とK君くらいでしたから、もっぱら私が曲目をプリントアウトして配る係でした。
それにしても、この長丁場で、とっかえひっかえ何十曲もやるんだから凄いわ。何でも、曲の選定をするために自分達のCDを聴き直して、自作自演の曲をコピーしているらしいです(笑)。そりゃあそうでしょう。キャリアすでに36年以上、レパートリーは600〜700曲は行くでしょうから。すべてキッチリ覚えていられるほど、人間の脳みそは都合よくできていませんからね。
まあ、とにかくチケットを押さえないと。何せ今回は東京ドーム4回と大阪ドーム2回のツアーですから、競争率も高くなるかも知れません。で、Voodoo Loungeツアーの教訓を活かし、ハナから(バクチの方の)H君に全面委託しました。
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中でも3日目のアリーナ前から3列目は楽しみすぎる! Voodoo Loungeツアーの時よりもやや内側より(BERO CITYに出ていた座席確認用の表でわかりました)なので、3列目とは言え、期待できそうです。
そうこうしているうちに、その年の12月18日、次男が誕生しました。そう、キース・リチャーズ大先生と同じ誕生日なんです! ちなみに長男はヒクソン・グレイシーと同じです。因果は巡るものですねえ。俺は古舘伊知郎と同じなんだけどね(笑)。スケールで負けてるような気がします。
K君が言っていたのですが、この歳になると、数年に一度ストーンズに行くたびに、何か恩人に近況報告をしに行くような趣があります。「子供が産まれましたよ」とか「引っ越しました」とか(笑)。長い付き合いですからねえ。最初は高校生だったのが、初来日の時は社会人1年目、2回目の時は結婚して子供がいて、3回目の時は肩書がついて2人目の子がいて……。そりゃあストーンズだって老けるってもんですよ。ある方から言われたのですが、これだけ長期間、ひとつのものを愛せるって、確かに相当なもんだと自分でも思います。
そして、今回のツアーでは初のチャレンジとして、長男を連れて行くことにしました。車や家でストーンズとツェッペリンを中心に洋楽をいやというほど聞かされていたせいで、うまいことにストーンズ・ファンになっていたのです! うちに人が遊びにくると、時々「Anybody Seen My Baby?」のサビの部分を歌い、驚かれるような状態です。
「今度、ストーンズが来るんだよ」
「えっ!? うちに?」
「そんなわけねえだろ! 東京ドームに来て、コンサートをやるんだよ」
「東京ドームって、あのウルトラマン見に行ったところ?」
「そうだよ」
「僕も行く!」
「よおし、行くか!」
てなやりとりの後、一緒に行くことになりました。もっとも、どの道連れて行こうと思ってチケットは取ってあったんですけど(笑)。しかし、俺もこの子も、同じ1万円なんだよな。
もっとも、1万円というチケットの金額は、高いとは思いません。確かにディナーショー以外では最高値でしょうし、チケットの値段を聞かれて教えると、ほとんどの人は「高い!」といいます。
でも、値段なんて相対的なものだからねえ。私はストーンズのコンサートほどのものが見られて、1万円で済むなんて、安いと思っています。プロレスをドームのリングサイドで見たら3万円が当たり前だし、大体1990年から8年間お値段すえ置き(笑)。あえて名前の特定まではしませんが、TK系のバンドのライブを10回1,000円と、ストーンズ1回10,000円、どっちかときかれたら、当然迷わずストーンズを選びます。
でもまあ、4回も行くんだから、1割引いてくれねえかなとは思います(笑)。そう言えば、(これもう書いたかな?)95年以降、K君とよく話していることですが、ドームで1万円よりも、武道館で3万円、サンプラザで10万円、クアトロで20万円でやってくれないだろうか、と思います。どれがいいかときかれれば、迷わずクアトロ20万円コースです(笑)。フォーバレー25万でもいいけど。
今回は、アントニオ猪木の引退試合が近いこともあって、けっこう出費が痛かったなあ。何せ、その後の飲みとタクシー代もかかるわけだし(笑)。
いよいよ初日当日です。悲しいことに忙しい時期にさしかかっていた私は、正直時間どおりに行けるだろうかという不安がありました。でも、しょうがねえよな。仕事は楽しくはあるものの、食い扶持なわけだし。食い扶持を使うことの方が人生で、しかもストーンズはその人生の中であまりにも重要ですから。仕事はいつでもできるが、ストーンズは4回しかやらないんだから。
定刻がきたら、あまり周囲に気付かれないように片づけを始め、終わった瞬間「お先に失礼します!」半分走ってるような状態で会社を出ました。
ああ、早く水道橋につかねえかな。
進行方向左側に白い屋根が見えた時、少しほっとしました。水道橋で降りると、どうも人出が少ないような感じを受けました。あれ? 早く来すぎたかな?
それもそのはず。とてつもなく驚いたことに、2階席に客を入れてないのです! やはり、日本にはストーンズ・ファンはそんなにいなかったということなのでしょう。想定できたこととは言え、ちょっとショックを受けました。まあ、それでも万単位で客は集まっているんだけどね。
ひと言で言やあ、これまで来なくてもいい人たちがたくさん来ていたということでしょう。やっと正常な状態になり、チケットも入手しやすくなるのかなと思いました。でも、ちょっとさびしさが残るよなあ。こんな客の入りを見て、ストーンズが気を悪くしないといいんだけど。
例によって、喫煙所に出て客層を見ると、やはり老若男女入り乱れています。子連れも多いですねえ。で、おばちゃん達もちゃあんといます。数人で固まって、井戸端会議風の雰囲気を醸し出したグループがいくつか散見されます。
「そぉ〜〜〜なのよぉ、で、ミックがロビーから出てきた時なんか凄かったのよォ」
「あら、私がアメリカで見た時なんか、キースがマルボロ吸いながらこっちに来てねェ……」
なんて会話をしているんだろうか……。一度話を聞いてみたいんですが、独特の雰囲気には溶け込めず、会話には参加不可能なようです。だからって、うかつに溶け込むのもかえってヤだしねえ。
さあて、ステージです。もはやストーンズの芸のひとつと化した巨大ステージ、何やら今回は真ん中にカーテンがかかっています(ベールというんでしょうか?)。両側には銅像みたいなのが立っており、柱の上にスピーカー群がくっついています。よくもまあ、これだけ毎回いろいろ作れるものです。(下図参照)
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今日のメンツは、バクチとナンパの両H君、熱い心の冷たい人間S君、そして私の4名です。今回のBGMはやはりストーンズの好きそうな曲で占められていましたが、なぜか1曲、Sex Pistolsが……。何でだ?
おっ! 客電が落ちました!
「ごうおわああああああん」みたいな妙な音響とともに、ステージ中央の幕が左右に分かれて開き、その向こうには巨大な円形のスクリーンが現れました。
その時、つい考えたのが、「あれ、高いだろうな……」でした。いやですねえ。すぐに銭金のことを考えるようになっちゃって。
「おうあ〜〜!」とかいう叫び声が入り、スクリーンには、さまざまな色彩が混沌とした模様が映し出されています。すると、中央に光の点が現われ、だんだんと近づいて来ます。光点がぐわぁ〜〜〜っと近づいて、画面一杯まで光が広がった瞬間!
「ドン!」
円形スクリーンの円周に沿って、花火が炸裂しました。相変わらず、やることが派手です。
ステージは緑がかった青い光で照らされています。ふと見ると、キースがステージ中央にいるではありませんか! もちろん、場内大歓声です。
キース大先生、もったいぶってやや間を置き、おもむろにギターを弾きはじめます。
♪シッシー シド#レーレレド#ド#シ
誰もが知っている大有名曲「(I Can't Get No) Satisfaction」で、98年のジャパン・ツアーは幕を開けました。物凄い大歓声! 私も何かよくわからない叫び声を上げたと思います。
もちろん、1曲目が何かなんて、事前に知ってはいたんですけどね。始まっちゃえば、知ってても関係ないからね(笑)。
メンバーの歳や『Bridges To Babylon』の出来を考えると、今回のツアーには過大な期待を持たないようにしていたんですが、そんなのは杞憂に過ぎませんでした。いやあ、凄いの何の!
「Let's Spend The Night Together」や「Under My Thumb」なんか、てっきり80年代頭のワールドツアーの時みたいなギター一発バージョンかと思いきや、チャック・リヴェールのシンセをフィーチャーして、オリジナルに近い演奏だ!
初日の演奏そのものは、ちょっとっつうか、かなり荒っぽかったんですが、そういうことが減点対象にならないバンドなんですよね。TK(高阪剛にあらず)系のバンドがここまでのズッコケをやったら(まあ、ミスは少ないがつまらない奴らなんだけどね)、たぶんあのインチキな音楽の虚構の世界観が丸くずれでしょう。
あと、今回は全体にテンポが押さえ気味で、じっくりと演奏していた印象があります。これまでのストーンズも含め、普通はライブの時はテンポが早めになりがちですから、たぶん全体のクォリティ維持のためにしっかりテンポを決めたのかなという印象でした。もっとも、その割には間違いが多かったけどね(笑)。
ある方のサイト(誰だか忘れてしまった……)に書いてあったのですが、ドラムスの脇にある大きなアクリル板に、その日の曲目とテンポが書いてあったそうです。ところが、普通は「132」とか「115」とか1分間の四分音符の数が書いてあるのに、所々「KR」という記述があったそうです。
もう想像つきましたね? そう、「Keith Richards」の略です。何とイントロでキースがどんなテンポで弾くかによって、バンド全体がそれに合わせるという、昔気質のバンドならではのやり方なんですね(笑)。確かに「Wanna Hold You」とか、毎日テンポがぜんっぜん違ってたもんな。
さて、今回のツアーの白眉は、やはり“インターネットからのリクエスト”と“センターステージでの演奏”に尽きます。
特に唐突なインターネットからのリクエストは、なかなか笑えました。
「ウエッブサイトを〜、見てみヨ〜」ですからね、いきなり(笑)。
でもあれ、絶対仕込みだよな。出かける寸前に家からアクセスした順位と全然違ってたし、大体、毎日毎日あんなに順位が入れ替わるってのも変だもん。まあ、参考にはしてるんだろうけどね。
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2つ目の白眉・センターステージがどんなものかというとですね、野球の時はセカンドベースになるあたりでしょうか。プロレスだとリングを設置するあたりにちっこいステージが設けてあるのです。で、キースのコーナーが終わった後、そこに移動するのですが、これがまたストーンズならではの過剰な演出!
メインステージ中央の床が開き、ドライアイスの白煙が炊かれます。すると、その中から車のヘッドライトのように2つのライトをつけた物体が出現します。何か機械的な効果音が鳴り出すと、それはゆっくりと床の開口部から出てきます。
そう、はしご車のはしごのように、そこから橋が伸びてくるのです。『Bridges To Babylon』というタイトルに引っかけたのでしょう。橋がセンターステージに到達すると、ブラスのBGMに乗って、ストーンズとダリル・ジョーンズ、チャック・リヴェールの6人が、愛想を振りまきながらセンターステージへの橋を渡っていくわけです。
いやあ、ここまで来ると、「よくやるよ」とさえ思えます。これだけいろいろな仕掛けを考えちゃうと、後戻りできないから大変だろうなあ……。
でね、そのセンターステージでの演奏がよかったんだ! これがまた!
初日は「Little Quenee」「The Last Time」「Like A Rolling Stone」をやったんですが、まあ、そのカッコよさったら筆舌に尽くし難いものでした。「Little Quenee」なんて、ストーンズはライブでしかやっていない曲なのですが、この手のシンプルなロックンロールをやらせたら、ストーンズが世界一なのはもはや疑う余地がない! だいたいが、作者のチャック・ベリーよりも、ストーンズの方がいいんだから。
「Like A Rolling Stone」だってそう。本当にカッコよかったなあ。ただし、ちょっとうなってしまったのは、出だしのカウント(ワン、ツー、ワンツースリーフォーというアレ)をチャック・リヴェールが出したことです。何かこう、バンド以外の人間にサウンドを仕切られているような感じを受けました。まあ、どの曲でも終わりのサインはミックかキースが出していたので、そのあたりなんとも言えない部分があるのですが。
どうでもいいことかもしれないけど、妙に気になったものです。
他に初日で印象に残ったことを。
「Out Of Control」で、ミックが妙に派手なきらきら光るジャケットを着てきたと思ったら、サビのところで、それこそコントロールを失ったように踊り出し、リズムに合わせてストロボ照明がピカピカと光りました。すると、それがミックのジャケットに反射して、物凄い光芒の世界が……。あれで癲癇の発作とか起きた奴、いるんじゃないだろうか(笑)。
それから、チャーリー・ワッツはじじいになればなるほどカッコよくなっていくなあ。キースは凄味こそ増したものの、カッコよくなったとは言い難いものがある(笑)。あと、ダリル・ジョーンズはちょっとオリジナルのベースラインを変え過ぎだよな。まったく同じになんか弾かなくていいし、逆にそのまんまじゃ困るけど、何も上昇するラインを下降するように変えなくたっていいじゃん。
あと、誰だか知らねえけど、ミキサーの奴! 注意が足らねえよ、お前。何日目かは忘れたけど、「Brown Sugar」でサックス・ソロのレベル、上げ忘れただろ! こいつ、(また何日目か忘れたけど)最後まで上げなかった日もあったんだぜ。ほかにもそんなミスがあったな。クビにしろ、あんな奴!
そしてアンコール。
事前の曲目分析によると、会場によって、アンコールが「Brown Sugar」1曲の場合と、その前に「You Can't Always Get What You Want」をやってから「Brown Sugar」に行く場合があることに気付きました。
これはたぶんその場のノリなんでしょうが、何かアンコールが1曲少ないと、損した気分になるじゃないですか。
でも、それは杞憂でした。毎回きっちりとと「You Can't Always Get What You Want」と「Brown Sugar」、2曲やってくれましたよ。
この2曲にはお約束があって、「You Can't〜」では、最初のサビの部分を観客が歌うというベタなお約束。「Brown Sugar」はエンディングの入りばなで「Yeah! Yeah! Yeah! Hooooo!」と歌ってジャンプするという奴なんですが、人数が少なくてコアなファンが多い分、けっこうみんなやっているよう見えました。初来日の時はアリーナなんかただ動いてるだけだったのに、ずいぶんコンサートらしくなったものです。
初日の曲目はこちら
さて、今まではツアー1回につき1話を割いてきた「私とストーンズ」、このBridges To Babylonツアーからはもうちょっと小刻みにします。





