ご存知の方も多いかと思いますが、『さらば青春の光』という映画があります。原題は『Quadrophenia』(AMAZONへのリンク)。ザ・フーの同名アルバムを映画化した作品です(アルバムの邦題は『四重人格』AMAZON
)。
Quadropheniaは、アルバム全体がストーリーを構成している作品で、大雑把に言えば、ある少年の数日間を描いた物語です。……ちょっと大雑把すぎか。
映画ではストーリーがやや異なり、モッズ(wikipedia参照)の少年ジミーが恋をし、暴動に参加し、友の裏切りや世の中の現実と直面し、絶望の果てに……という話になっています。
私と同年代でロックに熱中した人なら、必ずと言っていいほど心に深く残る作品です。いやあ、何度見たかわからないくらい見ましたね。
ストーンズのロンドン初日から一夜明け、Kちゃん、H君、私の3人は、映画後半の舞台となったブライトンに向かうことにしました。
渡英前、Kちゃんが英会話の先生から嘘の情報を仕込まれ、「今回は無理だよ。ブライトンは泊まりがけでいくところだからさあ……」と言っていたのですが、そんな事実は全くなく、ロンドンから1時間もかからずに行けます(笑)。
ビクトリア駅で待ち合わせた我々は、隅っこのホームから出発するブライトン行き急行に乗り込みます。
気分はすっかり「5.15」です(ちなみに映画ではジミーがビクトリア5時15分発の列車でブライトンを再訪するんです。その時、「5.15」という曲がかかるんですよ)。

これは映画の1シーン。1番線からの発車でした。

今はこんな駅で、

16番線(確か)の発着でした。

映画では、こんな感じ。あ、ふと見ればファースト・クラスですね。
私たちが乗ったのは、こういう風情ある車両ではなく、いかにも今のイギリスの列車だったのが残念。
ちなみに映画では、ジミーが途中で窓から荷物を外に捨てるシーンがあるのですが、今はそれは再現不可能です。
いや、単に窓が開かないので(笑)。
“映画を見て、窓から荷物を捨てる奴が続出したので、窓が開かなくなった”というのが我々の推測ですが、恐らくそんなことはまったくないのでしょう。
昨年のチェルトナム行きと違い、旅程は非常に短く、止まったのも1駅くらい。あっという間にブライトンに。

おお、来たよ、ついに! 映画で見たあんな場所やこんな場所が、この目で見られるよ。ずいぶんかかったもんだよなあ、ここに来るまで……
が、ホームに降りた瞬間、感慨はほとんど吹き飛びました。
寒い。
すっげえ寒い。
来なきゃよかった(笑)。
そのまま電車に居残ってロンドンまで帰りたい衝動と闘い、改札を抜けてとにかく駅前へ。
海岸までバスで行こうかタクシーで行こうかとウダウダ言ってるうちに、H君が「歩いていきましょうよ」と一言。
寒さで判断力も何もない私はあっけなく同意し、3人で海岸目指して歩き出しました。
駅前は人影も少なめで、やっぱり海水浴シーズンが終わっちゃうと、海の近くの町はさびれちゃうのかな、と思いきや、海が近づくにつれて段々と人も増え、かなりのにぎわいに。
おおお、何だか映画で見た町並みのような気がしてきた。

海岸に出ると、ラスト近くでジミーがエース(まあ、モッズのリーダー格。スティングが演じてました)のベルボーイ姿を見てしまうホテルを探します。
KちゃんもH君も大体の目星がついているようなのですが、どうもハッキリしません。
が! ホテルの建物向かって右の歩道を見ると、エースのスクーターを停めてあった場所と同じフェンスが!

映画でのフェンスはこれ。

このフェンスだ!
おお、改装されちゃったみたいだけど、このホテルだよ!
Kちゃんは改装がお気に召さなかったようで、「戻せ!」と言ってました。そんな、ご無体なことを(笑)。
映画では、スクーターを発見したジミーが感慨深げにまたがるのですが、H君がそのシーンを再現します。

映画で、スクーターを発見したところ。

H君による再現。なお、写真はプライバシーのために一部モザイクをかけています。
……ちょっと彼の息子には見せられないけど、まあ、いいかな、それも(笑)。
改装というか増築のような感じで、映画に出てきたエントランスの前にもういっこエントランスが。

H君、ちっちゃい声で「ベルボーイ!」。はい、映画でのジミーのセリフです。
海岸に出ると、映画と同じビーチベッドが並び、かなりの人がくつろいでいます。おお、映画のあの感じだよ!

これは映画から。
てっきり砂浜だと思っていたんですが、同じ色の砂利が敷き詰められています。いやあ、百聞は一見にしかず。どこでも行ってみるもんだねえ。
しかしイギリス人ってのは、このクソ寒い中でよくあんな薄着でくつろげるよな。あいつらは俺たちとは耐寒性能が違うんだろうねえ。
ふと海に目をやると、あろうことか泳いでる奴までいます。
ば、バッカじゃねえの???
わからん。理解できない。
H君は映画のワンシーンを再現。

映画のシーン。

H君再現。モザイク有りです。
すまん、H君。よく見たら、歩く方向が逆だった(笑)。
きっと毎日のように撮影されている風景なのでしょう。
俺なら、ここでモッズ屋さん開いちゃうな。米軍のコートやスーツ、リーバイスやキューバンヒールのブーツを売る店。スクーターも売っちゃう。店内は「さらば青春の光」のDVDを流しっぱなし。
多少高くても、絶対勢いで買う奴がいると思うんだけど。何なら更衣室も提供して、映画の世界に浸らせてやるわけだ。
私はたぶん利用します(笑)。
ちなみに、H君が背にしている「ブライトン・ピアー」は新しくできたもので、映画で映っている方は古いピアーです。
その向こう側に映っているのが、H君が背景にしている新ピアーです。

これが映画に出てくる古いピアーですね。
実はこれ、火災にあったようで、今では……

こうなっています。
再建も取り壊しもされないというのも、どうしたもんでしょうね……。
海岸をうろうろして、海の家風のアイス屋とか、なぜか海岸にあるフィットネスジムなんかをながめました。
暴動なんか起きる気配もなく、平和そのものです。
結局、あまりに寒いので、あっけなく引き上げることに(笑)。
が、昼を食べてなかったので、とりあえずギネスでも飲もうかとパブへ。
ガラガラで誰もいないけど、まあいいかな。
食い物があまりに遅いので、いきなりギネスをおかわり。待ちくたびれて煙草が吸いたくなるものの、店内禁煙なのでその都度外で寒風に震えながら吸いました。
くそ、何て悪法だ。
念入りにトイレに行った後、駅に向かいます。
お、ちょうどいい電車がある……のですが、寒さとビールの影響で、膀胱が「助けて!」と訴えています。
やむなく駅の有料トイレへ。当然のように、列車は行っちゃいました。
ホームでブルブル震えながら待っているうちに、またも尿意が! くそー! この短いブライトン滞在で、5回目だよ!
駅員のオバチャンにお願いして改札の横から出してもらい、また有料トイレへ。20ペンスだったっけ。
続く列車に乗り、車内の暖かさに感謝しました。
安堵のあまり、間もなく爆睡。気づいたらロンドン近郊でした。
地下鉄に乗り換える前に、駅の外で喫煙。たくさんお仲間がいました。
が、そこは微妙に屋根の下だったらしく、融通の利かない駅員が無情にも追い払いに来ました。おいおい! 今雨ふってんじゃねえかよ! それでも出ろってのか?
あわれ喫煙者たちは雨の中に追いやられました。
馬鹿野郎。法律だからって、この1メートルやそこらの差が許容できねえのかよ。ケチだな。
いったん解散し、各自ホテルへ。
あまりの寒さと尿意で、単刀直入に申し上げて、ブライトンの感激は中くらいでした。ええ。
夜、翌日以降のチケットの受け渡しおよび余りチケット売却の相談のため、スティッキー・フィンガーズにFちゃん、Mちゃん、Kちゃんと集結。
H君を待つ間にまったりと飲み食いしていたら……あれ? 見覚えのある外人が……
おお! オランダーズだ!
1年ぶりだよ!

お互いに気づいたのが彼らが店を出るタイミングだったのですが、ふと目があったらお互いに「おおおおお!」でした。
その時はあまり話もできなかったのですが、ストーンズ馬鹿どうし、嬉しい再会でした。
まさか、またオランダくんだりからロンドンまで来てるとは。物好きだねえ。馬鹿だよなあ……って、あれ?
その後、H君が合流。
何杯か立て続けに飲んで機嫌が良くなったH君、おかわりを頼む時、何を思ったか
「すいませ〜〜〜ん!」と大声の日本語で店員さんを呼びました(笑)。
新宿の居酒屋じゃないんだからさ(笑)。
それでも通じて、店員さんが来ちゃうんだからおもしろい。調子づいたH君、注文後に親指を立てて「イェ〜〜〜!」
や、やめてくれ。笑い死ぬ。

二度目のロンドンにしてスティッキー・フィンガーズ初体験のH君、興奮して店内を見て回ります。
そうだろうそうだろう。ファンならそうなっちゃうよな。
ハイ・ストリート・ケンジントンの駅で、ホテルに向かうH君。
彼は一度ぶち切れると後先考えずに喧嘩をするので、くれぐれも外人と喧嘩しないように注意し、我々は徒歩でホテルへ。
折悪しくけっこうな暴風雨で、Mちゃんの傘があえなく崩壊しつつ、本日はこれまで!