トラブル、おみやげ、チェルシー、帰国
チケットを取った段階ではすごく先のことだったのに、容赦なくその日はやってきて、しかも終わっちゃうんですねえ。
同室のS氏は今日から友人宅に行った挙げ句にそこの家族旅行に参加(!)するので、今日でホテルはチェックアウトです。
じゃあ俺は今日はおみやげ購入の日だな。
スーツケースを引きずって、サウス・ケンジントンの駅に向かいました。
今夜だけの宿泊先は、ロイヤル・ランカスター・ホテル。まあ、リッツなんかと比べると、そんな憧れってほどのレベルじゃないんですけどね。
ただ、1泊料金はディスカウント・サイトでも100ポンドオーバーが当たり前のところです。今回は飛行機代もかかっていないし、1泊くらいはぜいたくしようかなと。
けっこう意気揚々とサークル線に乗り、ノッティング・ヒル・ゲイトからセントラル線に乗り換えます。
ロケーションはランカスター・ゲイト駅を上がってすぐという、非常にアクセスのいいホテルなんです。
……ん?
ふと電車内の路線図を見ると、ランカスター・ゲイトのところに注釈があるではありませんか。
なになに?
……ハア?
「この駅は2006年6月から11月まで閉鎖ねー」
ゲゲゲゲゲゲ!
あわてて1つ前のクィーンズウェイで降りました。
うわ、マジかよ……。
ここで落ち着いていたら、次善の最寄り駅であるパディントンまで行くべきところですが、何せ驚いたまんまの状態なので、クィーンズウェイから歩くという選択をしてしまいました。
ズルズルとスーツケースを引きずって歩きますが、いつまで経っても着かない(笑)。1キロはないはずなのですが、とにかくこういう時は長く感じます。
けっこう疲れた……。
でも、ホテルを見ると、にじみ出る高級感に思わずニンマリ。
ドア近くにいたポーターにスーツケースを預けてまた出かけます。
オックスフォード・サーカス界隈で、リバティとか土産物屋とかを回りました。
何せ今回は出国時の審査が厳しいので、とにかくスーツケースに収まるよう、1つあたりのサイズを抑えるように気をつけないと。
夜はMちゃんFちゃんと合流して食事の予定なので、まずはチェックインを済ませようと、ホテルに向かいます。
ポーターから荷物を引き取り、フロントへ。
お姉さん(+5歳くらい)にバウチャーを渡しながら、
「今日予約してまーす。チェックインお願いしまーす」
「かしこまりました。えーと……ん? あれ?」
「どうしたんですか?」
「いや、あのー、予約日が24日になってますよね? これ、明日ですけど」
ガーーーーーン!
馬鹿だ、俺、馬鹿だ。予約の日付、間違えちゃった。
40年近く生きてきて、ここまで間抜けな間違いというのは初めて……でもないか。
でも、“今日の宿の確保”を、よりによって海外でしくじったショックというのはご理解いただけるかと思います。
「うわあ……まちがえた……」
「どうされます?」
「いや、ホントは今日泊まりたいんです」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね」
すると、金髪で気の強そうな責任者らしき美女が出てきました。
「お客様、ブッキングがHotelClub経由なので、こちらで予約の変更をしないといけないのですが」
「ああ、そうですか。こっちで変えられませんか?」
「では、HotelClubに電話してみていただけますか?」
「え? 無理。俺、英語ダメじゃん。まして電話なんかできませんって」
ここまでの会話を聞けばわかるだろう。1回聞き返し、2回目は誤解して、3回目でやっと答えてるんだから。
「……えーと、うーん、あー……。じゃあ、私が電話します」
助かった(泣)。
美女責任者、何だか喧嘩腰で話してます。よかった。俺が電話しないで(泣)。でもさすが一流ホテル。完全に俺の立場で電話するから喧嘩腰になるわけでしょ。これぞホスピタリティですよ。
何とか話をまとめてくれたので、本当に命拾いした気分でした。偉い。偉いホテルウーマンだ。しかも美女。もし俺が未婚だったら恋に落ちてたかも(笑)。
部屋に案内されました。廊下の雰囲気からして違います。一流っぽい!

ドアを開けると、うっすらと芳香さえ漂ってくるではありませんか。料金が同じなのでダブルの部屋にしたんですが、これがまた広い。アメニティの類も充実しています。
ああ、ホッとした。じゃあ一服す……
灰皿がない。まさか。
……禁煙室でした(泣)。予約通りだったら喫煙室のはずなのに。
しかし、まさかあれだけ面倒をかけてしまった上、「喫煙室に変えろ」なんて厚かましいことは、奥ゆかしさが売りの日本人としてはとても言えません。
しょうがないからロビーに降りてタバコを吸いましたよ。どうもお仲間らしい人が何人か、ロビーでねばっています。まあ、しょうがないよね。
それにしてもブッキング・ミスの精神的疲労は激しく、30分くらいは部屋を出られませんでした。
いつまでもホテルにいても仕方ないので、また市内へ。ネットカフェのアカウントの残り時間を調べ物に使ったり、結局行く暇のなかった本屋さんに行ったりして過ごしました。
けっこうあちこちでベロのついた服を着たオジサンによく会います。
私もトゥイッケナムで買ったベロつきのラガーシャツを着ていたので、街中でそういう人に会うたびに、お互いにニヤッと笑い、すれ違いざまにハイタッチなんかしてました。
ベロ着てるだけで仲間意識がもてるって、何かいいよなあ。日本じゃできないもん。ヘタすりゃキムタクの真似してるだけかも知れないしね。
夜はFちゃんMちゃんと合流し、おいしい中華。
けっこう長時間ねばってそこそこ飲みました。そこはかとなく横浜の中華街にいるような錯覚が(笑)。
お勘定の時、名物フォーチュン・クッキーをもらったのですが……4つでした。3人で行ったのに、4つ。ブライアン、まだいたのか?(笑)
11時半ごろだったか、ホテルに戻ると、何だか知らないけど子供たちがロビーで遊んでいます。インド系らしき子が中心です。
エレベーターが行っちゃいそうなタイミングで、その内の1人の女の子が停めてくれて、一緒のエレベーターに乗りました。
何となく、話しかけました。
俺「ここに泊まってるの?」
子供「そうよ」
俺「この時間は子供には遅いんじゃないの〜?」
子供「あなたは知らないでしょうけど、私はプリンセスなの。あっち(バッキンガム方面か)のパレスに住んでるの。さっきいた人たちはね、私のボディガード」
俺「あ、こりゃまた失礼しました(笑)」
そうか、俺の英語は、ちっちゃい子とようやく話せる程度なのか。
ちなみに(知ってる人は先刻承知でしょうが)これまで書いてきた外人との会話は、ほとんどすべて、やっと会話してるレベルです。あたかもサラッと会話したように書いてますけど、実際の局面では何度も聞き返してます。
やっぱ英語習おうかな……。海外に出るたびに思ってるけど。
翌朝、のんびりと朝食を食った後、せっかくなのでホテルを満喫しました。もっとも、喫煙のため、ロビーと部屋との往復でしたけど。
チェックアウトの時、昨日最初に応対してくれたお姉さん(+5歳)がフロントにいたので、丁重にお礼を言い、またポーターに荷物を預けて、チェルシーに向かいます。
目的は、Edith Grove。これ、やっぱり読みは「イーディス・グローブ」ですよ。現地の人に確認したら、そう言ってました。というか、この「Edith」って、イーデス・ハンソンさんの“イーデス”ですからね。
ようやくミック、キース、ブライアンの住んでいたアパートの正確な場所がわかったので。そして、ミックとキースがそれぞれチェイン・ウォークに持っていた家にも行くことにしました。
まずは現金が心許なかったので、ハイ・ストリート・ケンジントンのマークス&スペンサーに両替に。そのままバスに乗り、チェルシー方面を目指します。2階から親子連れが降りてくるのを見て安全だと判断、2階に上りました。
おお、やっぱり2階はいいねえ。
が、アールズコートを過ぎたあたりで無茶苦茶な渋滞に巻き込まれました。そこからチェルシーまでの2キロそこそこの道を、30分もかかって半分進んだかどうか、という混み具合です。
このまま行ってももう30分かかるかな。ここからなら歩いても20分。10分早いや。降りよう。
1階に降り、運ちゃんにドアを開けてもらいました。バス停でも何でもない場所で降りたのに、運ちゃんは礼儀正しく「ありがとうございます」。君もイライラしてるだろうに、職務に忠実だ。偉いぞ。
しかし、いくらなんでもひどい渋滞です。こちとら歩いてるっつうのに、4台もバスを追い抜きました。
キングス・ロードに着いてみると、交差点が丸ごと警察に封鎖されています。そりゃ渋滞もするわ。
ふと見ると、交差点のど真ん中に木っ端みじんになったスクーターが……
人身事故か……ありゃ助からなかっただろうな。
お巡りさんに
「ここ渡っていい?」と聞くと、
「ダメだよ! この(封鎖用)テープが見えねえのか!」だと。
クソ生意気な警官だな。
「俺、向こう側に行きたいんだけど」
「じゃあ、こう(テープの外周を身振りで示して)回って!」
何だよ、最初からそう言ってくれりゃいいじゃねえか!
まっすぐ渡るよりも2mぽっち遠回りして、キングス・ロードを渡りました。
イーディス・グローブは丸ごと車両進入禁止のようで、まったく車が通りません。えーと、ここが○番地だから……、あった。
ここです。ここにミック、キース、ブライアンが住んでいたんです。
ここの2階で、3人はギターを練習したりしてたんですね……。
もっとも、壁に唾吐いてそれに名前をつけたり、隣人のパーティの空き瓶を盗んだり、トイレにマイクを仕掛けて客の用足しを録音したり、来客に暖房費を無心したり、脚が3本しかない椅子を来客に勧めてスッ転ぶのを楽しんだりもしたようですが。
ここからテムズ河畔に出て、東に向かいます。
高級住宅街チェイン・ウォークは、複雑に河畔に出たり引っ込んだりを繰り返す道なので、意外と捜索には手間取りましたが、10分くらい歩いたところで、ミックのかつての家を見つけました。
この玄関、見覚えがある人は偉い。
そう、ストーンズ・イン・ハイドパークの第2部(だったっけ)で、マリアンヌ・フェイスフルと息子のニコラスが出てくる、あの玄関です。
ああ、ここでキースと裁判対策とかやってたんだな……と思っちゃうと、あんまりしみじみしないですね(笑)。
更に東へ5分。
ここがかつてのキースの家です。ここでコカインとかヘロインとかやっ(以下略)
しかし、両方とも意外と小さいです。
もっとデッカイ家かと思ったんですけどね。奥行きがあるのかも知れませんけど、ようやく収めた成功の戦利品としては、案外ちっちゃいなと。
いずれも既に別の人が住んでいますので、あんまりウロウロしても通報されかねません。
キースんちの次の角からキングス・ロードに向かい、バスに乗ってスローン・スクェア駅へ。そこからサークル線でパディントンに着いた頃には、けっこうちょうどいい時間でした。
ホテルに戻って荷物を引き取り、そのままパディントン駅に行ってヒースロー・エクスプレスに乗りました。
ああ、ロンドンともお別れだ。
余裕ある日程の中で本当にいろんな所に行け、いろんな体験ができたので、前回の渡英時と違って寂寥感はありません。満足感と安堵感に満たされていました。
空港では、やっぱりセキュリティが厳しく、ファスト・トラックだったにもかかわらず、セキュリティチェックの列に20分くらい並びました。
係のオッサンがイギリスの売れないコメディアンのような人で、寒いギャグや意味不明のアクションでなごませてくれますが、やっぱり20分は長いよ。
靴は脱がれるわ、ポケットの中身は根こそぎ出されるわ、しまいにゃコルセット外しで注目されるわ……勘弁してくれよ。どう見ても堅気の日本人だろう。
ライターは取られちゃうし……ラウンジにマッチがあるとは言え、喫煙所ではどうすりゃいいんだよ。
で、試しに喫煙所に行ってみると……吸ってやんの。しかも、何人かライター持ってやんの。
あんだけ厳しくしておいて、これかよ。こんなんだったら、爆発物だって持ち込めるんじゃねえか?
ウロウロしていると、黒人のニイチャンがマッチを貸してくれました。出て行くニイチャンに、つい「Have a nice trip!」と言ってしまいました。免税店の店員かっつうの(笑)。
時間をかけてお土産を買ってから、次の便に乗るMちゃんFちゃんと落ち合い、ギネスでフィッシュ&チップスをほおばります。お、うまい。
いやあ、楽しかったねえ。また来たいけど、いつ来られることやら。
ラウンジで飲酒喫煙をどうしてもしたいので、2人と別れてラウンジへ。マッチを貸してもらい、親の仇のように吸いまくりました。ギネスをもう1本グビグビ。
3年前は一気に2本飲んで寝ちゃったので、今回は1本で勘弁してやりました。
そうこうするうちに搭乗時間。飛行機を見ると……前回とは違い、ポケモンジェットじゃありませんでした。
いよいよイングランドともお別れです。さすがにちょっと、名残惜しさがあります。また来るよ。いつになるかはわからないけど。次はもうちょっと英語を覚えてから。
プログラムを見たら、やっぱり往路と一緒。ちょっとは工夫しろよな。
往路は眠れなくてめぼしいのはみんなみちゃったので、やむなく「笑点」を見たんですが(笑)、こだまひびきが出ていました。今回の旅ではしょっちゅう「そんな奴おらへんやろ〜〜」が飛び出していたので、暗示的というかチッチキチーと言うか。
その後は、到着前の軽食までぐっすり眠ることができ、無事に帰国できました。
本当に今回の旅は、充実した楽しい旅でした。
最後に関係者の皆様への感謝を。
S氏、タバコ嫌いなのに、嫌な顔ひとつしかせずに(笑)つきあってくれてありがとう。体調最悪の状態でタクシーの手配、感謝してます。
Kちゃん、要所要所ですばやい通訳ありがとう。あれがなかったら、会話についていけなかった可能性98%です(笑)。
Fちゃん、めんどうなことをいつも率先してやってくれてありがとう。頼りになるお姉さんでした。年下だけど(笑)。会計係をなし崩し的にやらせちゃってごめんね。
Mちゃん、俺の思いつきにいつも真っ先に賛同してくれてありがとう。タクシー難民の日、気力が萎えかけていたのを「やっぱ明日は何が何でもチェルトナムに行こう」と思えたのはあなたのおかげです。
Hちゃん、オランダーズやIさんとの交流を開いてくれてありがとう。チェルトナムで初めて見たあなたの涙は忘れません。
(読んでないと思うけど)部下のみんな、クソ忙しいのに、スチャラカ上司をロンドンに行かせてくれてありがとう。これからちゃんと働くから勘弁してくれ。
(これまた、よもや読んでないと思うけど)子供たち、バカ親父が勝手に出かけちゃって悪かった。いつか、一緒にロンドン行こうな。
(やっぱり読んでないと思うけど)妻へ。迷惑をかけて申し訳ない。仕事も家も放り出してストーンズを見に行っちゃうような旦那ですまん。「ロンドン? いいよ、行ってきなよ」と平然と言える度量のある妻は、なかなかいないと思う。
というわけで、UK2006編も終了です。
再開はいつになるかわかりませんが、その時はこりずにまたお付き合いください。
ではその日まで、ごきげんよう、さようなら!