じゃあブライアン、また来るから。いつになるかはわからないけど。
ゆっくりその場を離れ、事務所にあいさつして、墓地を出ました。
墓地の近くにバス停に行ってみると、やっぱり1本でチェルトナム・スパの駅に行けるのはないようです。さてどうするか……って、考えたってわかんないよな。
Kちゃんの
「このタウン・センターってとこまで行けば何とかなるんじゃない? センターってくらいだから。まだ帰りの列車まで時間もあるしさ」
という意見に何となく従い、とにかく行ってみることに。
よく考えたら“センターだから”ってのは根拠にはなってないんですが(笑)。急ぐ旅でもないし、プラッと行っちゃいましょう。方向は駅の方だしね。
バスの後ろの方の座席を“修学旅行の不良”状態で占拠します。Kちゃんが「飴がちょうど5個あるからみんなで食べよう」と、1つずつ配ってくれました。
するとKちゃん、
「あれ? 誰か取ってない人〜」
しーん。
5人分でちょうどのはずなのに、1個余っているらしいんです。が、みんな1つずつ口に入れてます。
Mちゃん「ブライアンの分だよ」
俺「あの……さっき、手を合わせて“明日のストーンズのライブ、一緒に行こう”って言っちゃった……」
ついて来ちゃったのかな。いや、待ち合わせでよかったんだけど(笑)。うれしいような怖いような。
そのタウン・センターだかシティ・センターだかいうバス停に着きました。
ストーンズ本に出てくるチェルトナムの描写から勝手に想像していたのとは随分違う、かなり開けた街です。ちゃんとマークス&スペンサーもありますし(あれば開けてるのかというと微妙ですが)、カフェやらパブやらも山ほどありました。駅前の雰囲気は想像してたチェルトナムに近かったんですけど。
近くに停まってたバスの運ちゃんに「このバス、チェルトナム・スパ駅に行く?」と聞くと、「ああ、そんなのすぐそこだよ。この道を通りに出て、左に折れて、ちょっと行ったら左」
ああそう。じゃあ近いんだね。
昼もけっこう過ぎていたので、腹ぺこです。まだ時間もあるし、メシ食おう、メシ。
手近なカフェに入り、何だかよくわからない名前だけど、説明書きを見る限りうまそうなブツとクロネンバーグを注文しました。
おお、けっこううまいな。食い物の評判が最悪のイギリスだって、ちゃんとうまいものが食えるんだよな。
満腹の我ら5人に、店のおねえちゃんがミント菓子を持ってきてくれました。
これが6つ。またブライアンの分か。
さて、じゃあ駅まで歩くかな。諸事情あって、イギリスで道を聞くときは別の場所で複数の人に確認するという教訓を得ていたので、けっこう寒いのにTシャツ1枚の元気なオジサンに声をかけました。
「チェルトナム・スパの駅にはここから歩ける?」
「……うーん、歩けるけど、遠いよ。1マイルくらいある。俺は歩くけど。あ、ちょっと待って」
オジサン、バスの運転手を捕まえて聞いてくれました。
「このバス、駅に行く?」
運ちゃん「グロスター?」
オジサン「いや、チェルトナム・スパ」
運ちゃん「行かない」
あ、ありがとう。いいです。タクシー拾います。
で、実際にタクシーに乗ってみると……遠いって! 1マイルよりあるんじゃねえか? まったくあの運ちゃん、どこがすぐそこだっつうの!
やっぱりあの教訓は正しいよな。もう一度書きます。
イギリスで道を聞くときは、一度聞いても安心せずに、必ず場所を変えてもう1人に聞きましょう。
目的の列車が来るまでは時間があったので、駅周辺をブラブラします。そこかしこに花が飾られていて、周辺の植生もすごく考えられています。いいなあ、こういう駅。

脳内では「No Expectations」のイントロのスライド・ギター(ブライアンの実質的な最後の名演)が鳴り続けます。
知らないニイチャンにタバコの火を貸したりなんかしている間に列車が到着、ロンドンに向けて出発しました。
帰りの電車は、行きほどハイテンションではなかったものの、やはり訳のわからない話をしながら、一路(当たり前か)パディントンへ。
帰りにビル・ワイマン氏の経営するレストラン“スティッキー・フィンガーズ”に寄ろうということになりました。
一応、行ったことがあるのは私だけなので、ご案内。
店に入ると……やはりライブの中日だけあって、中はベロのシャツを着た人が多いです。家族連れやカップルもいるんですけどね。
現役ストーンズ・ファンにとって、ワイマン氏の最近の言動は腹に据えかねるようなところがありますので、女性陣は「まあ、行ってやるよ」的なスタンスだったのですが、店内に飾られたツアーポスター、絵、写真、楽器、ディスクの数々、そしてずっとBGMにかかっているストーンズにはご満足いただけたようです。
さて、何を食おうか……って、ここの食事は牛馬のような量なので、ひとり1品頼んだら確実に腹がパンクします。ウェイトレスのオネエチャンのオススメを聞き、サラダやらリブステーキやらを3品頼んで、5人でシェアすることにしました。
おお、うまいな、このリブ。さすがオネエチャンのオススメだ。ワイマンだと思って馬鹿にしちゃいけないな。
女性陣も「ちくしょう、うまいな。二度と来てやる!」が口癖状態でした(笑)。
ビールも進んできて、だんだんいい気分です(いい気分だったので、ここから先の話は順番がたぶん入れ替わっています)。すると、いつしかBGMは「Flashpoint」に。
「Start Me Up」がかかった時、何の打ち合わせもないというのに、歌い出しで5人ともミックの“いつものポーズ”(左図参照)を再現しました。一斉に、狂いもなくです。
やっぱりストーンズ馬鹿が店内には多いようで、あちこちで同じことをしている人がいます。バカだ。みんなバカだ。
そうこうするうちに、我々のテンションにひかれたのか、隣のテーブルのオランダ人のオジサン軍団が声をかけてきました。2代目オランダーズです。初代はこっち。
うち1人のGさんはこちらのテーブルにやってきました。何やら日本公演のブートレッグを持っています。
そこで我らがHちゃんを「日本のブートレッグ・クィーンだ」と紹介すると、いきなりディープなストーンズ・ブート談義に花を咲かせます。あ、もちろん私は言ってることの3分の1わかるかどうかです(笑)。女性陣がちゃんと会話しているので、あえて聞き返して腰を折るのもどうかと思って。
Gさんの携帯にはすごい量の音源が取り込まれており、いくつか聴かせてもらったのですが、中には聴いたこともないようなアウトテイクもあり、非常に勉強になりました。60年代からオランダではストーンズの人気が高いらしいので、こういうコアなファンが育つ土壌があるんですね。
しかし馬鹿だよなあ。オランダくんだりからロンドンまでストーンズを見に来ちゃうなんて…………アレ?
その後はオランダーズにチケットを売ろうとしたり、むこうのチケットをかっぱらおうとしたり、Tシャツを取り上げようとしたりの大騒ぎ。いやあ、楽しい連中だ。
そこにHちゃんの友人で有名コレクターのI氏(日本人)がやってきました。何でも成田でバッタリ会ったそうで。一緒にいたO氏、どこかで見覚えがあると思ったら、何と昼間チェルトナムにいた日本人でした。
いやいやその節はどうも。
が、
Hちゃん「はじめまして、ですよね?」
O氏「……いや、今まで3回くらい会ってますけど……」
何でも海外で何度も会っているんだとか。ひどいよなあ(笑)。
店員に「一緒のテーブルにしますか?」と聞かれ、「いや、別です」と答えたものの、結局は合流。もう文字通り飲めや歌えやの大宴会になりました。
トイレに行く時、ちょうど「Flashpoint」の「Brown Sugar」がかかっていたので、モノマネをしながら行ったら、これがオランダーズはじめ店内でバカウケ。これで芸人根性に火がついてしまった私は、I氏と組んでキース役をやったりしてウケ狙い路線まっしぐら。
中でも受けたのがキース・ムーンの真似でした。何でも似ているそうで。もっとも、似ていると言われてもあまり嬉しくないロック・スターの筆頭かも知れません。
←こんなシャツを着ていたので、とくに似て見えたのかな。私は気づきませんでしたけど、「写真を撮るからもう1回やってくれ」と声がかかったとか。
あ、ちなみに左の写真の顔の部分は本物のキース・ムーンですから(笑)。念のため。
もし、海外のサイトで「馬鹿な日本人がミックやキースやムーニーのモノマネをしていた」と書かれていたら、それは私です(笑)。
かなりいい気分でオランダーズのG氏と連れションしに行きました。トイレでの会話です。
G氏「彼女たちは友達?」
俺「はい、そうです。みんなクレイジーですよね(笑)」
G氏「ブワッハッハッハッハ! そうだね(笑)。でも俺もなんだ」
俺「あ、俺もです」
楽しいオジサンだ。
私は外人とはこの程度の会話が限界ですが、コレクターのI氏は物怖じせずにいきなり外人に声をかけまくります。
近くにベロTの大人数集団が入店したので、即刻声をかけに行きます。しばらく話していたのですが、戻ってくるやいなや、
「あいつらノルウェーだって。でもノリが悪い。ダメだあいつら」とのこと。
ノルウェー人は固いな。ここは一丁「ノルウェーの森」でも歌ってからかってやろうかと、その時は思ったんですが、よく考えたらあちらは素面でこちらは酔っぱらい。普通、同じノリじゃないよな。
トイレの近い私はちょこちょこトイレに行っては、そこにいた人と話すのがだんだん楽しみになってきました。
トイレに降りる階段の途中に、ブライアンの写真があったので、カメラに納めました。
すると
外人のニイチャンとその彼女「いい写真だよね」
俺「そうだね。俺、今日、ブライアンのお墓に行ってきたんだよ」
ニイチャン「おお、いいね! あ、ところで、ここにブライアンのギターが展示してあるの、知ってる?」
俺「えええええええ? どどどどれ?どれ?どれ?」
ニイチャンを階上に連行しましたよ。
ニイチャン「あれだよ。あの金色のレスポール」
俺「おおおおおお、ありがとう!」
すぐに席に戻り、
「あああああのギター、レスポール・スペシャル! ブブブブブライアンのだって!」
「ええええええ?」
一斉に写真を撮り出す美女軍団。圧巻でした。
左の写真は2003年8月に行った時のものです。
小腹が空いてきたような気がしましたが、あの牛馬が食うような量の料理を注文するのは気が引けました。
そこでふとメニューを見ると、「Sticky Rice」の文字が。“ネバネバした米”? とりあえず、オネエチャンを呼んで聞いてみると、何やらいろいろ説明していますが、私の耳には「フライド・ライス」と言ってるように聞こえました。
ああ、チャーハンか。それ頼もう。
ところが、出てきたのが……
これです(笑)。ご飯じゃねえかよ(笑)。そうか、「フライド・ライス」じゃなくて、「ホワイト・ライス」っつったのか!
しかも、オネエチャンが言うには……
これに乗せて食え、だそうです(笑)。
さすがに日本人としては爆笑しましたよ。膝詰めて説教してやろうかと思いました。
パンにメシのっけて食うとはねえ……だからベースがうまくならないんだよ、ビル(笑)。
そして、この人が来店しました。
おお、キース!……じゃない!
キースの真似をしてライブ会場に現れる名物ドイツ人でした。
我々が勝手に付けたあだ名が“ジャーマン・キース”。
写真を撮っていいかを聞くと、OKしてくれました。一緒にいた彼女も楽しんでもらえたようで。
とてもいい気分で店を出て、上品なハイストリートの町並みを駅に向かう日本人7人。
男3人が大騒ぎ&熱唱するので、女性4人が距離を取り、そこをまた追いかけて熱唱、という繰り返しで駅へ。
MちゃんFちゃんと一緒にサウス・ケンジントンまで行って……どうしたっけ? スーパーに寄ったような気がしないでもありませんが、ハッキリしません。
さあ、この勢いで明日はストーンズだ!