今回を逃したらチャンスはないかも知れない。この機会に、宿願のブライアン・ジョーンズの墓参りに行こう、と思い立ちました。そして、一路チェルトナムへ。
 ブライアン・ジョーンズ
 ストーンズ・ファンにとっては特別な名前です。
 ストーンズを作った張本人であり、バンドの命名者であり、初期のリーダーだったんですから。

 今回の渡英にあたり、さすがにブライアンの墓参りに行くべきなのではないか、と考えました。ストーンズに夢中になり、今こんなサイトをやっているのも、元をたどればブライアンがバンドを作ったところに行き着きます。
 思えばイギリスなんかそんなにしょっちゅう行けるはずもなく、行けたとしてもチェルトナムに行けるような日程じゃないかも知れない。
 と思うと、やはりここは行っておかないと後悔すること確実。ようやく出発まで間もない8月9日に決意しました。

 決意とほぼ同時に友人たちに決意表明をメールし、もし一緒に行く人がいたら、行きませんか?と声をかけたところ、Mちゃんから何と10分も経たずに「行く!」との返事。その後も続々と参加表明が届き、結局5人で行くことになりました。
 誰も参加しなかったとしても1人で行くつもりではいたのですが、この好反応は嬉しい誤算です。

 話は渡英後に戻ります。
 21日の朝、前日ウォータールーでタクシー難民と化したにも関わらず、ホテルのロビーでのFちゃんMちゃんとの待ち合わせは時間通り。その後パディントン駅構内の「Yo!Sushi」前に行くと、既にWild Girlsは到着しています。すごい。みんなさすがだ。

 切符を購入。何と割引往復でも51ポンドでした。うーん、けっこうすんな。
 ご存知の方も多いとは思いますが、パディントン駅にはホームが多く、しかもホーム間の移動がたいへんなので、インフォメーションに「チェルトナム行きって何番線?」とたずねると、「まだわかんないから3分待て」と言われました。
 「まだ」??? 何のことやら理解できずにいると、電光掲示板に表示が。要するに直前まで出発ホームが決まっていないということのようです。うーん……それでいいのか、BR?

 我々の乗る列車は、ディーゼル機関車が牽引するものでした。電化されてないんだろうか。とにかくディーゼルの排気で臭うホームを普通席に向かいます。あ、やっぱり駅員が黒くて長いしゃもじ持ってる。

パディントンのホーム 横目でのぞくファースト・クラスの席は、でっかいテーブルとご立派なシートで、いかにも乗り心地が良さそうです。が、普通席との差額(忘れちゃったけど)を払うほどの違いかというと、微妙かな……。金の心配をしなくてもいい身分になったら考えましょう。というか、普通に渡英できるような身分になったらか(笑)。

 普通席でもそこそこの座り心地です。ボックス型のシートの真ん中にはテーブルもあります。ただ、日本の電車みたいにシートアレンジまではできません。

 行きの列車はこれまた遠足状態。「そんな奴おらへんやろ〜〜」が頻発ですよ。いやはや本当にこれ、墓参りに行く列車なんだろうか。
 だんだんと外の風景が変わってきて、ロンドンでは見ることのできない牧歌的な景色が見えてきます。普通に牛馬羊がいるんだねえ。
郊外 ただ、そんな風景に見入りつつも、だんだんと話が飛躍していくのはこのメンバーの宿命です。馬の話からポニーランドの話になり、しまいにゃ“ストレイ・ポニー”という用語が生まれました。何のことやらわからないとは思いますが。

乗ってきた列車とチェルトナムのホーム パディントンから2時間ちょっと。途中、グロスターでスイッチバック(西武池袋線で秩父に行ったことのある方はご存知と思いますが、飯能で進行方向が逆になるアレです)してチェルトナム・スパ駅に着きました

チェルトナム・スパ駅

チェルトナム・スパの駅舎  駅を出てみると、閑静というよりはひなびた感の強い駅前です。
 あ、日本人らしき男性も1人で来ています。ほかにも何人か墓参り目的の人がいそうです。

 ブライアンの眠る墓地は確か3マイル近く離れているので、徒歩で行くのは相当な覚悟がいりますし、バスでも乗り継ぎが必要です。最初からタクシーのつもりでいましたから、迷わずタクシーを物色。
 何せこちとら5人組ですから、全員乗れるタクシーを探さないといけません。
 運良くエスティマみたいなフォードの車のタクシーがあったので、声をかけます。

「チェルトナム・セメタリーに行きたいんだけど。ブライアン・ジョーンズのお墓のあるところ」
「ブライアン・ジョーンズ?」
 な、何だよ。事前調査で読んだ記事では、地元の運ちゃんはみんな知ってるって書いてあったぞ。
「そう、ブライアン・ジョーンズ」
「チェルトナム・セメタリーだね?」
「そうそう。そこ」
「乗って」

……うーん、大丈夫なのか? いや、運ちゃんが不安なんじゃなくて、俺の言葉はちゃんと通じてるのかが不安です。
 まあ、とにかく駅前にずーっといたって、お墓の方からは来てくれないんだから、とにかく乗ろう。
 ガタガタと座席を用意してくれる運ちゃん。私は最後列に荷台から乗ったのですが、運ちゃん何とバックドアを開けっ放しでスタートしようとしたので、「ちょっと、ちょっとちょっと!(嘘) ハッチが開いてるよ!
 今度は我が英語力じゃなくて、運ちゃんへの不安が……

 ようやく発進。土地勘がないので(当たり前)、今走ってる道が正しいかどうかもわかりません。
 我々の前に、まったく同じ進路を進むタクシーがあります。

運ちゃん「あのタクシー、同じとこに行くんだな。ダハハハハ」

 ああ、じゃあたぶんこの道で合ってんだな。
 と、安心すると、何だかこみ上げるものがありました。不思議な感情です。説明は難しいのですが、これからブライアンの墓に行くという事実がそうさせていることは間違いありません。ヘンだなあ、俺が3歳になる前に死んじゃった人で、そんなにファンとしてブライアンに入れあげたことはないんだけどな。

 そこそこ走った後、運ちゃんが「ここがチェルトナム・セメタリーだよ。中入る?」と聞くので、同行の美女軍団の誰か(すまん。忘れた)が「チャペルのそばまでやっつくんな」と指示してくれます。
 けっこうなスピードで墓地の中を走るタクシー。実は後でわかったのですが、運ちゃんはブライアンの墓の場所を知っていたと見え、かなり近くで下ろしてくれたのです。

 さて、この辺にあるはずなんだけどな。チェペルがあそこだし、向きがあっちだから……と、周辺の墓石を見て回っても、どうも見つかりません。
 しょうがない。せっかく中まで運んでもらったけど、確か入口そばに事務所があったから聞きに行こうね。まだ花も買ってないし。
 事務所に入って「すんまへん」と声かけすると、上品なおばちゃんが出てきます。一緒に入ったHちゃんが聞いてくれました。

チェルトナム・セメタリー案内図「ブライアン・ジョーンズのお墓に行きたいんですが……」
「ああ、ブライアンね。ここですよ。この図にもあるけど、門を入ってこっちに行って、メモリアルのところをこっちに……」

 あ、ホントだ。事務所の入口前の地図に書いてあるじゃん。聞くまでもなかった……

チェルトナム・セメタリー案内地図 でも、おばちゃんが地図のコピーをくれたので、ありがたくちょうだいしました。

 ブライアンの墓の場所には「BJ」と書かれています。

 一度墓地を出て、近く(でもないか)の店に向かいます。まずは花。お墓参りに花、というのは洋の東西を問わず常識です。
献花  そして、ウォッカ。小さいけど趣味のいい瓶のやつです。そしてMちゃんはチュッパチャプスを1つ。
 よし、これで準備OK。みんなで再び墓地に向かいます。
 門を入り、地図を片手にブライアンの墓地を目指します。さすがにしゃべり出したら止まらない我々も、口数も少なくなり、神妙な気持ちになってきます。
 私、この時点でかなり涙を堪えていたのですが、後ろからMちゃんの嗚咽が聞こえてきました。
 うー、これはきつい(笑)。振り返ることもできません。
 と、とにかくお墓まで行かなきゃ。

チャペル

 鼓動が強まる中たどりついたブライアンの墓は、まさにさっき運ちゃんが一度下ろしてくれた場所の近くでした。

ブライアンの墓

 地元にはファンクラブがあり、墓参りと供え物を欠かさないと聞いていましたが、すでにCD、カード、花などが供えてありました。

 まずは手を合わせます。
 そしてみんなで花、ウォッカ、チュッパチャプスをそなえます。
 もうダメだ。泣けてきて、止まりません。もちろん、ブライアンの不在を悲しむという涙ではありません。今でもなぜ泣けてきたのかは、実はよくわかりません。
 が、少なくともブライアンへの感謝の気持ちと、曲がりなりにもストーンズ・ファンとしての義理が果たせた安堵感の2つは、確実に入っていたかなと思います。

 ブライアン、ありがとう
 あんたがいかに嫌な人間だったかは知ってるけど(笑)、感謝の気持ちには変わりないよ。あんたの作ったストーンズを追いかけて、仕事も休んでイギリスまで来ちゃったけど、本当に楽しい。

 何度も手を合わせました。墓石もさわりました。この地面の下に、ブライアン・ジョーンズが眠っていると思うとねえ。
 墓石のそばで手を合わせて瞑目し、一応英語で「明日、ストーンズを見に行くんだけど、一緒に行かない?」と声をかけました。
 恨みつらみもあるでしょうけど、さすがに37年の月日が洗い流したかなと……。

 どのくらい墓の前にいたのかはわかりませんけど、みんな去りがたい気持ちだったのか、しばらくみんなで墓標の回りにいました。

 ちなみによくストーンズ本でたまに「“そんなにひどく裁かないでください”が墓碑に刻まれている」という記述がありますが、そう書いてある本は、他の記述も疑った方がいいでしょう。書いてないもん、そんなこと。墓参りもせずに書いた本、ということです。
 実際には、葬儀の時に父親がその言葉で終わる手紙をもらった話をした、ということらしいです。

 いやあ、行ってよかった。一緒に行ってくれたみんなにも感謝。一人だったら、きっとこんなに心に残る墓参りにはならなかったと思います。
 センチメンタリズムだと笑わば笑え。でも、確かに俺たちはブライアンの魂のある場所に行って、それに触れたんだ。

 後半に続きます。

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