Licksツアー、香港で終了。怒濤のライブ・レポートです。ちなみに香港のタクシーは意外にも安全でした。

 待つこと約40分、ようやく“心拍音”が聞こえ始めました。
 「来たあっ!」
 はじかれたように立ち上がる私たち。でも周辺の反応は今ひとつです。現地人はこれが開演の合図とは知らないでしょうし、外人達は酔っぱらってたんでしょう(笑)。
 それでもだんだんと場内が盛り上がってきます。
 ごう〜〜ん!
 出囃子の最後の重低音が響くと、バンドがステージに姿を現しました!

 あれ?キースがカポなしのテレキャス持ってる。と思っている間に、「Brown Sugar」のイントロが始まりました。
 ああ、今日はやっぱりスタジアム用だな。でもまあいいや。何せ目の前にストーンズがいるんだもんな。
 今回のセットリストはそりゃもうヒットパレード中のヒットパレードでした。ヒットパレードだけで19曲のセットリストが余裕で組めるって、すげえよな、しかし。

 この日のストーンズは、ちょい堅めの演奏に終始しました。何だか緊張してるっぽいというか。ミスは(いつもにくらべれば、ではありますが)少なく、キチッと演奏することに心を砕いている感じでした。
 途中、my休憩時間である「Miss You」と「Angie」があったので、思い切ってデジカメを取り出し、撮影してみました。
 さすがにストロボ光らせるのはいかがなものかと思って発光なしで撮影したんですが、デジカメの余計な機能で勝手にシャッタースピードを遅らせやがったようで、いずれもブレまくり。ちゃんと写った写真は1枚もありませんでした。
 でも雰囲気は多少伝わるかな……。まあ、ちょいとお楽しみください。

ミック
グリマー・トゥインズ
キース355を弾く
 さあ、待望のキースコーナーです。ま、正直言ってここまでの曲目で「The Nearness Of You」はあきらめてました。あきらめてましたが……キースが「Great to be here」とか言った後の言葉は、やはり「On with the show.... "Slipping Away"」でした(泣)。
 ええ、“香港まで行ってSlipping Away”、正夢でしたよ。笑い出すFちゃんMちゃん。俺も苦笑いするしかありません。周囲の連中は不思議そうにこちらを見ています。そりゃそうだろうな。笑うとこじゃないもん。ションベンタイムではあっても(笑)。
 そう、日本でもロンドンでも見られなかった“キースコーナーでトイレにゾロゾロ”があったんですよ、これが! しかも座っちゃう奴が続出! 失礼な連中だな!
 コラ、おまえら! キースってのは、とんでもなく偉い人なんだぞ!
 世界一ヘロインをたくさんやってたはずなのに、生き残ったんだぞ!
 スイスで血液交換したんだぞ!
 親友の女も平気で寝取っちゃうんだぞ!
 まちがってもギターがうまいとは言えないけど、凄いんだぞ!
 ゾンビみたいだけど…………あれ?

 その失礼な香港人の客の反応は、すでにストーンズが来ることが普通になってしまった我々から見て、とてもおもしろいものでした。
 まず、my休憩タイムではとんでもなく盛り上がってました。Angieではミックの第一声だけで両手を天に突き上げ、Miss Youでは珍妙なダンスを延々と繰り広げます。
 その一方で、Can't You Hear Me Knockingなんかでは反応が今イチ。我々が「おーっ!」と歓声を上げると怪訝そうに見られる始末でした。アルバム収録曲なんか知らないのかな。もっとも、曲の終わる頃には奴らも盛り上げられちゃってましたけどね。さすがストーンズ。
 客にとって初めてのストーンズ。ストーンズにとっても、初めての客。何だか遙か昔90年の初来日を思い浮かべたのは私だけではないはずです。いや、だってたくさんいたもん、日本人(笑)。

 ヒットパレードだったので特に出物はなかったものの、個人的にはMiss YouとPaint It Blackを(Licksツアーでは)聴いたことがなかったので、ややトクした気になりました。

この日のセットリスト

    1. Brown Sugar
    2. Start Me Up
    3. It's Only Rock'n Roll
    4. Don't Stop
    5. Angie
    6. You Can't Always Get What You Want
    7. Paint It Black
    8. Can't You Hear Me Knocking
    9. Miss You
    10. Tumbling Dice
    11. Slipping Away
    12. Happy
    13. Sympathy For The Devil
    14. Gimme Shelter
    15. You Got Me Rocking
    16. Street Fighting Man
    17. Honky Tonk Women
    18. (I Can't Get No) Satisfaction
    19. Jumpin' Jack Flash

 ね、ヒットパレードでしょう。
 しかも、全体に演奏は高値安定していました。ハッキリ言って、かなりよかったです。Happyも日本公演までの崩れすぎ状態ではなかったし、Gimme Shelterも(Bステージからメインに戻る時間がないので)打ち込みではなくギターで始まるバージョンだったんで、しみじみよかったです。
 でも、何だかプラスαがないんだよなあ……。
 このへんについてMちゃんと話し合ったんですけど、「我々が贅沢になっているのかも知れない」という話になりました。
 もはやツアーがあれば来日もついてくるし、公式FCおよびインターネットのおかげで、いい席も手に入る。以前は見られるだけでも大変なことだったのに、少々気持ちが贅沢になっているのかという気がします。
 思えば確かに贅沢な話です。90年に実際に来るまでは、そもそも日本にいる限り絶対に見られないバンドだったのにねえ。

 まあ、ただ何というか、“奇跡が起きなかった”と言うんですかねえ。
 私の思い込みですけど、音楽は人間が起こせる唯一の奇跡だと思うんです。“音楽とは何か”みたいな話になると長くなるので割愛しますが、ストーンズってバンドはかなりしょっちゅう奇跡を起こすことができるんですよ。
 うまいとか、ミスがないとか、いい曲だとかいうことに関係なく、奇跡は起きます。気合いが音に現れたり、タイミングの合い方がよかったり、一瞬の音色だったり……とにかく言語化の難しい部分で起きるのが“音楽の奇跡”だと思うんです。
 それが今回はなかった。それでも演奏は良かった。
 そんな印象です。
 ……っつったってまあ、こちとらミーハーなファンなので、要するにストーンズがいい席で生で見られたんで大満足ではあるんですけどね(笑)。

香港の紙吹雪 永遠の名曲、究極のロックであるJumpin' Jack Flashを演奏するストーンズを、紙吹雪が包みます。何と、香港だけはこれまでの赤くて丸い紙吹雪ではなく、四角くて、しかも白と黄色の混じった紙吹雪です。

フィナーレ
サポート含む全メンバーが集結して……
 ああ、それにしてもこれでLicksツアーを見られるのは最後かぁ……。
 9日の公演こそが正真正銘の最終日になるものの、私にとってはこれが最終日。恒例のメンバー挨拶も、万感の思いで見ましたよ。それでもしっかり写真は撮ってたりするんですが。
全員挨拶
一斉に礼!
 恒例の御辞儀コーナー(笑)です。
4人の挨拶
そしてストーンズ4人だけでの礼
 この時ばかりは“万感の思い”という大げさな形容がピッタリの心境でした。
バイバイ!
Bye, Hong Kong!
 ありがとう!
 02年から03年いっぱいまで、本当に楽しませてもらったよ。あんた達のファンを続けていて、こんなに楽しめる年はなかった。
 東京、横浜、ロンドン、香港と、一生もんの思い出をもらったしね。仕事や日々の生活はたいへんな年だったけど、あんた達のおかげで乗り切れた。本当に感謝します。
40周年うちわ
Have you ever seen this fan? This is mine!
(外人向けメッセージ)
 あ、そうそう、また扇子がスクリーンに映りました。メンバーが引っ込んだ後の客席パンで、しかも2回も。我が扇子もずいぶんと国際的になってきたな。

 さあ、次に生のストーンズを見られるのは、いつになるんだろう。それまで、俺もしっかりやんないとな。チンタラやってたんじゃ、申し訳なくて堂々とストーンズの前に立てないもんな。

グッズ売り場
オフィシャルグッズ売り場。“大会指定註冊商品”だそうです。
会場前記念撮影
会場出口前で記念撮影。左の赤い袖がFちゃんで、その右でミックの生首お面をしているのがMちゃん。ヘンな外人が勝手に入る。
なお、プライバシー保護のため、顔にはぼかしが入っています。あ、ヘンな外人の顔は動いてたのでブレてるだけです。
 感慨に浸りつつも、公演前は隠していたカメラを堂々と出し、写真を撮りながら会場を後にしました。
 FちゃんMちゃんは9日も見られるのか……いいなあ。でもまあ、俺の生活環境を考えると、9日も見てから帰国するのは不可能。すっぱりあきらめて帰ろう。

 ワンチャイ近辺の飲み屋はどこも満杯だったので、セブンイレブンで酒とつまみを買い、FちゃんMちゃんの豪華な部屋へ。しみじみとストーンズについて語りながら飲みました。

 語り合いすぎて3時近くになってしまい、眠くなってきたのでホテルに帰ろうとしたものの、15分も歩く気にはなれず、思い切ってタクシーを使うことにしました。
 地図を見せて、現在地と目的地を指示すると、何だかクネクネと走っています。歩けばすぐのところなのに……。
 やっぱ香港でタクシーは失敗か? ボッタクリ? どこかに拉致されて身ぐるみ剥がれるのか?(泣)
 でもまあ、ただやられるのもしゃくなので、後席にいる有利を利用して、有事に備えましたよ、さすがに。ライターとペンで取りあえず武装し、いざとなったらペンで先制攻撃→ライターを握り込んで威力倍増の拳で乱打して、最悪ペンで目を狙って……

 ところが、運ちゃんは時々首をかしげています。……おい、道、間違えたのか? でも、広東語なんか「ネイホーマー」くらいしか知らないし……。
 そこからがこの運ちゃんの偉いところです。ホテルのけっこう近くまで行った時、無言でメーターをリセットしたのです。おお、自分のせいで迷った分の金はもらわないということか! 偉い、偉いぞ兄ちゃん!
 香港ではとくにタクシー運転手にチップを払う必要はないとのことでしたが、感激した私は多めの金を置き、「釣りはいらねえ」と言ってタクシーを降りました。いや疑って悪かった。

 ああ、疲れた。
 そりゃそうだよな。今朝は日本にいたんだから。
 シャワーだけは何とか浴び、泥のように眠りましたよ、ええ。

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