3泊しているというのに、最終日にして初めて4人揃った朝食をとりました。
ワイルド・ガールズは既に(噂なんだけど)2月のアメリカ・ツアーに心が飛んでいるようです。11月には香港もほぼ決まったようですし。
こんなことをしていても、一応は三児の父です。さすがにそう何度も海外にストーンズを見に行くわけにもいきません。S氏は自称“走馬燈くん”で、昨夜のアンコールの最中、「ああ、俺はもうストーンズは来日しないと見に行けないかも知れない」と思ってしまい、これまでの思い出が走馬燈のように巡ってきて、泣けてきたとのこと。
うんうん。非常によくわかります。お子さんが1人のS氏ですらそうなんですから、3人もいる俺の場合はもっと困難です。これからは本当に日本でしか見られないような気がします。
子供が成長してくれば可能なんでしょうが、その時までストーンズが現役でいてくれるかどうか……。少なくとも、今と同じではないでしょうしね。
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| お仲間3人を見送り。ホテルのロビーにて。 |
とりあえず部屋に戻って喫煙。最後に荷物を総点検し、部屋のテレビをいじって“エクスプレス・チェックアウト”をして部屋を出ました。これがすげえ便利なんです。画面上で手続きしたら、鍵をフロント前の箱に入れていくだけ。わずらわしい英会話に悩まされることもありません(日本語画面もあるので……)。
荷物預かり所に行き、事前に確認しておいたフレーズで、「これ、預かってください。夕方の4時頃には戻ります」と伝えると、すんなり通じました。しかし、練習の効果が出すぎたのか、係のオニイチャンがすんごいスピードでしゃべり始めました。
1秒ほど固まった後、「……あー、あー、パードン?(今回の旅で、“Excuse me”の次によく使った言葉です)」というのが精一杯。すると、やっぱり“現代の中華民族”アメリカ人とは違いますね。すんごく簡単に言い直してくれました。
「Check out?」
……最初からそう言ってくれよ。
ホテルを出て、やっぱり前夜急に行きたくなったアビーロード・スタジオに向かいました。
渡英以来ずっと雨だったんですが、帰国するこの日だけはすっきり日本晴れ。……いや英国晴れ。
セント・ジョンズ・ウッド駅が近いとS氏に聞いていたので、まずは地下鉄で移動。何だか妙に多くの人が降ります。まさか、こいつらみんなアビーロードか? 名所のひとつだろうけど、ずいぶん多いな。土曜日だからかな?
謎はすぐに解けました。改札を出ると、いきなりダフ屋が「券ないか?」とやっています。アビーロードにダフ屋???
ふと掲示されたポスターを見ると、クリケットの試合があるようです。
それにしても、クリケットなんてイギリスだけのスポーツですから、こんなんでダフ屋というのも奇異な感じがしたものの、外人から見れば相撲もそうだと気づきました。なるほどね。
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| できるだけジャケットに近いアングルで。これ以上は車道に入らないと無理ですが、とてもそんなことが可能な交通量ではありません。 |
既に数人のビートルズ・ファンらしき人が来ています。
蛇足とは思いますが念のために補足すると、ビートルズがレコーディングに利用していたスタジオがここです。
実質的ラスト・アルバム『Abbey Road』にも名前が使われ、そのあまりにも有名なジャケットは、アビーロード前の横断歩道をビートルズの4人がスタジオに背を向けて渡っているところになっています。
ここで同じポーズで写真を撮るというのがビートルズ・ファンの間では定番行動で、知人でも実行者が何人かいます。でも、単独行動の私がひとりでそんなことやってもねえ。ジャケに近いアングルで1枚取れればいいやと、中央分離帯の上から、ムリヤリ撮影したのがこの写真です。
センターラインこそ変なジグザグのやつになってしまっていますが、アルバムジャケットで見たそのままの風景が目の前にあります。
何だか“ここまでたどり着いた感”が強く感じられました。
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| あきらめずにチャレンジを繰り返す親子。結局、撮れたんだろうか? |
かなりの長時間、子供が歩き出しては車が来てやり直し、というのを延々とやっています。親父と目があったので、にやりと笑ってやったら、さすがに苦笑いしています。
成功するものかどうか見ていたい気もしましたが、引き上げることにしました。
引き上げ際、日本人の若い男の子がいたんですが、何だか涙ぐんでいたので声をかけるのをやめました。いや、ちょっと怖くて……
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| Your mother, she's an heiress Own's a block in Saint John's Wood |
次はいよいよ「EDITH GROVE」に移動です。ものの本では「エディス・グローブ」と表記されていますが、たぶん「イーディス・グローブ」と読むんじゃないかな。
ここは何の変哲もないアパートだけの街です。しかもごく短い通りの両側だけという、本当に狭い街です。
こんなところをわざわざ訪れたのは、ストーンズ黎明期に、ミック、キース、そしてブライアンの3人が住んでいた街だからです。
まずは地下鉄を乗り継いで、アールズコート駅に行き、バスの停留所で路線と行き先を確認しました。お、来てる来てる。しかし残念ながら乗ったバスはダブルデッカー=二階建てバスではありません。
なぜ残念かというと、ダブルデッカー(ただし車掌付きのみ)では、車掌に「○×に着いたら教えて」というと、その場所で教えてくれるんです。で、私の乗ったバスは車内アナウンスもなければ「次は○×です」表示もないので、自力で景色から判断してブザーを押さないといけないようなんです。
おいおい、わかるわけねえじゃん。だったらせめて全部の停留所に停まってくれよ。窓外を見ると、どうもいくつかの停留所には待ってる人がいないので飛ばしてます。
しょうがない。景色というか雰囲気で見当をつけて、後ろに座ってたお姉さんに「次、イーディス・グローブですか?」と聞いたんですが、「そういうところは知らないです。前の通りはフラムブロードウェイなんだけど」だそうな。
じゃあいいや。フラムブロードウェイとキングスロードの間だからな。
降りてみると、停留所の名前は違うものの、ちょうどイーディス・グローブの手前です。
さすがにどのアパートに3人が住んでいたのかまではわかりませんから、とにかく全部見ようと、1軒1軒じっくりと見て回りました。
言ってみれば、ここがザ・ローリング・ストーンズの発祥の地なのです。
感無量でした。
あまり日本人は通らないんでしょうか。道行く人もこちらを時々チラチラと見ています。そうか、観光地化はしてないのか。日本だったら、絶対観光地化してストーンズまんじゅう売るよなあ。
普通に歩けば5分とかからない短い通りなので、ゆっくり見てもキングスロードに出るまで15分くらいでしょうか。
うって変わってこちらはキングスロード。まあ、パンクの聖地でしょうかね。昔はここに“観光パンク”がいて、一緒に写真に映ってくれたそうです(Kちゃん情報)。今ではパンクのパの字もなく、当然マルコム・マクラレンのお店も見あたりません(あったてもわかんないけど)。パンク出現以前からそうだったように、ブティック街でしたね。
ふと見るとしょぼいドラッグストアがあります。
「I went down to the Chelsea drug store」という、「You Can't Always Get What You Want」の歌詞が浮かびました。このあたりも一応はチェルシーの一角ですからね。
……!
そうだ! ドラッグストアの写真を撮ってウェブに掲載して、その歌詞をキャプションをつけよう! ただ、そのドラッグストアはあまりにもちっこくてみすぼらしかったので、もっとチェルシーの中心部に行って探そうと思い立ちました。
またここでバスに乗り、チェルシーのど真ん中に向かいました。
……ところが、ドラッグストアなんかありゃしないんです。スーパーはあります。変な漢方薬屋さんとかもあります。でも、ドラッグストアはないんです。Bootsはちょっと違いますよねえ?
チェルシーも広いですから、探せば恐らく見つかるでしょう。でも、そんなネタのためにこれ以上時間をかけるのも……バカバカしいでしょ(笑)。
じゃあ昼飯時だからメシでもくうか……と店をあちこち除きますが、昼飯時だけにどこも満杯。仕方ないのでおみやげ探しにハロッズに向かいました。いやあ、あそこ日本人だらけなのね。店の前に各国の国旗が並んでるんですが、アジアのは日本だけ。いかにたくさん来てるかわかりますね。
地下鉄の出入り口とハロッズの間には、アコーディオンを弾く子供達が何人かいて、彼らの前には小銭の入った皿があります。数日間の滞在ではハッキリとはわからなかった階級や貧富の差の存在を、この時だけは強く感じました。
おみやげも一部買えたので、今度こそカフェでも入ってメシを食い、ゆっくりしようと考えたんですが、土曜だけあってどこもメチャメチャ混んでいます。
もうめんどうなので、またハイドパークにでも行って食い物を買い、のんびりしながら食おうと思い立ちました。
Sticky Fingers最寄り駅のHigh St. Kensingtonまで行き、駅前の店でソーセージパンを焼いてもらい、そのままハイドパークへ。
やっぱアレですね。休みの日のハイドパークって、ロンドン市民にしてみれば、単なる公園なんですね。そこで見られる風景は、人種は違うものの葛西臨海公園あたりの休日と何ら変わりません。ボールで遊ぶ親子、のんびりする家族連れ、ローラースケートを楽しむ人……ホント同じです。ロンドンのフツーの休日が、そこにありました。
ラウンド・ポンドの周囲に、ゆったりくつろげるキャンバス地のサマーベッドみたいな椅子がたくさんあるので、そのひとつに腰掛け、のんびりと昼食をとりました。
空腹も収まり、人心地着いたところであたりを見回すと、こりゃなかなかの景色です。思わず写真を撮りましたね。最後の最後で、やっとこんな景色が見られるようになるとは。

う〜ん、もう帰るのはもったいない。しかも、帰国した翌日にはもう仕事なんだよなあ。
たっぷり1時間以上のんびりした後、トイレに行ってから(実はハイドパークのトイレはすべて制覇しました)、ちょっと街をぶらつき、ホテルに戻りました。特に気をつけた訳じゃないけど、約束の時間の10分前です。日本人は時間を守るという原則は海外でもちゃんと実行しないとね。
私の前に荷物を引き取っていた英国人然とした老夫婦がチップを渡さないので、俺もいいかなと一瞬考えましたが、日本人がけちと思われるのもいやなので、2ポンドばかり渡しました。
あれ? でも預けた時には渡してないよな。チップはもらった奴が懐に入れるもんだから、あの金はあいつのもの。でも、預けた人の方が伝票書いたりなんかしてるので、大変だよな……。これは公平なんだろうか。いまいちチップという風習が理解できないので、未だにわかりません。
ゴロゴロとスーツケースを引きずりながらパディントンの駅に向かいます。時間には余裕があるので、ちょっと回り道をして帰りました。迷ったわけではありません。ホントですって。
さすがに脳裏に「Love In Vain」と「No Expectations」が交互に鳴りましたよ。
道すがら、スーツケースに貼られたベロマークのシールを見て、遠巻きに「Rolling Stones!」と言っている声が2度ばかり聞こえました。何だよ、ちゃんと俺に言って来いよ。会話してやるって……1割くらいしか通じないけど。そんなに“英語話せないオーラ”が出てんのかねえ?
パディントン駅に着き、ヒースロー・エクスプレスに乗ろうと切符を買うと、すぐそばにそのヒースロー・エクスプレスが。駅員に「これ、ヒースロー・エクスプレス?」と聞くと、「そうだよ。急いで!」と言ってます。
え? 言われた通りにササッと乗ると、数秒後にドアが閉まり、電車が走り出しました。何だよ、余韻ってもんがないなあ。そういえばこの駅、確かビートルズの映画に出てきたよなあ。
車窓から外を見ていると、またも“もうちょっといたい感”が頭をもたげてきます。アメリカに行った時は“やっと帰れる感”しかなかったのにねえ。やっぱり島国の人間には島国が合うんだろうか。
たった15分で着いてしまうので、感傷が肥大化する前に空港に着きました。
ハロッズでの買い物で、6ポンドちょいの税金が返ってくるのでカウンターを探すと……もんの凄い列ができています。しかも係員の手際が悪いのか、列はあんまり進む気配を見せません。
やめた。あんな列に並ぶだけで6ポンド分損するわ。でもあれ、絶対に税金を返さないための手口だよな。
帰国便のチェックインカウンターには例によって長蛇の列ができていますが、悪いけどすっ飛ばさせてもらいました。しかも、プレミアム・エコノミーの窓口に人がいなかったので、ビジネスのカウンターで手続きしてくれました。
見てた人はビックリしたろうなあ。ベロの帽子にベロのTシャツ、スーツケースにまでベロの着いた野郎が、ビジネスのカウンターでチェックインしてるんだから(笑)。
こちらでも提携会社のラウンジが利用できるということで、利用チケットをもらい、最後の買い物に突撃しました。妹が離日直前に頼んできたファウンデーション・ブラシだの、ご近所に配る紅茶だの、鬼のように買いまくりました。私は買い物が下手なので、こういうので凄く疲れるんですよね。
もう帰国便だからリラックス・モードです。ラウンジで真っ先に喫煙エリアを確認し、脇目もふらずに突入、ソファをひとつ確保し、まずは一服。出発時刻を待ちながら、ビールをグビグビとちょっと多めに飲みました。
搭乗開始のアナウンスを聞き、ゲートに向かっていると、これから乗る飛行機が見え始めたのですが……

……ポケモンジェットかよ(笑)。ロンドンまで来て、ポケモンジェットかよ!
隣の席はやせぎすのオネエチャンだったのでひと安心。往路みたいな白人のハゲデブではないので、少なくとも窮屈な思いは免れそうです。荷物を棚に入れ、スリッパに履き替え、ベルトを締めて、フットレストに足を乗せて……次の瞬間、フランスでした。どうやら酔っぱらって寝ていたようです(笑)。離陸の瞬間なんか、1秒たりとも覚えてません。
ああ、しかし何から何まで楽しい旅だったなあ……。また行きたいです、ロンドンに。次のストーンズのロンドン公演までに資金を貯めようっと。でも、いつになることやら……。



