私とあなたとストーンズ > 私とストーンズ > 第17話
翌朝、ちょっと頭痛がしました(笑)。長時間フライトの後、しかも風邪気味の体調でアストリアに行き、その後夜中まで飲んでたんだからやむを得ない気もしますが。
この日は夜のミック・テイラーまでは自由行動としました。というのもS氏はノッティング・ヒルに骨董を見に行くと言い(行ったけどジュリア・ロバーツはいなかったそうです)、私はそれにあまり興味が持てなかったので(笑)。
ホテルはハイドパークともほど近いところにあるので、これは行かない手はないでしょう。4時頃に部屋に戻るということだけ決めて、とりあえずホテルを出ました。
駅に向かうS氏と別れ、とにかく近道の好きな私は地図を見始めました。すると「tadaっち〜〜」と聞き慣れた声が……。ふと見ると近くのスタバの外の席にKちゃんとHちゃんが。何でも朝早く起きてパディントン駅近くで買い物をした帰りだとか。
「見るからに観光客じゃん」だの「カバン背中にしょっちゃダメだよ」だの「あんまり同じ所をグルグル回ってると、バターになっちゃうよ」だの言いたい放題言われた後、ハイドパークに向かいました。Kちゃんは一瞬行こうかと思ったものの、寒いのでお昼寝するとのことで、結局単独行動です。
近道と目される道の途中で、公衆電話があったので、実家に預けてある上の子2人に電話しました。家内はまだ仕事から戻っていない時間だろうと。こちらが10時30分で、日本が6時30分ということに、2人とも興奮を覚えたようです。
ここで、完全主義者(?)の私としたことが、地図を見て完璧な道を行くのを放棄しました。何だか目の前にある道を入っていきたくなっちゃったのです。まあいいか、方向一緒だし……と思ったのが運のつき、何でだかわからないんですが、隣町のメリルボンの近くまで行ってしまったのです。あれ?
途中で乞食に「俺60ペンスしか持ってないんだ。腹が減ってんだ。1ポンドでいいからくれ」と言われたので、仕方なくあげたところ、私のベロマーク入り帽子を見て「おっ、ストーンズ! 最高だよな」みたいなことを言って去っていきました。
道行く親切な人に「ハイドパークってどっちですか?」と聞くと、ていねいに教えてくれました。偉い!偉いな、イギリス人!
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| マーブル・アーチというやつ? |
中へ入っていくと、広大な広場があります。これが、69年のブライアン・ジョーンズ追悼フリーコンサートが行われた場所なのです。このへんの道が、あのフィルムで戦車が通ってたとこだろうかとか、変な黒人が踊りまくってたのはこのへんだろうかとか、いろいろ考えながら歩きましたよ。
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| 34年前、ここを25万人が埋め尽くしたんです。 | 朝から乗馬を楽しむ優雅な人たち。 |
ひょっとして、ストーンズのステージはそのまま残ってるんだろうか? サーペンタイン湖に突き当たり、乗馬してる人なんかを見ながら左に進んで見つけたものは……
これでした(笑)。「BAND STAND」と書いてあったので、間違いないでしょう。
これ、ただの東屋じゃん(笑)。ちなみに西側にもう一個「野外ステージ」があるようなので行ってみたんですが、同じようなもんがあるだけでした。
ハイドパークをそのままたっぷりと正午過ぎまで散策し、自宅に電話で無事到着を報告、長男との約束で急に雨の降り出したベイカー・ストリートの写真を撮った後(「名探偵コナン」で出たみたいなんで)、パディントンに戻って駅ビルでストーンズ本(NMEとMOJOの特別版)とアストリアの記事が載った新聞(Evening Standard)を買い、遅い昼飯を食いました。
せっかくイギリスに来たんだからフィッシュ&チップスを食わなきゃと注文したんですが、これがまあとんでもない量なんです。アメリカ人に比べると小柄な人が多いイギリス人も、こと食い物となるとすげえ量を食うもんなんですね。
牛馬じゃあるまいし、こんないっぱい食えるかっての。ビールで半分くらいムリヤリ流し込んだところでギブアップでした。
ホテルで休み、夜を待ってミック・テイラーのライブが行われる100クラブに出撃です。
アストリアからさほど遠くないオックスフォード・ストリートの駅から、まずは100クラブの位置を確認、駅の近くまで戻って食事でも……と思ったら、何だか駅の門が閉まっています。聞けば、地下鉄が止まっているとのこと。
路上には見る見る人があふれ出します。バスで食い物屋のあるあたりに移動したのですが、とにかくバスも混んでいます。食堂に入る頃には雨まで降り出したもんだからたまらない。路上にあふれていた人が店内になだれ込んできます。そうなると店員が超満員の客をさばききれないもんだから、注文ひとつするにもひと苦労でした。
翌日わかったんですが、大停電だったようです。日本でも報じられたようで、帰国した後「停電は大丈夫だったの?」とかなりの人に聞かれました。何でも25万人の足に影響があったとか。
まあ、こっちは「100クラブが停電になんなくてよかった」程度ですけどね(笑)。
ちなみにKちゃんとHちゃんが“アイスコーヒー”を頼んだら、出てきたのはこれでした。
コーヒーまで牛馬のようなものを飲んでいるようですな、あちらの人は。
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| 100CLUB! | Mick Taylor異例の売り切れ |
高額ツアー参加者T氏(彼がチケットを取ってくれたんです)はもう中におり、テーブルについてゆったりとビールを飲みながら、すっかりくつろいでいます。そちらでいっしょにゆったり見るのもいいとは思ったものの、ついついせっかくのチャンスだからと、ほぼ正面前の方に陣取りました。
すると、そこにはよくムックなんかで記事を書いている、有名なストーンズのおっかけK山さんがいます。外国で日本人に会ったんだから挨拶くらいすべきだろうかとも思ったんですが、別に知り合いじゃないし、やめておきました。
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| 前座演奏中。客はだれきっています。風邪のため、ハッパのにおいは確認できず。 |
入った時にはカメラチェックも何もなかったので、そのままカメラを持ち込んだんですが、それにしてもカメラを持っている人の多いこと! 中には本格的な一眼レフを平気で出している人も何人かいます。
前座が延々と続けるのでいい加減うんざりした後、ようやくミック・テイラーが登場しました。
……また太ったような気がするのは俺だけだろうか……。しかも、思いっきり普段着のままでステージにひょいと上がってしまいました。100クラブに来る道すがらも、恐らく同じ格好をしていたんじゃないでしょうか。
しかし、やはり終始うつむき加減で目を閉じてギターを弾いているのを見ると、やはりあのミック・テイラーと同一人物なんだとは思います。
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| ミック・テイラー登場! | 歌はもちろんへただが、やはり流麗なギターを弾きます。 | スライドの扱いも見事きわまりない! |
とくにスライド・バーを浅く小指にはめて、スライドと普通のプレイを織り交ぜながら弾くお得意のスタイルはまさに“流麗”。ジミー・ペイジが全盛時代ですらスライドとフィンガリングを切り替える瞬間に思いっきり音が止まってたのに比べると、実に見事なものです。
ただ……バックバンドがねえ……。まあ、下手くそです。ドラマーなんかリズムをキープしているだけ。表情ってものがないんです。ピアノも気の利いたことをやろうとしては失敗しています。ベースは論外。サイドギターはよかったらしいけど、私のいたところからはよく聞こえませんでした。
“あの”ミック・テイラーがこんなバンドをバックに演奏しなきゃいけないのかと思うと、もの悲しさを禁じ得ませんでした。一方、70年代前半のストーンズは、テイラーの能力をバッチリ引き出していたんですね。
S氏曰く「今日、チャーリーがいかに凄いドラマーかが改めてわかった」。
まったくもって、ごもっとも。
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| すげえ目立つところにあった警告。 しかし、客席はカメラの嵐。 |
係員も特にとがめ立てすることもなく、平然としています。
それでもいるんですよね、いちいち注意する馬鹿が。
私の近くにいた外人(そりゃそうか)の3人組=1. ビンスおばさん(WWEのビンス・マクマホンCEOに似てるオバハンです)、2. アビディ男(シリル・アビディの顔の悪いところ=馬鹿面なところがよくにた男です)、3. 金髪のバカ女(アビディの彼女のようでした)が、最悪でした。とくにビンス。
まず、後ろに来たお姉ちゃんが写真を撮ると、イチャモンをつけた挙げ句、中指を立てる始末。ああ、何て下品なババアだろう。
次に、後ろに来た日本人が写真を撮ると、意味はわかりませんが、罵り口調で怒鳴ります。最初に文句をつけられたお姉ちゃんがその日本人の肩を叩き、クルクルパーポーズ。そんなことをされてもおかしくないほど、そのビンスおばさんは粘着質です。
しまいにゃ3人組が語らって、入れ替わり立ち替わり周囲で写真を撮っている人に文句をつけ始めました。まず、誰かが写真を撮ってる人をイヤ〜な感じの目つきで睨みつけ、次に3人でヒソヒソと指を差しながら相談、近い奴が文句をつけます。
こんなことが目の前で繰り返されるものだから、私もだんだんとイライラが募ってきました。その間もKちゃんは熱心に(翌日カメラが電池切れをおこすほど)撮影しまくらちよこだったので、いずれ文句が付くのは必定。
“Kちゃんに文句が付いた瞬間”を、私が介入するタイミングと心に決めました。
が、それはもっと早くやってきました。ビンスは、私を押しのけ、目の前でご相談を開始したのです。しかも2度も。
ブッチーーーン!
もう文句を英語に変えている余裕はありません。とにかく日本語で怒りをぶつけました。
「見えねえよ、コラ! 見えねえっつってんだろ!」
するとビンス、「Any problem?」と憎々しい顔で言いやがりました。
せ、説明しなきゃ。
身振り手振りで相手の仕草を示しつつ、「てめえらがしょっちゅう行き来しやがるから邪魔でしょうがねえんだよ! おとなしくしてやがれ!」と、日本語でですが怒りのニュアンスを極限まで込めて言ってやりました。
すると、さっき毒づいた日本人を指さし、何やら早口でまくし立てます。
何を言ってるんだかサッパリわかりませんが、「Japanese」と「your face off!」だけ聞こえました。「おまえら日本人はツラ見せるな」とか言ってたんでしょうかね。
仕方ないので、「何言ってんだかわかんねえよ毛唐。I come to see Mick Taylor. Not you!」と言うと、それ以降だんまり。
でもまあ、いいや。それからは移動しなくなったし。ビンスのみ、「Can't You Hear Me Knocking?(後半部分のみ)」の最中に姿を消しました。
何しにきたんだ、あのクサレ毛唐。でも、アストリアのリストバンド、巻いてたな……。
ちなみにテイラーはストーンズの曲は(いつもですが)ほとんどやりませんでした。元々カバー曲の「You Gotta Move(アレンジ大幅違い)」と後半だけの「Can't You Hear Me Knocking?」のみです。
でもまあ、単刀直入に言って「Knocking」のソロはロニーよりもずっとうまいことは事実です(笑)。が、バンドがアレでは心からは楽しめませんでしたね。外人との罵り合いもあったし。どうせなら、明日のストーンズにゲストで出て、ロニーと競演なんていいと思うんだけどなあ。
高額ツアーメイトとクラブで飲み続けるT氏(ホテルが近いので終電の心配がないんです)と別れ、我々4人はホテルに帰還しました。明日は何せストーンズですからね! 体力を温存しないと。
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