イギリス人ってのは、もうちょっときめ細かいというか、同じ島国だけにアメリカ人とは違うんだろうと思っていたのですが……。ともあれ、ついにストーンズの母国イギリスに上陸。当サイトも国際的になって参りました。

 ロンドンに行くことは、ワールドツアーの噂が出た頃に決めていました。昨年(2002年)の春頃でしたかね。いくらストーンズとは言え人の子、何が何でも母国の首都には行くはずなので、家族(というか家内)とのコンセンサスも早々に取り付け、その代償としての北海道旅行なんかもこなしながら、ひたすら発売を待ったわけです。
 ブリティッシュ・ロックが好きな人間なら、ロンドンってのは特別な意味を持つ都市ですからね。ストーンズが見られてロンドンに行けるなら、願ってもない話です。
 ツアーの発表と前後して、IORRに「RUMOURED」印付きながら「LONDON」の文字が出た時には、もう臨戦態勢。11月にはオフィシャル・ファンクラブの「プレミアム・インターナショナル・メンバー」になり、その月末にヨーロッパツアーの詳細が発表、12月3日にプリセールが始まったのですぐさま友人に声をかけ、4人揃うのがほぼ確実となった昼休みの時点で、8月29日ウェンブリー・アリーナ公演を限度の4枚購入しました。
 席はA2ブロック9列目の6〜9番。チケットを取り扱うチケットマスターUKのシートオーダーで席を確認すると、何とキース前の好位置じゃありませんか! もうウキウキですよ、そりゃ。それこそ「もう来日しなくてもいいや」まで思いましたもん(笑)。
 インターネットって便利だな〜と、しみじみ思いましたね。
 数度の飲み会を経て、同行者は横アリに同行したメンバー=S氏、Hちゃん、Kちゃんと決まりました。
 今になって悔やまれるのは、8月27日のアストリア(ご存じない方への豆知識:キャパわずか1,600人というクラブです)のチケットが朝の段階では買えたことです。昼にはもう売り切れていたので一週間後の一般発売分に賭けたのですが、瞬時に売り切れてしまい、買うことができませんでした。
 でもまあねえ、ウェンブリーの良席を買うことができたんだから、あんまり高望みするのも贅沢かなと。トゥイッケナム・スタジアム公演も含んだ高額ツアーも組まれてはいるものの、何せ3,450ドルですからね。航空運賃抜きで。

 それからが苦闘の始まりでした。
 確認メールの内容を見ても、郵送されてくるのか現地受け取りなのかわかりません。英語力がないからかと思い、会社にいる英検1級……準1級だったかな?とにかくペラペラの後輩にメールを読んでもらいました。それでも「どっちとも取れる」とのこと。
 思いあまってチケマスUKに「結局どうなの? 俺、どうやってチケット現物もらえばいいの?」とメールしました。
 返事は「昨日送ったから」のみ。
 それではと何日も郵便受けをドキドキしながら開けましたが、届く気配は一切ありません。
 まさか、船便? またメールすると返信は「エアメールです」。
 12月の欧州の郵便事情は、クリスマスカードのために大変な状況になるそうなので、そのせいかとも思ってひたすら待ちました。
 しかし、来ません。
 年末になってもう一度、「来ないよ。ホントに送ったの?」とメールすると、何と「契約内容が確認できないからクレジットカードの明細をFAXしてくれ」とのふざけた返事。
 なななな何だと? ちゃんと確認ナンバーを書いてるのに、確認できねえだと?
 グッとこらえてカードの明細をFAXしましたよ、ええ。
 それでも、返ってくる返事は「Eメールアドレスはこれでいいの?」とかそんなことばかり。だんだんとこちらのメールも怒りを表す文面になってきました。
 しまいにゃ実はチケットを送ってなかったことが2月に入って判明! 怒りを極限まで抑えて、「じゃあいつごろ届くの?」と聞いても「わかんない。特別なチケットだからね」。
 数度のやり取りの後、「ごめんね。ホントにわかんないんです。8月になっても着かなかったらまたメールして」との返信。「わかった」と返信してから2ヵ月、チケットが届いたのは何と4月でした。

 しかし! これで終わりじゃなかったんです。
 よりによって7月の下旬になってから、チケマスUKから手紙が届いているじゃありませんか。その内容たるや、怒髪天を衝くような内容でした。
「あなたに送ったチケット、あれこちらの手違いで間違ったのを送っちゃった。あのチケットは無効だからね。8月4日までに、そのチケットを送り返して。そしたら中旬に正しいのを送るから」
 ……何だそりゃ?
 早速「ふざけんじゃねえ! もうチケット配っちゃったよ。みんな忙しいから、回収なんか今さらできねえよ。だいたい何でおまえらの手違いの埋め合わせを俺がやるんだよ。とっとと正しいチケットを送ってこい!」とメールしました。
 その後、S氏より「怒ってへそ曲げられても損だから、紳士的に行こうよ」と紳士的内容の英文を受領、それをメールで送りました。
 それでも、「とにかく送ってくれないとダメ」の一点張り。やむなく送ったものの、8月中旬も終わろうという頃になっても経っても届きません。
 業を煮やして「まだ来ませんよ! いつ送付予定なの?」とメールしても、返事は「個別のはわかんない。とにかく一刻も早く送るから」という、木で鼻をくくったような返事。
 おまえな、日本企業ならちゃんと個別に調べて予定を教えてくれるぞ! 馬鹿たれ! それでも資本主義発祥の国の企業か! この鬼畜米英! またプリンス・オブ・ウェールズとレパルスを撃沈してやろうか? アメリカと組まないと何もできないくせに! 1対1なら負けねえぞコラ!
 ……と言ってやりたいほど激高しました。

 それでも冷静に、「そろそろ日本を出るからさ、現地で受け取りたいんだけど、どうしたらいい?」と返事したら、「ごめん。調べたらまだ送ってなかった。現地で渡すね」というふざけた返事が。
 ばばばばばばばばば馬鹿野郎! 調べがつくならハナから調べろ! しかも、現地で渡すって、いつどこでどうやって渡すんだよ!
 もはや限界を意識しつつ、「いつ、どこで、何と引き替えにチケットもらうの?」と丁寧にメールしたら、ようやく「当日18時、ウェンブリーのボックスオフィスで渡します。クレジットカードとConfirmation numberを持ってきてね」との返事が来て、やっとこの件に結論が出ました。
 最初に「いつ届くの?」とメールしてから、実に16往復ものメールのやり取りがありました。
 まったく、なんていい加減な奴らなんだろう……。

 とにもかくにも出発当日。万一チケットがないなどのトラブルに備え、証拠書類の類をチケット郵送の領収書に至るまで揃え、準備万端です。長男と次男は実家に預けました。
 朝はあいにくの雨。しかも大雨でした。保育ママさんに長女を預けに行ったものの、飛行機中用のゆるゆるズボンはずぶ濡れになり、急遽着替える羽目に。これは歩いて駅になんかとても行けないと、タクシー会社に電話するも、自宅近辺に車がないとにべもない返事でした。
 ところがまあ、日頃の行いがいいとトクですな。覚悟を決めて家を出ると、何と雨がやんでいるではありませんか! このチャンスを逃さぬよう、そそくさと家を出て成田に向かいました。この日のために貼っておいたベロのでっかいシールつきのスーツケースを引きずって。

 実は今回利用した便では、プレミアム・エコノミー(まあ、エコノミーよりちょっとだけ広い席です)を利用しました。というのも、私は血中にコレステロールや中性脂肪が多く、エコノミークラス症候群のど真ん中にいるような体質なので、家内から「ビジネスクラスで行け。死ぬよりマシでしょ」と言われていたのです。でも、現実にビジネスクラスの金なんか、もちろん出せません。
 そこで折衷案として、プレミアム・エコノミーを使ったわけです。
 結果的に、これは大成功でした。ちょっと高いですけど。
 その威力は、いきなり成田で発揮されました。エコノミーのチェックインカウンターを素通りして、専用のカウンターに行く時の気持ちよさ!
 きききききき気持ちいい! 95年の東京ドームで、わざわざスタンドからアリーナに降りた時と同質の快感が私を貫きましたね。ああ、気持ちいい。
 しかも、ビジネスクラスのラウンジを利用できるというではありませんか。事前に知らなかったのでうれしさ倍増です。未知の世界、ビジネスクラスのラウンジ。ドキドキしながらドアを入って利用券を渡すと、馬鹿丁寧な態度で案内されます。
 中では飲み放題食い放題(大したものはないけど)。しかも、喫煙区画ではタバコも吸えるんです。
 滑走路が見えるラウンジでウーロン茶を飲んでタバコを吸いながら、しみじみと喜びを噛みしめました。でも、これはフツーにビジネスクラスを使える人には味わえない喜びなんでしょう。平民ならではのささやかな喜びです。
 ふと見ると、家族連れなんかもいます。ラウンジ内で普通に行動するガキどもを見て、「おまえらみたいにガキの頃からこのラウンジを使ってる奴らは、この喜びがわかんねえだろうな」と思ったものの、そんなのは奴らにとっては取るに足らないことだと気づき、かえってうら寂しい気持ちに……。

 搭乗はさすがにエコノミーと同じで、別の入口からすんなりというわけにはいきません。席に行ってみると、確かにそれなりにゆったりした席……ん?
 隣の席を見て、息を呑みました。そこにいたのは、半端じゃないデブの白人でした。キングコング・バンディというプロレスラー(故人)によく似た男です。
 そりゃこいつはエコノミーには収まらないでしょう。だって、幅が15cm以上はある中間の肘掛けのこっち側に、腕がはみ出しているのです。
 ホント、こいつは邪魔で邪魔でしょうがない。足を伸ばせる前がスクリーンの席を首尾よく予約したというのに、こいつがでかすぎるので、野郎がトイレに行くたびにかがまないといけないんです。グースカ寝るつもりだったのに、寝られやしねえよ!
 それでも断続的に睡眠を取りつつ、ついにヒースロー空港に着いたのが15時45分。しかし、荷物が手違いで遅れ、受け取ったのは1時間以上も後でした。
 延々と待たされた挙げ句やっと荷物を取ると、取るものも取りあえずまずは外へ! 13時間ぶりくらいの喫煙です。経験のある方はご存知と思いますが、長時間フライト後のタバコは異常に効いて、クラクラするんですよね。
 立て続けに2本吸うと、疲れた体にむち打ち、スーツケースを引きずりながらヒースロー・エクスプレスの駅に急ぎます。15時2分発のヒースロー・エクスプレスに乗りました。ここでiPodを取り出し、当然「Silver Train」を聴きましたよ。一路ロンドン中心部へと急ぐ列車の中で聴くと、これまた格別なんだわ。

 パディントンの駅に着き、徒歩で宿泊先を目指します。某ヒルトンのホテルに着いたのは、もう5時半を回る頃でした。
 町を歩いていると、けっこう歩きタバコしてる奴がいるのに、スゲエ安心しました。アメリカのように喫煙者が迫害される社会ではなさそうです。
 ロビーに着くと、既に到着していたKちゃんHちゃんが待っていてくれました。急ぎチェックインしていると、前日入りしたS氏も来ました。ちょっと私が休憩したら、早速行動開始です。

部屋から見える壁
どう考えても、ロンドンで見たい風景じゃないでしょ。
 私とS氏の泊まる部屋は、何と1階(日本で言うと2階)。こんな風景(左写真参照)を窓外に見ていると、ホテルでゆっくりする気にはなれません。
 いずれにせよ、本日のテーマはアストリアに潜り込むことができるかどうか。何しろダフ屋対策のために、多めの現金を用意してあります。
“ブラウン・シュガー”
ちなみに部屋にあった“ブラウン・シュガー”です。
 S氏は早々にアストリアをあきらめ、(ファンでもないくせに)サッカーを見に行くというので、残る3人でアストリアに行くことに。何でもダフ屋が「チケットを300ポンド(時価60,000円弱)で買う」と言っていたというのです。ということは、売る時は600ポンドか……
 S氏のすすめで、切符はゾーン1,2のフリー切符を買い、最寄りのEdgware Road駅(Kちゃん曰く「“江戸川ロード”ってネタを狙ったのかと思った」とのこと。もちろんそんなことはありません)よりTottenhum Court Road駅を目指しました。
アストリア前
ここでストーンズを見るなんて、こんな贅沢なことが……。
360度どこをみてもこの人出でした。
ちなみに右下の表示でわかるように、日本は既に深夜2時38分。

(撮影:Kちゃん)

アストリアのストーンズ看板
確かに書いてあります。「THE ROLLING STONES」。

(撮影:Kちゃん)

 地上に出てみると、そりゃもうすげえことになってました。何百人いるんだろう? 凄い数の人がアストリアを取り巻いています。日本人もチラホラ……というか、世界中のコアなファンが集まっているようです。
 厚紙のポスターがそこら中の電柱やら街灯やらを挟み込む形で貼られていますし、上を見上げるとマゼンタ3連ベロの旗がいくつかさがっています。
 一瞬かっぱらおうかとも思いましたが、群衆の数に応じた警官もいますので、断念しました。
 しかし見てくださいよ。こ〜んな小さなハコでストーンズが見られるなんて、何て贅沢でしょう。

 大阪ドームで私のベロ扇子を振り、ユニオンジャック男から託された英国旗を羽織ったまま電車に乗ったT氏はストーンズの3,450ドルの高額ツアーで、3/15ドームの後いっしょに飲みに行ったY氏はお友達が取ってくれたチケットで、それぞれこの贅沢な空間の中にいます。
 後で聞いた話だと、T氏は(飲んべえなのに)昼にビールを少し飲んだ後は一切の飲食を絶ち、3時から並んでアストリア入りした挙げ句、キース前の最前をゲット。そこから一歩も動かず、割り込みのオファーをすべて言下に断り続けたとのこと。素晴らしい執念です。
 更にめでたいことに、ロニーが彼を(大阪の最前で見ていて、ロニーの気に入ったボードを掲げていたので)覚えていて、「おまえ、オーサカにいただろ!」と言い、わざわざピックを指名投げしてくれたそうです。
 T氏を襲撃してチケットを奪う計画を立てていたのに、3時に会場入りしていてたのでは、その頃私はせいぜいドーバー海峡じゃん。
 そのT氏から教わった「Please sell me a spare ticket!」というフレーズをB4判に印刷した紙を持っていったので一応出してみましたが、まわりの外人の反応は何だか苦笑い混じりの反応です。
 ダフ屋を見ても、「Any ticket?」と聞いてくる奴はいても、「あるよ」系の奴がいません。よくよく周囲を見ると、チケット保有者の証であるリストバンドをしている人はほとんどいません。
 状況からして、あきらめるほかなさそうです。

 我々はしばらく場の雰囲気を楽しんだ後、その場を辞してホテルに戻りました……が、部屋には戻らず、バーで飲み始めました(笑)。
 だんだん酒が進んでくると、単なる飲み会とノリが同じになってくるからアラ不思議。サッカーも結局断念したS氏が帰ってくると、結局4人合流し、飲んでその日は終了しました。
 何だか新宿あたりでちょくちょく見られる状況とさほど変わりありません。ロンドンにいる気がしなくなってきたな(笑)。

私とあなたとストーンズ私とストーンズ > 第16話

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