私とあなたとストーンズ私とストーンズ > 第14話
ついにたどり着いた東京ドームのA9ブロック。13年かかってたどりついたブロックです。ここから見たストーンズは、下血するかと思うくらいとんでもないバンドでした……

 今回は気をつけましたよ、ホワイトデー。何せその翌日に東京ドームでしょ。そっちに意識がほとんど行っていたので、忘れちゃったら大変だと思って。
 それでも、14日の朝には思いっきり忘れ、マンションの駐輪場でチャリの鍵を外した時に思い出して事なきを得ましたけど、ここで忘れてたら大変なことです。
 ま、意識は常に次回のライブに飛んでるのが正しいストーンズファンというものです。

 2003年3月15日土曜日・東京ドーム。この日もオフィシャルファンクラブで取ったチケットで行きました。
 いやあ、ついに夢のA9ブロックで見る日がやって来ましたよ。日本FC会員でも取り巻きでもなく、業界にコネもない私が、年間95ドルの会費およびオフィシャルサイトに張り付いた労力そして友人のたいへんな協力と引き替えに手に入れた席です。非常に感慨深いものがありました。
 武道館はその場にいられるだけで感動も味わいました。でも、私にとってはドームでいい席にいられるというのは、特別な感動があるんです。だって03年3月10日まで、国内ではストーンズはドームと名の付くところでしかやったことがないんですから。ドーム=ストーンズなんです。

東京ドームの席ここにいました
 苦節20年、初来日から13年。ようやくここにたどり着きました。魂を売りさえすれば、ここにたどり着くまでこんなにかからなかったかも知れません。しかし、一ファンとしての節度を守り通して来たので、ここまでの年月が必要だったわけです。その分、フツーにA9が取れる人よりも俺の方が感激は強いはずですから、いいんですけどね、これで。
 ちなみに、こないだうちの区内の某映画館に行ったら、小さいとこなのでA9ブロックよりも席が少ないことに気づいて驚いたもんです。すげえな、この映画館。どこで見てもA9だよ。
 そう言えば、今回も会費8,000円の某組織が正価13,200円のチケットを2〜5万もの値段をつけて販売し、問題になったようですね。その上、当日になってチケットが受け取るまで席がわからず、しまいにゃ席がいい人と悪い人がいたってんですから。この件はデリケートなのでこれ以上は突っ込みませんが、年間95ドルで4枚まですげえいい席の取れるオフィシャルFCに比べて、ずいぶん不経済ですねと言っておきましょう。

 当日は降って湧いたいいことがあったので、早めにうちを出ました。入り待ちこそしなかったものの4時にはドームに。仲間内や遠方から来た方々と会い、手製のタトゥーシールを配ったりして楽しい時を過ごし、用事を済ませた後、いよいよ席に向かいました。
 ち、近い。すんげえ近い。でもチャーリーのドラムセットはギリギリ見えるレベルです。ステージの高さは2.5メートルはありそうなので、最前だとチャーリーは頭しか見えないかも。振り返ると、いやはやとてつもない人の量です。既にピカベロの電源を入れてピカピカさせてる人もかなりいます。
 ふと見ると数列前に友人たちの姿が。彼らは私よりも一瞬早くオフィシャルFCでゲットしたので、やや前が取れたようです。さらに前方にユニオンジャック男Tくんの姿が見えます。彼は大阪20日以外は全部行っているので、マントのようにユニオンジャックを羽織った男の姿を見た方も多いことでしょう。ちなみに彼はその後私の恩人となる運命にあるのですが、この時は思いもよりませんでした。
 やはりオフィシャルFC割り当てチケの集中しているブロックだからか、アリーナ前方にもかかわらず、ちゃんとファンが多くて気分がよかったですね。これまでの感じだと、アリーナ前方というのはゲーノージンとかがコネで入るような場所でしたから、盛り上がりに欠けることおびただしいわけです。
 しかし今回はコアなファンが集まった感じがあり、“本当に見たい人がいい席で見る”という原則が守られているようで、居心地の良さはかなりのもんでした。友人・知人をみつけ、手を振り合ったりなんかすると楽しいんだ、これが。

Licksステージ もはやストーンズの芸のひとつと化した巨大ステージも健在。今回は“建造物”感はやや薄らいだんですが、スクリーンの芸が非常に細かいものです。4枚のパネルをうまいこと使った仕組みになっており、後ろ側からグイーンと現れるのですが、間を空けて4人を別々に映したり、くっついて1枚のスクリーンになったりと、いちいち多芸です。
 スクリーンの仕組みそのものは、武道館でも横アリでもいっしょでしたが、その巨大さが違います。ここまで来ると、もはや次は相当凝らないといけないんじゃないかな。いったいどんなのが用意されるんでしょう。

 やっぱりこの日も開演が遅れます。でも実は個人的にはけっこう余裕ぶっこいてました。もう2日分見てるわけだし、この日は何しろ楽しもうという気分で、相当気持ちに余裕がありました。“スタジアムのショウは楽しむもの”という印象もありましたし。

 しかし、やっぱダメですな。例の“心拍音”が聞こえてくると、もう興奮状態。5弦ギターを抱えて飛び出したキースが「Brown Sugar」を弾き始めたら、余裕なんか消え去りましたね。スクリーンもナシ、サポートメンバーも最小限の構成です。生のストーンズを激烈に見せてくれる編成と曲目と演奏でしたね。
 確かに武道館もよかった。横アリもよかった。すんごくよかったです。
 でもね、やっぱりドームはドームでホントに凄かったんです。5万人を圧倒し去ろうとして演奏してるわけですから、とにかく気合いの種類が違うんですよ。2階席の後ろなんて、ステージから100数十メートルの彼方でしょ? そこまで届くような演奏ですから、目の前にいりゃあそりゃ圧倒されますよ。
 “バンド”なんて世界中に天文学的な数があるはずです。その頂点に立つバンドがストーンズであることは、疑いないですね。こちとら若くないってのに、1曲目から「Yeah! Yeah! Yeah! Hoooo!」をやらされて、もう準備OKです。これから先、何が出てきても即刻ノリノリだわ、こりゃ。
 とにかく休むところがない。これまではストーンズですらこっちが息を抜ける曲ってのがあったんですよ。あえて曲名は挙げませんが、「Angie」とか「Miss You」とか「Angie」とか「Miss You」とか。でも今回は息つく暇もありません。しつこいようですが、これが60目前のじいさんバンドとはとても思えません。
 前半戦で「Rocks Off」だの「Can't You Hear Me Kocking」なんかが飛び出す勢いで、いやはやこれで乗れなきゃ猿と一緒。いや、猿でも乗れるというほどの破格の演奏でした。
 そう言えばこの日に気づいたんですが、「You Got Me Rocking」は「Hey! Hey!」の回数が変わりましたよね。前は1コーラス目で3回、2コーラス目で6回だったのが、2コーラス目が4回になってました。毎回そうかはわかんないけど、ちょっとだけ気になりました。3回・6回なんて変則的なコーラス回数をサラッとこなすのが好きだったんで。
 早くも前半にこのサイトの親サイトのタイトルをちょうだいした「You Can't Always Get What You Want」が演奏されました。サンバーストの古いテレキャスターの5フレットにカポをつけたキースがイントロを以前に比べてタメを作らずに弾きます。
 この曲の途中でミックが「You Can't」まで歌ってから観客が「Always」以降を歌うというコール&レスポンスのお約束があるのですが、後輩H君(新婚)が言うには「最初の時に、俺らがいたあたりでミックが歌ってすぐに反応したのは俺とtadaさんだけだったんスよ。ミックがその時『Pretty good』って言ったのは、あれ絶対俺らに言ったんですよ」とのことです。……5万人いる中で俺たちだけってこともないんだろうけど、H君はそう言い張って譲りません。まあ、思い出のできかたは人それぞれなので、あえて異を唱えることはしませんが。

 例によって同行したS氏はベロざぶとん(ただしかさばるのでこの日は1枚だけ)、私は特製40周年記念扇子を振って声援していたのですが、ベロざぶとんの目立ち具合がよく、何とスクリーンに映ることができました
 15日にドームに行かれた皆様、記憶のよろしい方ならベロのざぶとんと妙な扇子が2度ほど映されたのを覚えておいでだと思いますが、あれ、私たちです(笑)。あのスクリーンに一度は映りたいと思っていたので、半分本気で感無量でした。
 でもユニオンジャック男・T君はもっと上を行きましたね。
「バンッドヲ〜、ショウカイシマ〜ス」のところで、“I love Lisa”(ちなみにloveはハートマーク)のボードを上げていた彼は、ピンで画面に大写し。彼の知人が同じブロックに少なくとも8人はいたので、そこだけやたらと盛り上がり、周囲から怪訝な目で見られました。

 曲は進んでキース・コーナー。
 以前から、渡米組に「Thru and Thru」がよかったと聞かされていたんです。武道館、横アリと「Slipping Away」でしたから、今日こそは……と思ったんですが、この日もキースは気持ちよさそうにギターを左脇に立てて「Slipping Away」。
 いや、別に文句言ってるわけじゃないんですよ。ないんですけど……何も3回連続でやんなくてもいいじゃんねえ。前回の来日の時みたいに「All About You」をやってくれなんて贅沢を言ってるわけじゃないんだからさ。

 さあ、「Sympathy For The Devil」が終わり、いよいよBステ行きの時間です。通路に隣接のA9ブロックですが、その通路側から離れた方にいるので、通路まで押し寄せることは困難だと覚悟はしてました。
 おっ、来た来た!
 観客は一斉に通路に押し寄せます。私たちも当然駆け寄ったんですが、ちょっと届きませんでした。椅子の上ががら空きだったので、同行者Hちゃんが女忍者(と書いてくのいち)なみに身軽に(靴を脱いで)椅子に乗ってサササッと近づいたんですが、メンバーにタッチするには至らず。
 でも、すげえ至近距離でメンバーを見ることができたので、満足ではありましたね。

 さて、Bステでの3曲です。率直な感想としては、「遠かった」です(笑)。98年の時も味わいましたが、真ん中に行かれちゃうとアリーナ後方同然なんですな、前の方の席は。
 でもまあ、たった3曲のことですから、我慢しなきゃね。この日の「Little Red Rooster」と「Midnight Rambler」は、強烈な出来でした。
 ホント凄いわ。会場のスケールに応じてやることも凄くなりやんの。
 Bステからメインステージに、「Gimme Shelter」のイントロが打ち込みで流れる中のご帰還です。この時もタッチには失敗しました。途中でほんまもんの楽器がイントロを引き継ぐのですが、ストーンズのお家芸“Gimme Shelterのイントロでずっこける(ほとんどキースかチャーリーのせい)”が見られる可能性が少なくなるのがちょっと悲しいです。
 この「Gimme Shelter」にはもういっこ見所があります。途中でリサ・フィッシャーが(オリジナルでメリー・クレイトンが歌っている部分を)Raaaaaape, Murdeeeeeeer♪と歌うところがあるんですが、そこが結構な迫力で聞かせます。
 いやいや、見所はその後なんです。ミックのボーカルが、リサの出番の後に目に見えて気合いが入るんですよ、リサに対する対抗意識で。とくに2人でデュエットする時の気合いたるやたいへんなもんでした。
 いやあ、おもしろいなあ、バンドって。ストーンズだって生身の人間がやってるバンドなんだもんねえ。

 ここからは、もう大ヒットパレード連発です。この日はエンディングやなんかで少々ずっこけたりもしてたんですが、もう後はストーンズは目ぇつぶってもできる曲ばかり。とにかく全員ノリノリです。このへんの曲は、恐らく記憶喪失になっても楽器持たせりゃ演奏できるに違いありません。
 しまいにゃキースが「Jumpin' Jack Flash」で上半身裸に! もう会場は大爆発状態です。思わず「Undercover」のおまけポスターでの破れTシャツのキースを思い出しました。当時と比べても、腹のだぶつきはありません。もっとも、当時からおっさんっぽい体ではあったんですが。でもそれ以来20年近く変わらないってのはたいしたもんですよ。腹毛も健在でした。
 一度引っ込んでからアンコールでの登場までも短時間で、勢いよくそのまま「Satisfaction」になだれ込みます。
 何千回と聞いているこの曲も、毎回ちょっとずつ違うので、結局ノリノリでした。本当にいいものは、飽きが来ないもんなんですよね。“マンネリ”なんてものが存在するのは並みのバンドの話で、少なくともストーンズにはあてはまらない言葉です。

 終演後、さすがにグッタリ疲れました。余韻と疲れで、規制退場させられるまでもなく、しばらくその場にたたずむほかありません。
 前方を見ると、T君がユニオンジャックを羽織ったまま、一番前まで行ってステージを呆然と見つめています。かなり長時間でした。気持ちは凄くわかりますけど、先にやられちゃうと同じことはしづらくて(笑)、席からステージをながめました。
 ふと見ると、ステージ上からスタッフとおぼしき男女が、客席に向けてビデオを回しています。何だろう、あれは? ウェブ用の素材なのかな。我々が扇子とベロクッションを振ると、スタッフは手を振ってからしばらく映してくれました。
 あのビデオ、メンバーは……見ねえだろうな。

 ドームを出たら、10人くらいで連れ立って、例の“必ず入れる飲み屋”に行って、楽しく飲みました。同席したY氏 from 札幌の、高校の時に海外まで見に行った話や、今よりも遙かに安かったロニーの絵を買った時の話などで盛り上がり、客がほかにいなくなるまで飲みました。
 後輩H君(新婚)は、何を思ったか店のオバチャンに「コンバン、ドウ?」とミックのまねで話しかけ、赤面させる始末。今の姿を嫁に見せたら何というかね、H君。
 最高の席で最高のライブ、締めに最高の打ち上げ。本当にいい日でした。
 しかし……

この日の曲目はこちら

戻る 次へ
PowerBook日記どこでもドア奇譚