73年に中止された日本武道館公演=幻の初来日。その時の約束を果たすため、ストーンズがついに武道館のステージへ。観衆、何とわずか8,000人! 日本のミュージシャンの目標のひとつ、武道館は、何と“シアター”扱いだった!

 6枚のチケットがようやく揃い、バンバン買いすぎて余ったチケットも引き取られ、後は来日を待つばかりの日々は、至福の毎日でしたね。毎日毎日ワクワクしてました。仕事には少々差し支えがあったようですが、まあ、少々です。
 何せ今回の席は、6枚中5枚までがアリーナ!(正確には横アリは“センター”ですが)
 こんなにすげえ状態でストーンズを迎えるなんて、初めての経験ですからね。そりゃ興奮もしますよ。友人たちの絶大な協力と連携のおかげで、何らコネに頼ることなく、これだけいい席が揃いました。
 しかも、ほとんどの仲間が少なくとも1回はいい席を取ることができました。本当に見たい人間にいい席が行けるというのは心底嬉しいことです。

武道館の席ここにいました
 さて、3月10日月曜日、その日が遂にやって来ました。ストーンズ4度目の日本公演の初日。しかも会場は日本武道館です。
 結構な努力と出費の結果、この日のプラチナチケットを手に入れました。SS席4枚、それもCブロックの17列というかなりの良席です。ええ、自慢です。いいじゃない、自慢したって。その分努力したもん。
 しかも、今回のツアーの3つのカテゴリー=スタジアム、アリーナ、シアターのうち、武道館はなぜか“シアター”の扱い。実際、会場には普通なら設置される“Bステージ”(客席の真ん中に作られる島のようなステージ)がありません。

 武道館を直後に控えた7日の夜から実は風邪をひき、しかも翌日からの土日は日光鬼怒川方面にお出かけ(ストーンズの前日に“日光猿軍団”を前から3列目で見ました)というハードスケジュールでした。
 土曜はまだ調子が良かったのですが、日曜の夜から風邪がぶり返し、帰宅後は寝込む始末。こんなんで大丈夫なんだろうか?
 それでも早めに就寝したのがよかったようで、当日の朝は何とかさほどひどくない状態で目覚めることができました。しかし、実感が湧きません。ホントに今日、ストーンズが武道館でやるんだろうか。

 とにかくいつものように会社に向かいました。通勤電車の中でストーンズを聴いていると、だんだんと実感が形になってきます。勤務先の最寄り駅を出る頃には、かなり緊張してきました。ほほほほほホントに今日なんだ。
 午前中、怒濤のように仕事を片づけます。午後半休をあらかじめ取っていたので、済ませることは午前中に済ませないとね。昼休みにメシを食い、午後1時頃までは会社にいようと思ったものの、今日いっしょに見る酒とブルースをこよなく愛する新婚のH君がとっとと帰ってしまうと、どうも落ち着きません。
 いいや、帰っちゃえ。実際1時までいたって、15分やそこらしか実働時間がないんだから。
「1時までいようと思ったけど、やめた。帰るわ」と宣言して会社を出ました。

 せっかくの半休ですから、この機にできることをやってしまおうと、ホワイトデーの買い物を済ませ、無地の扇子(次回詳述)を2本買ってから帰宅しました。帰宅してからはベビーシッターの振り込みやら何やらを済ませていると、友人から電話。何と早めに武道館まで行っていた彼は、メンバーの会場入りに遭遇したとのこと。しかもリハが漏れ聞こえてくるのも聴いたとのこと。
 ……もっと早く現地入りした方がよかったなあ……。
 それでもせっせと風呂の掃除を済ませ、LAステープルズ・センターでのフリーコンサートで売られていた限定Tシャツ(チケットもナシにいきなり現地に乗り込んだ勇敢な友達のおみやげ)と、オフィシャルファンクラブの半額セールで買ったベロつきコートに着替えてから家を出たのはもう4時でした。

 九段下のコンビニで栄養剤を買い、とにかく風邪っぽさを払拭しようと一気飲みした後、武道館に向かいました。
 しかしまあ、さすがにダフ屋の皆さんが本気です。まだ開演までは2時間以上あるというのに、すんごい人数のダッフィーが本気で商売しています。九段下の駅には運悪くチケットを買えなかった会社員らしき人が「チケットを譲ってください」という看板を持っていたとか。何だかえらい騒ぎになっています。
 友人と連絡を取ると、武道館前の食堂小屋に集合しているとのこと。門をくぐって一路食堂を目指すと、グッズ売り場はものすごい行列です。今日はグッズはいいや……と思っていると、武道館のはずれにもうひとつの売り場が。こちらはさほど込んでいません。
 そこにいた別の友人に声をかけると、そこが武道館限定グッズの売り場だということを教えてくれました。とりあえず武道館Tシャツとプログラムとベースボールキャップを買ったのですが、このプログラムっつうのがアメリカのパンフと同じもの。全部英語表記です。ただし、広告だけが日本企業ギミーシェルターとかマグナムドライとか)になっていました。何だよ、それ。持ってるよ、この内容なら。

 食堂小屋に入って友人と合流。するとまあ、知り合いがいるわいるわ。そこに私の後輩やら何やらがガンガン来るので、挨拶に忙しくてゆっくり話もできません。メーリングリストに入ったりしてストーンズファンの友人知人が増えていたのは当然自覚してましたけど、こうやって一気に同じ場所に集まってみると、感慨深いものがあります。昔は同行の仲間内しか知り合いなんかいなかったのに。まあ、その“仲間内”が広がっただけかも知れないけど。
 ふと思ったんですが、日本でのストーンズの売上の3割くらいは武道館に集まった連中が支えてるような気がしました。みんな、金をバンバン使って何度も見に行ったり、同じCDのマスター違いを買いまくったりしてるしなあ……。
 よりによってその小屋は禁煙なので、外でブルブル震えてタバコを吸いながら、開場を待ちました。そうしている間にも、次々とやってくる知人と挨拶。いやあ、変わったもんだなあ……。

 開場してしばらくは入口の混雑が激しいので入場を見送り、ある程度すいてきたのを見計らって、ついに武道館の中へ。万が一にもチケットをなくさないように首にかけていたチケットホルダーからチケットを出し、悠々と入りました。
 チケットそのものが取れなかった人が多いというのにホントに申し訳ないんだけど、スタンドへの階段が混雑しているのを尻目に、がら空きのアリーナ入口に降りていく快感ったらなかったね! 飛行機でファーストクラスとかに乗る時も、こんな感じなのかな。まあ、努力したのでご勘弁を。
 とりあえずタバコを2本ばかり灰にして、念入りにションベンを絞り出しました。
 それにしても、“ストーンズになろうとして失敗している人たち”が多くて笑えました。服装や髪型だけでなく、態度とかもキースみたいにしようとしてんのね。おまえはキースじゃなくておまえだっての。
 何度もチケットを確認されつつ席に至る過程で、さっき一度別行動になった友人たちと合流。しばし席の良さを語り合っている間にも、ちょこちょこと友人や知人と会います。しかし、みんながんばってアリーナを手に入れたんだなあ……。

 有名な方々もチラホラと見えました。どうでもいいや。おまえらを見に来た訳じゃねえからな。ただ、それでも目をひいたのがプロレスラーの高山善廣。02年の大晦日の「イノキ・ボンバイエ」でボブ・サップと戦った奴といえば覚えている人も多いでしょう。190センチを超える巨体を揺すって、長身の女性と一緒に現れました。
 けっこう前の方に席があるようです。……せっかくのグッドシートなのに、あんなのが前にいたら泣くしかないだろうなあ……。

 ところが、開演時間を過ぎてもなかなか始まる気配がありません。観客は期待が燃え上がって爆発寸前ですから、BGMに興奮してほとんどの人が立ち上がっています。まあ、実は私もですが。コアなストーンズファンなら馴染みのあるブルースやR&Bが次々にかかるので、「モナ」がかかった日には手拍子まで起きる始末。
 コアなファンばかりの1万人。これもまた凄いもんがありますね。
 同行の友人との会話は「1曲目は何か」が中心です。「もうレアなら何でもいい。『ウェストコーストの宣伝屋』でもいい」「『ウィンター』でもいいな」という調子です。
 それにしても遅えなあ。
 私はもう緊張のピーク。緊張するとおしっこしたくなるのが人間の常というもので、だんだんと尿意を覚えてきます。でも、ションベンしにいってる間に始まられたら、目も当てられません。
 そんな緊張を覚えつつも、これまで巨大なステージを10回見ているからか、目の前のちっちゃいステージにストーンズが出てくるという実感が湧きません。これまでのストーンズのステージっつったら“建物”でしたからね。

 かれこれ予定時刻を40分も過ぎようかという頃、ようやく今回のツアーの開始の合図“心拍音”が聞こえてきました。ほどなく場内暗転。

 きききき来た!
 ステージに現れたのは、正真正銘のストーンズでした。うわ、ホントにいるよ。
 キースが、「Jumpin' Jack Flash」のイントロをガッガーと弾き始めました。正直に言って最初は「ああ、レアな曲はやってくんなかった」と一瞬思いました。でも、それも一瞬。すぐにその演奏の凄さに圧倒されまくり。
 ストーンズの4人とベースのダリル・ジョーンズ、キーボードのチャック・リヴェールだけでの演奏は荒々しく、アクロバティックなことは一切やらないんだけどとにかく全員気合いが入りまくっています。
 間違いない。今、目の前にいるのは、過去に見た中で最高のストーンズです。
 来日前は「最後の来日かも……」なーんて思ってましたけど、「まだ来るな」と思いました。60目前でこのテンション! 人間の向上する力というのは凄いもんです。勉強になりました。

 90年代の名曲「You Got Me Rockin'」、おやじファン随喜の涙の「Live With Me」と続いた後の4曲目、通常なら新曲「Don't Stop」です。ここでミックがテレキャスター2フレットカポというキースと同じスタイルのギターで歌う姿をビデオで見ています。しかし……ミックの肩にかけられたのは生ギターでした。
 ん?
 ここで見事にやられました「Let It Bleed」です。
 この後の曲目はセットリストを見ていただくとして、ツボにはまる曲の連続。「No Expectations」は今思い出してもジ〜ンと来る演奏でしたし、「Warried About You」をやっただけでも驚きなのに、ミックの見事な歌いっぷりに心底しびれました。
 キースのコーナーが終わり、「Start Me Up」「It's Only Rock'n Roll」と続いたので「ここからはヒットパレードかと思いきや、「Rock Me Baby」。見事に、しかも微妙に裏をかいてきます。

 ミックの歌は全開でアグレッシブ、キースは時たまずっこけながらも楽しそう、チャーリーは過去最高にタイトですし、ロニーも八面六臂の大活躍!
 ロニー、今まで大変だったろう。よく28年もの下積みに耐えたもんだよ。ラップスチールをクルクル回りながら弾く姿に、目頭が熱くなりました。

 あっという間に19曲が終了。ストーンズの気合い、観客の濃さ、両者の緊張。これが絶妙に配合されて大爆発した、最高のライブでした。
 うまい言葉が見つかりませんが、とにかく最高の時間を過ごしました。一生忘れないでしょうね、これは。
 この程度のことでも、書けるようになるまでは時間がかかりました。最初は不遜にも「毎回翌日までにはアップしよう」なんて思ってたんですが、やっぱあれだけのものを見せられると、そうそう文章になんかできませんね。

 90年の初来日で装飾過多のパッケージショウをやってしまった後、95年で見事に復活、98年には円熟した感じが強く(しかも客入り悪し)、「ストーンズもこうやって落ち着いていくのかな」と満足しつつも思っていました。
 しかし、奴らはタダモンじゃありません(そりゃそうだけど)。よもやここまで調子を上げているとはねえ。過去最高のストーンズ、確かに見ました。

 終演後、高校の時の友達と武道館前でバッタリ。初来日の初日をいっしょに行った奴らです。奴らも全公演に行くとのこと。お互いに「馬鹿な奴もいたもんだ」と笑いました。
 九段下には飲み屋がろくにないので、飯田橋まで歩き、ダブルH君とキースへのプレゼントにさわれなかったK君、加えて私の友人たちやその兄という訳のわからない混成軍で飲みました。しかし、武道館を出るまでに時間を食ったので、ラストオーダーまでわずか15分。
 頼むだけ頼んで飲むだけ飲み、早めの解散。まあ、大人だから。

 さて、1日置いて横浜に遠征だ!

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