自称☆芝居道楽委員会

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劇団道学先生「ザブザブ波止場」

2008年11月14日(THEATER/TOPS)

この舞台を観てから1週間、私の頭の中では、 りりィ「私は泣いていますベッドの上で♪」がグルグルと回っている。 仕事中に何の脈絡も無く「あなたに会えて幸せだった♪」の歌詞が浮かび、 思わず「あなた」って誰だよ!と現在の自分にツッコミを入れてしまう程である。
いやはや、ミュージカルを観に行ったわけでもないのに、 劇中に使われていた歌がこれほどまでに頭に染み込み、 うっかり歌いだしてしまいそうなくらい繰り返し思い出されるというのは、凄いことだ。 最近観たミュージカルでも、曲を覚えて口ずさむようなことにはなかなか出会わないわけで、 いったいどんだけインパクトあるんだよ、この曲。 りりィの曲もそれだけ素晴らしいということなのだろうが、 芝居そのもの、そして使われていた場面も、あまりにぴったりで素晴らしかったわけだ。

劇団道学先生という劇団の名前は随分前から目にしていて、 なんとなく気になっていたのだがこれまで機会がなくて観ていなかった劇団。 実のところ、道学先生は「どうがく」先生と読むのだと知ったのは、 今回のチケットを買った後だというのだから、我ながらどうかとは思うが。

『ザブザブ波止場』は、再演を重ねている作品とのことでおおいに期待しており、 その期待は全く裏切られず、それどころか多大なる期待の眼差しでもって見つめてもなお、 それをはるかに上回る面白さでこちらに帰ってきた。
1974年、宮崎県の漁港・油津を舞台とした、男達のとことんトホホで、 どこまでもトホホで、愛おしい程にトホホなコメディ。
それにしても、私、普段は恋は盲目のトホホな男の出てくる芝居 (例えば文楽『時雨の炬燵』や オペラ『トリスタンとイゾルデ』等)には 激怒しているんだよね。「アホか、お前!しっかりしろやー!」と胸ぐら掴みかかる勢いで、 ダメダメ男達に激しくダメを出して、「だからこの話は嫌いなんだ!納得イカン!」と 爆発しているのである。 だが、今回の『ザブザブ波止場』は、こんなにもダメ男ばかりが登場しているのに、 私は全く怒りを覚えなかったし、それどころかダメ男に(ほとんど初めて)愛しさすら感じた。 これって、凄いぞ。 というのも、『ザブザブ』のダメ男達は、実際ダメダメのトホホ連中ばかりなのだが、 全く悲観していないのが良いのだな。根拠無しのくせに前向きで、 だからといって何かを取り繕っているわけではなく、「素」がポジティブシンキングの、 根っからそういう連中なのが良いのである。 なんかもー、こいつらはこーだから、しょーがないよねー、という。
熱意だけはあるが無力で空回っていたり、勝手な思い込みで暴走しているダメ男に比べれば、 「俺たちアホだし〜」と開き直って(というか己を正しく認識して)、 あくまで自分流に(つまりトホホ路線で)突き進むその潔さが、 実際の私の生活とは無関係であるから愛おしく観ていられたのだろう、きっと。

漁業組合事務所に入り浸ってギターを弾いている警察官本宮(井之上隆志)を筆頭に、 脳みそを使わず、本能だけで行動しているような警官と漁師と漁師達のドンとスーパーの若旦那と刑事が 突き抜けたお気楽っぷりで、舞台はあれよあれよと言う間にドタバタと転がってゆく。
留守番?で戦艦大和の模型を作っているマグロ漁船漁師田宮(青山勝)のがっつり感。 加藤の船から逃げてきた漁師大下(中野英樹)のヤッってそうな感じ。 「兄貴!」と泣きつつ自分もヤッてた漁師加藤(海堂亙)のどこか軽薄な感じ。 地元スーパーのバカ旦那千葉(草野徹)のペンギンポーズの不思議感。 東京から来た漁師希望の青年岡本(沢井正棋)の浮いてる感。 土佐の漁師で実はゲイの坂本(朝倉伸二)の曲者感。 左遷された?刑事遠藤(斎藤志郎)のTVドラマっぽい胡散臭さ。 油井のドン河宗(福島勝美)の豪快だが陽性な腹黒感。 純情青年南原(山口森広)の暑苦しさ。
どいつも、こいつも、たまらん〜。
男達をドタバタに巻き込む原因となった光子(雨蘭咲木子)の、なんともいえない色っぽさが、 なるほど「昼も夜もかえらない♪」わけだと納得させてくれる。 バツイチ事務員寺原(かんのひとみ)が選んだ相手がバカ旦那だったのには「やられた!」となるし、 それ以上に普通に女の子な事務員緑山(斎藤ナツ子)が暑苦しい南原とデキちゃった婚なのも、 そうなのかよ漁村!と、おもわずツッコミたくなる展開。

というわけで、私にとっての「あなたに会えて幸せだった♪」の「あなた」は、 劇団道学先生と、来年(2009年)3月に閉館するTHEATER/TOPSってことで。

採点:★★★★★

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