開演までに時間があったので、本多劇場の下にあるワンダーランド本屋
ビレッジ・バンガードをうろうろしていたら、
「見てこれー、キモーイ」と朗らかに声をあげるギャルの声が耳に届く。
「あたし、蝶とか蛾とかって、ちょー嫌い!粉とか付くんだよ〜」
「そう、粉! あと、お腹とか縞になってて、ありえないよね」
「顔も、凄いなんか、変じゃん」「そうそう。綺麗とか言ってる人、意味わかんない」
などと楽しげに感想を語り合っていた。
私は基本的に生き物好きで、ことに昆虫の、
哺乳類とは生まれた星が違うとしか思えない姿と形が「萌え」なので、
ギャル達の会話にちょっとしょんぼりしてしまう。
適当に時間をつぶして会場のザ・スズナリに行くと、
階段下で本日の公演のチラシを持った劇団員が観客の案内誘導をしていた。
そのチラシには数羽の蝶(羽根をひろげていたから蛾かも?)が描かれている。
をおおおっつ?先刻耳にした会話は、
芝居への前振りだったのか?! そして芝居が始まってみると、
「最近、蛾が大量発生していて、ベンチに鱗粉がべったり付いていることがあるんですよ」
と言い出すではないか。思いっきり、デジャブー。
ビレッジ・バンガードで蝶の話をしていたギャル、君たち何者?
『短編集のような・・・』とサブタイトルにあるように、
短編集のような、でも通してみればそれで1つの作品。
しかしながら部分的には旧作の焼き直しも入っているらしい。
暖かさと冷たさが隣り合わせになった人間模様が
小さなどんでん返しと伴にするりするりと描かれてゆき、
『ピース』な決意で幕が下りる。
ピースは短編集としてのpieceであり、また平和のpeaceなのだろうね、きっと。
見終わって「いい芝居を見たな」と素直に思える舞台だった。嬉しいことだ。
印象的だったのは2人の女優。
一人は元小学校教師で現在妊娠中の南沢(萩原利映)。
「私はこの子をまず、自分で自分を殺さない子に育てよう。
そして、他の人を殺さない子に育てよう。
できることなら誰かに殺されることもない子に、育てよう」
そんなことは当たり前のことで、心ある親ならば誰もが望むことで、
だからこそ望まずにはおられないこと。
こういう台詞に「そうだよね(ほっこり)」ではなく、
「嗚呼...」と思ってしまう現在の社会って、全く、ふぅ。
一直線の南沢を、結果的には大きく受け止めている不動産会社社長(林和義)の、
懐の大きさには「ふーん。」
この社長、妻子を捨てて愛人と新しい家庭を築くことはしなさそうだね。
もう一人印象的だったのは産後の肥立ちが悪くて(?)
出産後5年で体重激増の妻・弥生(星野園美)。
夫のことを「お父ちゃーん」と呼ぶなど、いかにも下町のオバチャンっぽい
基本的に素直で暖かくて一寸早とちりっぽくて嫉妬もするがカワイらしい、
とはいえドーン!でバーン!な感じ。
嫉妬のあまり携帯電話(折りたたみタイプ)を真っ二つにする場面なんか、
旦那にベタ惚れの様子がにじみ出ていてステキじゃないか。
確かに彼女の容姿は連れ歩いて自慢するには向かないかもしれないが、
妻にしておくには良いと思うんだがなぁ。
どーせ夫が妻の尻に敷かれるなら、こういう「おっかさん」の尻に
敷かれるのが「らしく」って良いと思うぞ。
と、いうわけで内装業の男・智行(中野英樹)はこのまま妻とささやかに暮らしなさい。
出所したばかりで現在内装業で働く男(遠藤隆太)が、もう少しネタにからんでくるかと思ったけれど、
そのまんま脇で終わってしまったのが残念。
不動産営業マン(黒川薫)と元先輩社員で社長の愛人・美佐子(鬼頭典子)の会話、
とくに美佐子の「負け犬」っぽい言動は痛いし、ウザイ。
嫌われるんだろうな、こういう女は、同性に。
車椅子の兄(杉山文雄)、弟・豊(二階堂智)、その妻・郁子(佐藤真弓)の
この3人の立ち位置がいまひとつ掴めず、
よって何故彼らは究極の行動に走ってしまうのか分からなかった。
ん? もしかすると、「人はたいした理由が無くても人を殺せる」
という話なんですか、青木豪さん(脚本・演出)?
そういえば、妻・郁子(佐藤真弓)、あの小ささはどこかで見たことがあると思ったが、
猫のホテル『電界』で紙袋から出てきた人だよね?
あと、本筋とは関係ないが、モデルルームに飾られていたマンションの広告、
あのギラついた油絵風イラストの奇妙さは秀逸ですな。
モデルルームの内装コンセプトとズレている感じもgood。