イッセー尾形の一人芝居コメディー8連発である。
内容としては(順番は正確ではないが)こんな感じ。
・フラダンスの発表会をひかえた広島のお婆ちゃん
・京都の駐車場で接触事故を起こした兄ちゃん
・彼氏&その連れ子と動物園に来た女
・映画好きで感動屋の強面の男
・死語を多用する立体落語
・同僚宅にあがりこんだ男
・幻の魚を待った昔語りをするお爺ちゃん
・日比谷公園でギターをかき鳴らして歌う女
このてんでバラバラな役柄の物語(1つの話は10分から15分位だと思う)を
イッセー尾形が一人、「その役」らしい格好をしてとっかえひっかえして、
一人芝居として繰り広げるのだ。
演技が行われる舞台空間としては4畳半くらいだろうか。
道具としては白い箱(大きさとしては、みかん箱よりちょっと大きいくらい)が1つ。
椅子や台として使うこともあるが、勿論、全く利用しないこともある。
どの話も実に軽妙で面白く、あっという間の2時間。
物語の内容の面白さは勿論なのだが、イッセー尾形の変身ぶりの見事さには改めて舌を巻いた。
役者が役に入り込む前と入り込んでからって、こんなに違うのか!と。
1つの役(物語)が終わると、イッセー尾形は舞台下手の着替えコーナーへ行く。
そこにはコート掛け(ブティックハンガーと言うのか?)に今回使う衣装がずらりとかけてあり、
小さな台にはメイク用品(といっても口紅、黛、髪の毛のジェル程度だが)と鬘が用意してある。
イッセー尾形が前の役から次の役へ衣装とメイクを変える様子は、客席からばっちり見えるのだ。
そして、ここで私が「おおっ!」と思ったのは、役を降りて下手側に来たとたん、
さっき舞台上で演じていた時は「いやー、まさにソレっぽいよね」と思わせていた衣装にメイクが、
「おいおい、それはちょっとアレなんじゃあ・・・」と不安になるような似合わなさになること。
前の役から次の役へ衣装を変えメイクを変えても「うへー、またしてもヤバイのでは?」な
イッセー尾形がそこにいる。男性の役ならそれでもまだ「ふふん」と見ていられるのだが、
女性役となると「ぜってー見えねーよ!キモイぞ、それ」としか思えないのである。
が、それがまた下手の着替え場所から舞台へ移動し、3秒ほどの暗転の後にライトがついた舞台を見ると、
そこには明らかに「うわっ!これは間違いなく@@@っぽい!」と思わせる人物が、そこにいるのだ。
例えばフラダンスのお婆ちゃんだったイッセー尾形は、
その話が終わって下手に移動するほんの数秒でお婆ちゃん役が完全に落ちるのだろう。
そして、着替えている間は(気持ちの中では次の役である「兄ちゃん」に移りつつあっても)
次の役にはまだ入っておらす、イッセー尾形として着替えている。
衣装もメイクも出来上がり、全身の姿見を見て「よし」と舞台へ移動するその時もまだイッセー尾形なのだが、
暗転の3秒の間にイッセー尾形は自動車事故を起こした兄ちゃんに変身しているのである。
舞台に明かりがともったとたん、あまりの「らしさ」に会場がどよめく。
それはつまり、先刻の着替えシーンからは想像できないくらい「らしい人物」がそこにいる驚き。
その3秒で新しい人物を描き、物語の設定を観客に伝え、ぐいぐいと引っ張ってゆく。
そしてその物語が終わると、これまた暗転の3秒で役が落ち役から降りたとたんに完全にイッセー尾形になっている。
役者の変身っぷりを見せつけられた舞台だった。
機会を作って、また、イッセー尾形を見に行こうと思う。