自称☆芝居道楽委員会

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庭劇団ペニノ「苛々する大人の絵本」

2008年4月25日(はこぶね)

初めての庭劇団ペニノ。初めてのタニノクロウ(作・演出)である。

羊「・・・出る? ・・・出る? ・・・出る?」
メスの豚(島田桃依)とメスの羊(瀬口タエコ)が住んでいる家。床から1本、天井から1本、切り株が突き抜けている。 床からの切り株は時折白い汁を出すが、天上からの切り株からは藪医者のせいで?汁が出ない。
羊「あー、粉吹いちゃってるよ、粉・・・。粉ふいちゃってる・・・」

羊「・・・雨の日って、ボート屋は休みなのかなあ?」
豚「だって雨が降って水がたまるんだよ。雨の日はボート屋やってるよ」
羊「そっかー、じゃあ、わたしには無理だな、ボート屋。いいと思ったんだけどなー、ボート屋」

羊「あ、雨漏りしてるー・・・床に穴あいちゃってるよ。・・・あれ?誰か、居る」
豚「貴方はどなたですか?」

さて、この豚と羊の家の床下には、囚われの?受験生(山田伊久磨)が。
まるで『ガリバー旅行記』で小人の国に行き着いたガリバーのように、 受験生は木の根?で捕らわれ、股間に木が直撃し、髪の毛は池に浸り、 天井は鍾乳洞で、彼の周囲を模型の電車が走る。

「はあっつ!」
気合一発、縛りから自由になった受験生は、天井・・・それは豚と羊の家の床にあたるのだが・・・ を突き破り、豚と羊の家の客人となる。
受験生「いつ見てもかわいいなぁ、ミツコは。・・・さあ!勉強、勉強!・・・魅惑のヒップがユラユラ迫る・・・」

部屋に突き出している切り株から、時折出る白い汁。
豚「おかゆにこの汁をたらすと、味に変化が出るのです」
受験生「でも、結局はおかゆでしょ」
涙目になる豚。

山羊?や猪?の剥製が合体したオブジェにかじりつく豚と受験生。
だが、鹿の首の剥製が出てくると、受験生はそれに抱きついて号泣する。
「おかあさーん!おかあさぁぁぁーん!」

豚と羊のもとに、受験生からスルメイカが送られてくる。 まるで千羽鶴のように連なった30枚近いスルメイカ。 (圧倒的なスルメイカの香りが客席に満ちる。)

羊「わたし、ボート屋やろうと思うんだけど、ボート屋。良いと思うんだけどな、ボート屋」
THE END

・・・タニノさーん、クロウさーん・・・。全然、わかんないんですけど。
まぁ、ファンタジーだしね。多少辻褄が合わなくても、展開に無理な飛躍があっても それこそがファンタジーの魅力だし。 そもそも題名が『苛々する』で、「わっかんねーよ」な部分がありますよと警告しているし、 受験生の・・・というか受験生の年代の葛藤らしきものは、もやもやとした『大人の絵本』だしね。 何が何だか分からない、でも、面白い。
見ている間、何度も「タニノクロウさーん」と解説を求めたくなる。 舞台奥に設置された電光掲示板には「第1幕・第1場・・・」の表示が出て、 それはちょっとした助けにはなるが、あくまで「ちょっとした」でしかない。 でも、たとえどんなに分からなくても置き去りにされている感覚は無い。 それどころか、このファンタジーを、このシュールを解明共有したいワクワク感が 膨れ上がってきて、終幕後もそのワクワクが続いた。これは凄いことだ。

「オレ様がやりたいコトを、オレ様が好き勝手にやって楽しんで何が悪い? 付いて来られる人だけ付いて来い。これがオレ様ワールドだ!」 というふうな芝居も世の中にはたくさんある。 オレ様用語が理解できなければ取り残される(私はたいてい取り残される側に回る)寂しい舞台。
今回の芝居も、タニノクロウ・ワールドが炸裂しているのだが、 緻密にファンタジーで濃厚にシュールなその世界は、その深さによって逆に一般化され、 「分からないけど、分かる」面白さになっている。 確かに、やりたいことを好き勝手にやっているのだが、 そのやりたいことを(たぶん採算度外視した)徹底的な道楽路線で突き詰め ぐつぐつに煮込んだことで、どこか普遍化された明瞭な世界になっている。

会場は青山劇場近くの築20年以上?のマンションの一室(たぶん、タニノ氏の所有資産)。 日ごろは事務所兼稽古場として利用しているらしいその一室を 思いっきり改造して、「はこぶね」と称する劇場にしているのだ。
客席部分はたぶん12畳、舞台は3畳くらいだろう。 12畳部分に無理矢理ひな壇を作って客席とし、推定25人の観客がぎゅうぎゅう座り込む。 そして、舞台。なんと、受験生が捕らわれている床下と、豚と羊の床上の2階建。 床下の鍾乳洞?は鉄道模型のジオラマもかくや!の、どえりゃー作りこみ。 ジオラマだけではなく、雨が降ったり、白い汁が出たり、鹿や猪の剥製、おかゆにスルメ・・・。
これでチケット代2,300円也。 ブラボー道楽。

採点:★★★★☆

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