自称☆芝居道楽委員会

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空白に落ちた男

2008年2月9日(ベニサン・ピット)

主演は、アドベンチャーズ・イン・モーションピクチャーズの『SWAN LAKE』でザ・スワンを演じたこともある首藤康之。演出・出演はパフォーマンスシアター「水と油」の小野修二。音楽にはアコーディオンのcoba。
そして箱は、客席数200のベニサン・ピット。

バレエを封じられた首藤は、ラストのソロ場面以外は大きな跳躍や足を高々と振り上げるような動きはしない。だが、バレエで鍛えられた体は、パントマイムとからんでも、コンテンポラリーダンスと一緒になっても、軽々とその世界に入り込み、しなやかに動いてみせる。
梶原暁子がくったりとしなだれかかってきても動じず、そしてふわりと身をかわし、丸山和彰と表裏になるような場面では、鮮やかに一体化する。。藤田桃子が手渡す書類に目を通し、事件を追う刑事になったかと思えば、どういうわけか挙動不審におろおろする小野寺修二をリフトして平然としている。

物語は有るようで、無いようで。分かったような、騙されたような。この舞台は理屈ではなくて、感覚で遊ぶ。見え隠れする物語を頭の隅で追いつつも、舞台上で展開するトンデモな展開に「おおっ!」となる楽しさ。
ホテルの部屋の鍵を受け取ったと思ったら何故か集会所の鍵で、しょうがないから集会所の机の上で寝てみたり。タンスの抽出が階段になったり、突如椅子から崩れ落ちる男の上に机と椅子を積み上げたり。図書館の本棚の間を5人が烈しく動き回ったり、影のようにつきまとう(実際人物の足下に寝転がってその人の影のように動く)女がいたり。スープに垂らすと不味くなる薬と、解毒剤が登場したり。 「水と油」の時にも見た、登場人物達の立ち位置の素早い入れ替わりや、椅子や机の移動による空間移動は、今回も健在。
てんやわんやの展開の中で、首藤はどこか優雅さを残しつつ大きく動き、小野寺はその低い背を活かしてオロオロぶりを発揮。梶原はしなやかに踊り、藤田は不思議なもっさり感で場を作り、丸山がいつの間にか空間を歪める。

「空白に落ちた」美術(松岡泉)がまた、秀逸。床に普通に置かれた家具類の他に、壁から生えたランプや、天井からぶら下がった(でも天井が床ならばそう置かれるべき)ベットなど。良い具合に空間と時間が歪んでいて、なるほど。
cobaの音楽は明るく軽快であって、けれども何処かに闇を孕んでいる。ちょっと音が大きすぎるように思えたのが残念。もう少しスピーカー音を絞った方が音も生きるように思う。

約6週間という長期公演の中で、きっとこの舞台は進化するのだと思う。何度か見ることで別の面白味に気づくこともあるのだろう。
私はこの公演のリピートはしないけれども、リピートしたくなる気持ちは分かるな。

採点:★★★★☆

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