自称☆芝居道楽委員会

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ペンギンプルペイルパイルズ「ゆらめき」

2007年10月28日(吉祥寺シアター)

「久々に職場に行ったら、若いアシスタントに告白されちゃった〜。えへっ。『付き合っている人はいるんですか?』なんて聴いてくるから、『付き合っている人はいないけど、ダンナがいます』って答えたんだ〜。」
って、これって軽く自慢話だけど、基本は笑い話。高宮わたる(坂井真紀)のそんな「今日の報告」から、日常は何故か無駄に混乱してゆく。

わたるの夫・高宮進(戸田昌宏)は、妻のそんな報告を軽く聞き流しているふりをしつつ、実は過去の女のトラウマがあったり。
わたるに告白した江尻(近藤智行)は、江尻の友人で朝比奈(小林高鹿)に強力プッシュされてわたる宅に詫びを入れに来るも、進の店の店員・賢三(吉川純広)に追いかけられ、さらには江尻の友人であり謎の配管工の朝比奈が事態を意図的に混乱させる。
わたるの元同僚で同じマンション5階の住人・塔子(ぼくもとさきこ)は、ぼんやりしたキャラを装いつつ、不必要に不安を煽ってみたり。しかも塔子本人が介護老人の母の幻影に取り付かれているし。
進の友人・仙波(玉置孝匡)は離婚の危機で高宮進&わたる宅に入り浸るが、そもそも危機の原因は仙波の妄想が生み出した娘のせい、のよう。
仙波の妻・実須江(内田慈)はそんな夫・仙波に悪口雑言をぶつけるが、それこそ「でもね、でも反対に愛してくれる人間の悪口だったら言いますよ。『愛してくるせに』っていう言い分がまず立つし…何より効き目が全然違う! 私を愛していて、なおかつ私から愛されたい人間にだけ、悪口がちゃんと悪口として届くんです」という、ひねくれた、しかし的を射た心理。
じゃあ、高宮わたるは正常なのかといえば、「あなたを悪く言っているんじゃない! ただ鎌倉に…あなた以外の思い出が欲しいだけ! 独占しないで、私の中の鎌倉を…!」と鎌倉のお土産である『鳩サブレー』に対して絶叫するってのは…。でもって、自宅(大宮)から湘南新宿ラインで1時間半の鎌倉へ一緒に行こうとしてくれない夫・進に殺意を抱くんだから神経高ぶりすぎ。

コトが収まるべきところに収まる気配はゼロ。強力ドタバタで、何だよソコに突っ込みを入れるのかよ!な展開が繰り広げられて、客席は沸きに沸く。誰かが何かを言うたびに事態は混乱してゆき、だがそうやって日常生活が続いてゆく。
面白いのに、怖い。笑っているのに、切ない。どこかノスタルジーしているのにギャグで、げらげら笑っている頭の片隅で冷静に事態を見つめる目が自分の中にある。

グサグサと心に刺さる台詞がたくさんあったので、終演後に上演台本を購入。嬉しいな、台本を販売してくれるのって。
台本の販売、他の劇団・商業演劇も見習って欲しい。
別にね、本格的な製本なんかしてなくて良いんですよ。今回のPPPPみたいに上演台本をコピーしてビニール袋に入れるだけでも、ホチキス2箇所止めでも、いい。その程度のことならそんな手間かからないし、お金もかからないでしょ。
台本は売れないというのが劇団側の意見なのかもしれないけれど、面白い舞台だったらその台詞を味わいたくて脚本を買うんだよ、売っていれば!
パンフレットに掲載された稽古場の写真とか、役者のインタビューとか興味ない。知りたいとすればプロフィール程度、これまでどんな舞台に出演していたのかってコト。稽古場の写真?インタビュー?それが何なのよ。どんなふうに稽古しようと、その役について役者が何と言おうと、結果は舞台で示さなきゃダメなわけで。演出家がいかに壮大な意図を持って演出していても、舞台でそれが示されて観客に伝わっていなければ、その演出は失敗なワケ。

面白かったら、素晴らしかったら、脚本を読みたいの。今回、脚本を買った、ってのは、そういうコトの現れよ?
コノ台詞をアノ役者があんなふうに言ったから、それで私にはこうつたわったのか!とか。アノ台詞とコノ台詞は、そうか、こう繋がっていたのか。上手いな〜、とか。
文字で読んでも染みるな、この台詞、とか。
倉持裕(作・演出)、あんたはエライ!

猛烈パンチで「わっ」と笑わせた瞬間にガツンと染みこみ舞台だった。あまりに素敵な舞台だったので、見終わった直後は感想の言葉も出なかった。熟成させれば感想レポートが書けるかと思ったけれど、やっぱり文章にならない。参ったな。
あの台詞のときのあの表情がとか、あの場面での××と◎◎の演技がとか、書き出したらきりがないし。印象的な場面だらけだし、じゃあレポートとして書かなかった場面がダメだったのかというと、決してそんなことはないわけで。たぶんどの場面を言われても思い出せるし。

役者全員活きていたよな。ジャムの瓶に喜ぶわたる、ポテトチップス(だったっけ?)をガツ食いする仙波、「本当に悩んでいる人ってのはね、昨日今日悩み始めたわけじゃない…もうとっくにそれが普通になっちゃってて、つまりいつもどおりの顔をしてるもん」の塔子など、印象的な場面・台詞がたくさん。
中でも別格で、とにかく飛びぬけて素晴らしかったのが、高宮進役の戸田昌宏。くっそ〜あんな声で、あんな表情で、あんな態度で「なあ! 貼ってよ!(絆創膏)」って言われたら惚れるじゃないか。

※レポート中に引用した台詞は、ペンギンプルペイルパイルズ第12回公演『ゆらめき』の上演台本(作・倉持裕)より引用いたしました。

採点:★★★★★

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