自称☆芝居道楽委員会

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劇団♪♪ダンダンブエノ「砂利」

2007年7月23日(スパイラルホール)

すいません、私、長らく「本谷有希子」は「ホンタニ・ユキコ」と読むのだと思っていました。TVを見ていれば「芥川賞候補には、モトヤ・ユキコさん…」などと音声から名前を覚えたと思うんですけど、TV見ないしラジオも聞かないし。あ、情報誌も、読まないんで。インタビュー記事があれば、名前の読みがかいてあるんだろうけど…そういう記事に興味ないし。演劇情報誌も、専ら上演情報確認の為に読んでいて、インタビューはほとんど気にしてないからね〜。
そういうわけで、初モトヤ、である。

漠然としたイメージで、本谷有希子の作品は自分には合わないんじゃないかと、思っていた。何しろ公式サイトの説明によると「自意識に絡め取られた妄想過多な人間を主人公に、独特の劇世界を展開」ってんだから、うわ〜つらい、かも〜。
よって、本谷が主宰・脚本の「劇団、本谷有希子」で本谷デビューするのは、私自身にとっても本谷に対しても不幸だろう想像。
そこで見つけたのが本作。主宰?&出演は近藤芳正(『歌わせたい男たち』の拝島先生)、脚本が本谷有希子、演出がペンギンプルペイルパイルズの倉持裕、出演に坂東三津五郎、片桐はいり他。なんじゃこりゃ。この手のごちゃまぜ公演はコケる可能性も大きいんだよな〜と思いつつ、しかしまぁスパイラルホールならコケても痛くあるまい(チケット代6500円は痛いけど)とか考える。で、心が揺らめいた時はチケットを確保するしかないんである。

結論としては、長い2時間だったな、と。
中身が空っぽの人間が、己の空洞を埋めようとするあまり他人の感情をそのまま取り込み、ふくらませた妄想を支えに生きていく話。…なのだろう。その着眼点はOKだし、途中までの展開もOK。
だが、しかし、何故主人公蓮見田(坂東三津五郎)の中身が空っぽなのか(空っぽになったのか)という説明が全くなく、理由を想像させることは何も語られず。そういう人がいました、っていう前提で話を進めれられてもねぇ〜、私、本谷じゃないんで。無根拠に妄想できないし。そもそも、蓮見田本人に「空っぽだから」って言わせちゃあダメでしょ。
蓮見田に何があったのか。蓮見田弟(近藤芳正)が何故あれほどまでに兄に献身的なのか。蓮見田の内縁の妻である有里(田中美里)が、蓮見田と一緒になって彼の妄想に付き合う(というか信じている)のは何故か。それが全く見えない。想像するためのキッカケが与えられないから、台詞を受け入れるしかないわけで、でもそれじゃあ芝居としてつまらない。

え?他の観客達は、何故蓮見田がああなのか、分かったの?分かってないのは私だけ?あ、もしかして、空っぽ病は最近の流行だったりするわけ?だとしたら…分からなくてもいいや。
脚本が悪いのか、演出が下手なのか、役者が不味いのか。どうも、わからん。
わからんが、しかし、三津五郎演じる蓮見田が、どうして・何がきっかけでそうなっちゃったのかが分からん。父の死後というのは分かるし、介護してきた亡父に「お前は空っぽだ」と罵倒されつづけたことも分かるが、そうすると何で空っぽになるんだ?
他にも、姉に切り込みに来られた時の有里の「ごめんね」発言の意味がわからないし、何で蓮見田は最後フツーの人に戻ったのかも全く分からない。だから、何がどうなってアノ終幕なのかが全く理解出来ない。
終わりの方の暗転3回くらい、「あ〜、ココで終わりなのかな〜?」って気持ちになり、ライトがついて「まだ続けるのかよ」って思ったのは事実。

勿論、面白い要素もあった。
歌舞伎役者の臭いを完全に消した三津五郎の、不思議な浮き加減。それは、根本的なところで世間一般から外れている御曹司系歌舞伎役者という存在をやっている三津五郎が、ぽつんと小劇場に現れた不思議感とあわさった面白さでもある。そりゃあ、バイトをしたことがない三津五郎は、パンピー的常識に欠けており、パンピー基準で言えば空っぽな部分もあるよね、とか。
自分で塗り固めた嘘を真に変えて信じ込んだ台詞とか、心のこもらない台詞とか、上手いなぁ、とか。言い声してるなぁ、とか。

有里姉(片桐はいり)が登場しただけで場が落ち着く、その片桐の大物存在感はスゲエ。単に長身・大柄の怪演女優ではなく、確実的確な性格俳優として確固たる演技をしているなぁ、と。
片桐はいりからもらえるなら、ボージョボー人形(願掛け人形)欲しい。ティーパック人形でも可。

近藤芳正の押さえとハジケも、良い感じでしたね。
実は近藤の方が三津五郎より頭一つ背が高いってのは、驚きの事実でした。

ああ、それにしても、あの後半3場は何だったんだ。据わりが悪くて気持ちが悪いぞ。
私の思い描くラストは…蓮見田自らが「俺は空っぽだから」とは決して言わず、蓮見田兄弟の物語としての終幕。
有里姉がいったん帰った後。蓮見田は冒頭と同じく砂利を投げ、有里が怒り出し、あげく「私は居候(山西惇)と寝た」発言が出て、蓮見田が刀を取るところまでは、同じ。だが、蓮見田は刀を取り落とし、空っぽの世界へ。蓮見田弟が「あきらめちゃダメだ。俺の感情なんて全部やるから」とすがりつくが、蓮見田はヘラヘラとアホになって砂利敷の庭で1人飛び跳ねる。
そこへ、有里姉が戻ってきて「今、幸せ?」と鎌を振り上げ、全員唖然。「え、あれ?じゃ、もう一度」で再度有里姉が鎌を振り上げるが、蓮見田は砂利でジャンプしはじめ、これを止めようとした弾みで箱男(酒井敏也)の箱が鎌で切られる。悲鳴を上げる箱男。
暗転の後、またまた蓮見田は砂利を投げ続けている。縁側に座って兄を見つめる弟「有里さんは想像妊娠だったんだって」、兄「…ん」、その後言葉無く幕。 うわ〜、ブラックだよね〜。うっとり。

採点:★★☆☆☆

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