自称☆芝居道楽委員会

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「夏の夜の夢」

2007年6月1日(新国立劇場・中劇場)

期待に違わぬ出来のアテネ公爵&妖精の王(村井国夫)と、アマゾンの女王&妖精の女王(麻実れい)。この2人ががっつり物語の骨格を立ち上げているので、世界がとても安定している。
確かに物語は恋のどんちゃん騒ぎなのに、決してバカ騒ぎには堕落していない。村井国夫が可愛らしい羽根を背中に付け、ちょっと頼りなげにロックするなんて単なるお笑いでしかないはずなのに、嬉しいほど微笑ましく見える。
麻実れいの女王様っぷりはさすがだし、そこから一転してロバ男(吉村直)に惚れるくだりなど、絶妙なとろけ具合で「大人の」恋が炸裂といったところ。
それにしても、なんて気持ちの良いシェイクスピアなのだろう。蜷川幸雄演出・オール男優『恋の骨折り損』とは作品が違うとはいえ、雲泥の差の面白さであり、心地よさ。

それにしても、大人4人がパジャマ姿で大喧嘩!という場面を見せてもらえるとは思ってもみなかった。
ディミートリアス(石母田史朗)に横恋慕しているヘレナ(小山萌子)が、「私は貴方の犬です!」と、そのままズバリ犬(スパニエルだっけ?)になってみせたり。「チビ!」とヘレナ罵倒されてキレたハーミア(宮菜穂子)がヘレナに体当たりを食らわせようとするも、ライサンダー(細見大輔)と許嫁ディミートリアスに両腕をとられてブランコ状態になったり。
あんたら夜の森の中で、しかもパジャマ姿で、何やってんのよ。わはははは。
パジャマ姿で喧嘩って、なんだか修学旅行の枕投げ大会みたい。年齢あがっても、いかにも痴話喧嘩なわけで。そのへんの絶妙な緩さ、本人達はマジだけど第三者から観ればアホでしかない、犬も食わない馬鹿馬鹿しさが漂って素敵。
4人の中で一番笑いを取っていたのは、小山ヘレナ。このコメディエンヌの表情はどこかで観たことがあると思ったら、そうか二兎社『歌わせたい男たち』の養護教諭か。

妖精パック(チョウソンハ)は飛んだり跳ねたりするだけではなく、手品をしたり、エレキギターを抱えたり、演歌を歌ったりと、とにかく大サービス。村井妖精王と並んだ時の構図もなかなか良い。
そういえば、チョウソンハはtpt『Angels in America』でも羽根を背負っていて、あの時も絶叫するトンデモ天使だったのだ。くるくる回る表情、高い瞬発力、これはなるほどパック。

その他の妖精たち(男女4人ずつ)はダンサーで構成されているよう。
男の妖精たちには台詞が無く、全てダンスで妖精王をサポート。影・裏に徹していて良い感じに妖しい。女の妖精たちには台詞・芝居・ダンスがあるのだが、これがどうにも個人差が激しくて観ていて落ち着かないのが残念。

アテネ王の結婚式で芝居を披露しようとする職人達。全員揃って道化役なのだが、いかにも学のない職人達の、素朴で凡庸で、それでいて一生懸命な感じが実に良い。わざとらしい笑いを誘ったり、意表を突いた行動で耳目を奪うような、そんな賢しいことをしない素直な役作りと演出に好感。

アテネ王の現実社会は白い城、妖精達の夜の世界は黒い森とした舞台美術(スー・ブレイン)も、鮮やか。ことに、回り舞台が90度だけ回転し、客席からは両方の世界が見えている状態でロバ頭の職人ボトムがつぶやく箇所では、夢と現実の境界にあることが明瞭に伝わってくる。
そして、こう来たか!と唸ったのがパックの終幕。大道具の裏をあえて見せ、それどころか舞台袖の奥の方まで客席に見えるようにして「我ら役者は影法師、皆様方のお目がもし、お気に召さずばただ夢を、見たと思ってお許しを」と言わせる。アテネの白い城壁も、妖精の黒い森も、演技の仮面も取り外し、東京初台の新国立劇場中劇場という現実に引き戻しての終幕。
演出(ジョン・ケアード)の勝利、天晴れ。

採点:★★★★☆

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