自称☆芝居道楽委員会

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マルク・ピオレ指揮/東京交響楽団
モーツアルト「交響曲25番」他

2006年11月18日(サントリーホール)

会場に入って舞台を見る。おや?指揮台が無いぞと、気づく。よほど背の高い指揮者なのかなと思ったら、その通り。指揮者マルク・ピオレは小顔・長身の指揮者。楽団員の間を抜けて指揮の定位置に歩いてくる間だも、肩から上がしっかり見えている。
いやー、ちっちゃくて可愛いですなー日本人。
オーケストラメンバーが立っていてさえマルク・ピオレの頭が抜きんでているのだから、オケメンバーが椅子に座ると指揮者は一人すらりと目立つ。そんなわけで、指揮台は無しなのですね。

<モーツアルト:交響曲25番>

曲が始まったとたん、指揮者のクキクキ運動に目が釘付けになる。細身の長身がカクカクと動き、ビシビシと指示を出す。それにあわせてオーケストラも音色に厳しさと鋭角さをつけてゆく。指揮者っておもしろいなー。

最初の数分はすっかり指揮者に注目していて耳がお留守になりがちだったのだが、唐突に「あ!これ、聴いたことある!」と閃き、次の瞬間、映画『アマデウス』の画像が脳内再生される。これ、そうだ。間違いない。ドラマティックで何処か悲劇と悪意を含んだような音楽に、凡庸の王様サリエリの顔と、ヒステリックな笑い声をあげるモーツアルトの顔が重なってくる。
第1楽章で何度も繰り返される主旋律の、心沸き立つリズムに内包された影のイメージにドキドキ。第2楽章に入ってマルク・ピオレの肘運動はさらに活発になり、第3楽章のゆったりとした流れの中にも時折深い陰影が見え隠れする。なだれ込むような第4楽章では第1楽章の主題が再度繰り返されて大いに盛り上がり、マルク・ピオレの突っ込むような指揮にオーケストラが前のめりになって応えてゆく。

<ヴェルディー:歌劇『アイーダ』より>
 「エジプトとイジスの神に栄光あれ」
東響コーラス

左右の2階客席(RAとLAブロック)後方に、それぞれ3人のトランペットが並ぶ。管から赤い布を垂らし、いわゆる『アイーダ・トランペット』を奏でる。音楽空間に広がりが出来てなかなか素敵。
先日キエフ・オペラ『アイーダ』を観た時もこの箇所は高揚感があって良かったが(しかし付属のバレエが惨かった…)、今回の方がそもそも音響が良いし、コーラスの人数も多いし、純粋に音楽を楽しむことができた。

<ヴェルディー:歌劇『リゴレット』より>
 「あれかこれか」
佐野成宏(テノール)
 「あなたは心の太陽」森麻季(ソプラノ)&佐野成宏
 「慕わしい人の名は」森麻季

第一声から豊かな声があふれ出したテノールの佐野成宏。オーケストラの演奏に歌声がしっかりとのっかり、サントリーホールの壁という壁に声を反響させている。朗々たる、というのはこのような歌いっぷりのことを言うのだと納得。
観客は椅子に深く腰掛け、耳に押し寄せる明瞭な歌声に酔いしれることができる。
佐野の歌い方は決して派手ではないし、身振りや表情も決して多彩というわけではない。しかし、そのような味付けをしなくとも、その歌声だけで観客をぞんぶんに楽しませてくれるのだ。

今回のお目当てはソプラノの森麻季。2005年のホールオペラ『ラ・ボエーム』での好演が嬉しく今回も期待していたのだが、うーん、思ったほど声が出ていなくて残念。
綺麗なソプラノだし、お得意のコロラトゥーラでも装飾音符を楽しんでいるふうだったけれど、オーケストラを背景にすると声がヴァイオリンに埋没してしまうし、そもそも声がホールに響いていない。それどころか客席に声が吸い込まれてしまっているよう。
観客は耳をそばだてるようにして、全神経を集中させて森のソプラノを聴かねばならない。しかも、どうやら特定の音が掠れるというか飛ぶというか消えるというか、とにかく声になっていない音がある。うーん。
佐野テノールとのデュエットでは完全に森ソプラノが負けていて、デュエットではなく佐野の独唱に聞こえた。ああ、残念。

<ヴェルディー:歌劇『ナブッコ』より>
 「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」
東響コーラス

コーラス、本当に素晴らしいです。全てのパートの声がはっきり聞こえて、しかもハーモニーになっている。
例によって例のごとくプログラムをてんで見ていないし、歌われている曲がヴェルディーのオペラのものとは分かっていても曲名までは分かっていない状態で聴いていたのだが、これは分かった。なんたって、何か輝くものに導かれて空を駆けるようなイメージが広がったのだから。鳥肌たちそうだった、もう少しで。

<ヴェルディー:歌劇『椿姫』より>
 「そはかの人か〜花から花へ」
森麻季
 「燃える心を」佐野成宏
 「パリを離れて」森麻季&佐野成宏
 「乾杯の歌」森麻季、佐野成宏、東響コーラス

森のソプラノは結局声量が出ないまま。
『花から花へ』で上手側楽屋通路で歌う佐野テノールの声の方が、舞台上にいる森ソプラノより圧倒的なのには苦笑するしかない。『パリを離れて』では佐野が森にあわせて音量を控えめにしたような印象さえ受ける。
それにしても素晴らしいです佐野テノール。声の表情が若干乏しいような気がしたけれど、艶と勢いがあって聴いていてスカッと気持ちがよい。『乾杯の歌』でオーケストラとコーラスが入っても全く負けていない。やっぱりソリストはこうでなくっちゃ。

採点:★★★☆☆

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