自称☆芝居道楽委員会

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ペンギンプルペイルパイルズ「道子の調査」

2006年8月24日(ザ・スズナリ)

久しぶりのスズナリ。初めてのペンギンプルペイルパイルズ。
ダイザワナミコの行方を追う2人。1人は6年前の調査員・砂恵(ぼくもとさきこ)、もう1人は現在の調査員・道子(伊藤留奈)。道子は6年前と同じ部屋、6年前と同じメンバー(証言者)から話を聞いてゆくが…。

舞台セットは取り調べ(?)を行うモーテルもどきの保養所の一室。そこに砂恵と道子が時には交互に、時には同時に現れることで、現在と過去の時間を鮮やかに描き出す。しっかり張られた伏線、入り組んだ事象が少しずつ明らかになってゆく謎解き、素直におさまっている笑いネタ。

それにしても、6年前の調査員・砂恵って怖い顔だ。私はずっと「般若面みたいだな」と思っていた。
ぼくもとはもちろん般若よりも数段彫り込みが浅いし、そもそも顔もふっくら系だし、口だって裂けているわけではない。でも、眉間に寄る皺の感じとか、そこからスッと引かれた眉のラインとか、基本的には表情を崩さず馬鹿正直を貫く女の、けれど内側でうごめいているはずの情念とか怨念とか。ああ、これは般若だな、と思わせるのだ。
嗚呼、怖い。嗚呼、嫌だ。こういう女には関わり合いたくない。砂恵のような人に対してしか自分の話を聞かせられない、砂恵のような素直っぽい人を捕まえて自分の心の虚を埋めるような、そんな寂しい証言者にはなりたくない。

現在の調査員・道子は、突き放しているようでいて、私生活のあれこれに縛られ・捕らわれ、もがいている。常に「何よあんた、メーワクなのよ」という表情で証言者に相対するが、その陰には寂しい表情。仕事とか、プライベートとか、とにかくあれこれに疲れた女の、それでもちょっと意地を張って見せる切ない自尊心。時折聞こえる海の音は、何の暗喩だったのだろう。押し寄せる現実?
冒頭の場面で左手(だったっけ?)に握っていたモノ、ブラボーですわ。

ラスト「だから、(水着は)着たくないって言ってるでしょ!」と言いつつ、ワンピースを脱ぐと下には水着(横縞のビキニ)を着ていて、「もうこんな所とはおさらばよ!」とばかりに窓から下へ飛び込む。
もっと「どっかーん!」と全てが崩壊するような救いの無い結末が来るのかと思っただけに、ちょっと狐につままれたような気分。 わかんないけど、うん、これでいいのかな。何でも白黒つくわけじゃないんだぞ、と。ダイザワナミコという存在のトリックや、調査に来た砂恵に何があったのかという他人の過去が分かっても、そのことと、道子本人の気持ちの整理・ふっきりは別なんだぞ、と。そいういうこと?かな?

証言者は、個性的な男性5名と、陰の薄い男性2名と、女性1名。
ストリップ劇場でジョークを飛ばしている成瀬(玉置孝匡)。調査室?の隣に滞在している自称作家・蕨(加藤啓)。砂恵にご執心の土木作業員?4区在住・阿彦(小林高鹿)。過密バイトスケジュールを楽しむお姉言葉の連城(山本大介)。やたらと吠える犬アパッチを連れてジョギングをする桑島(松竹生)。
どいつもこいつも胡散臭いけれど、一番胡散臭いのは自称作家・蕨。「俺には全て見えているんだよ」ってなふうを見せているけれど、その実、自身の中身が空っぽで保養所に来た調査員を相手に埋まらない空白を埋めているような。心が弱くなっている女はこのテの男に騙されるんだろうな。かわいそー。
同じ胡散臭くても、ストリップ劇場の成瀬や、ジョギングの桑島の方がよっぽど面白い。「俺、寂しいんだよね」って表情をちゃんと顔に出していて、正直でもあるし。あからさまに胡散臭いってのもポイント高い。
砂恵にご執心で果敢にアプローチする阿彦、お姉言葉で「○時から△時半まではバイト入れられるわ!」と過労に加速をかける連城。何でそんなにいっつも興奮してわめき散らすのか理解できない。が、「ったく、そーゆーヤツ、いるんだよねー」と傍観者の視点に立ってしまえば、その1人狂乱ぶりが面白くもある。

サッカー部・谷津(吉川純広)とリンチ・光田(近藤智行)の2人は、いまいち識別できず。なんかいつも女子高生・小巻(内田慈)とガタガタ・ワイワイやってるなーって程度。

面白い脚本(倉持裕)、上手い演出(倉持裕)、揃った役者、効果的な照明(清水利恭)、気の利いた舞台美術(中根聡子)、絶妙な音響(高塩顕)、明確な衣装(松本夏記)とは、こういうことなのだろう。こういう質の良い作品を見られちゃうから、小劇場も無視できないんだよね。

採点:★★★★★

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