自称☆芝居道楽委員会

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チェルフィッチュ「三月の5日間」

2006年3月21日(Super Deluxe)

現代口語の台詞が云々、変な動きが云々、好みが別れる、と評判のチェルフィッチュ。1月頃にTVで見たインタビューでは、チェルフィッチュ主宰・岡田利規の、あまりの下手上手緩慢型思考系岡田超現代口語について行けず、愕然としたのだ。

しかし、今月は私にとっては未見劇団強化月間。しかも『三月の5日間』は第49回岸田戯曲賞(2005年1月発表)作品。先日、第50回岸田受賞脚本家・三浦大輔の『夢の城』(受賞作は『愛の渦』)を観た流れもある。
ここでチェルフィッチュを観ておかねば、このままずるずると観ずじまいになってしまいそうな予感がして、チケットを確保。

えーっと。えーっと。誰が誰? 登場人物の名前も服装もうろ覚え。
コケてる映画を見に行った男がアズマ君。映画館でアズマ君(=仮称サトウ君)に話しかけたのがミッフィーちゃん。火星に行きたいって言ってる女の人ね。
で、アズマ君がライブに行って、それに同行していたのがミノベ君。ライブで出会ったミノベ君と、渋谷のラブホにで5日間やりまくっていたのが、ユッキー。ユッキーと別れた後、ミノベ君が渋谷に呼び出したのは、一緒にライブに行ったアズマ君。
渋谷の反戦デモに参加していたのは2人。アンミラに固執していた茶色いジャケットの某君と、花粉症の緑のパーカーの某君。デモのことで怒られちゃったのが、ヤスイ君。
あれ?スズキ君ってのもいたよね?

誰が何君という役なのか、は、さっぱり分からない。2人1役もあったような気がする。でも、誰がってことが分からなくても、面白い。
「A君とB君がライブに行ってCさんに会って、B君はCさんとソクマンしましたって話をこれからしまーす」などと解説してくれるのだが、それすら気だるくてほのかにおかしい。
ちょっと恐れて身構えていた現代口語の台詞も、耳に何の抵抗もなくスイスイと展開する。ま、現代口語と言っても、これだけ話の構築が下手くそな喋りをする人は、実際には少ないと思うけどね。

今まで観てきた舞台、ある役に共感したり反感を抱いたり、あるいはある役の気持ちに同調することは勿論あった。その時の舞台との一体感は、私も舞台上の出来事を追体験している感覚だったり、舞台上のことを第三者視点で眺めながらあれこれ思考する結果だった。
でも、このチェルフィッチュでの一体感は、それら経験とは全く異なる。
「あ、そーなんだー」「へー」等と役者が言う台詞が、そのまま私の「あ、ふーん」「そっかー」に重なる。これは面白い経験。話し下手な友人Aから、友人BとCのことを聞いているような感覚。それは、役者の言葉が台詞していなくて自然だったということの証明だろう。上手いなぁ。

物語に登場するのは渋谷と六本木。どちらの場所も私に土地勘があるので、出てくる場面全てが頭の中で映像で思い浮かぶのも楽しい。
「スペイン坂のアンミラ」…あるある、アンナ・ミラーズ。
「普通はドンキから駅の方に行くのが<帰る>だけど、こっち方向に行くのが帰るってちょっと違って旅行っぽい」…あー、わかるわかる。
「北陸銀行のATMで」…うわー、渋いところ突いてくるなぁ。
「道玄坂から東急本店へ行く円山町の坂のところにバケツがあって」…やべぇ、これも知ってるよ。
「渋谷駅から六本木通りに行くと、って、これはモアイ中心の方がわかるよね」…だよね。
ここまでくるとちょっと気になるのが、ミノベ君とユッキーが4泊5日したラブホ。実際どれなんだろう。ま、知ったところで、どーする気もないんだが。

印象的だったのはデモの場面。
あー、いるよなー、こういうふうにだるだるとデモに参加している人。ジャケットのペッチンボタンをペッチン、ペッチンと留めたりはずしたり。わかる、わかる。
「俺、花粉症なんだけど、杉も。ぶっちゃけマスクしたいんだけど、ほら、マスクとかしてデモに参加すると、本気っぽくなっちゃうじゃん」コレ、うけました。でも、やっぱ結局、マスクしてないと鼻水とかキビシくて、超立体マスクを買うってのも、また、よろし。

大道具小道具は無し。座布団に座ってみている客席と地続きの空間で、役者達が会話しながらちょっと不思議系入った動きをする。さりげない照明の明暗、あるいはラブホのベットを彷彿とさせる四角い明かり。良くできてる。

これが現代版Love&Peaceなのかと問われれば「いやー、そいういう意識的なものじゃないでしょ。5日間やりまくってました、ってだけで」と答えよう。これが演劇の新しい試みなのかと問われれば「そういう見方もあるかもね。私には新しいとか古いという区別が分からないけど」と答えよう。現代口語演劇ってどうなのと問われれば「意味が取りにくい箇所はあったけれど、言葉の汚らしさが無かったのは好印象」と答えよう。
あっという間の100分間を楽しめたのだからそれで良いのだ。心残りは、大盛ポテトにひるまず、フィッシュチップを食べてみれば良かったかも、ということ。

ラスト。これまでのだるだる会話から一転、「じゃあ2万円ね」と財布を開いてお金を渡すリアルな表現で幕。見事。

採点:★★★★☆

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