前半に比べて、後半はちょっとだれることは確かだ。ずっと一つのネタで持ってゆくのはちょっと苦しい感じがすることも、分かる。この芝居の主張はラストの「いいんだよ」にあるのだろうともなんとなくは分かっていて、でも私にとってそんなことは「だから、何?」なレベルのこと。
だが、あえて、言おう。素晴らしい芝居である、と。
何が素晴らしいって、ダメダメ男(金替康博)のくせに信念徹底しているところが、実に素晴らしい。そして、徹底的に会話がかみ合っていないダメっぷりも素晴らしい。
通常、ダメ男というのは「オレってダメだし…」と最初から弱腰で、しかも「やっぱ××するべきだろうってコトはわかってるんだけど、でもオレって××だし…」と正論を吐きつつ弱音も吐く。何かを成し遂げよう!という意志が無いヤツとか、愛は勝つ!とか叫んでいるくせに異常に無力ではた迷惑なヤツだったり。とにかく、ダメダメ男、ウジウジ君の存在は私をイライラさせるだけなのだ。通常は。
だが、今回の、このダメダメ男は、ちっとも私をイラつかせない。それどころか、世間とのズレ具合とか、自分勝手に温い感覚とか、弱気だけど徹底したやり口などが、実にもって素晴らしい。勿論、こんな男とお友達になりたいとは1秒たりとも思わないが、私に実害が及ばないならちょっと傍観者になってみたい存在ではある。
何が素晴らしいって、ダメダメ男が目指しているのが「即身仏」だというのが、素晴らしい。しかもオリジナルで即身仏になる方法を考えたのも、素晴らしいし、その方法も素晴らしい。食事を少なくしていって、胡麻だけを食べる生活に切り換えて、その後は自分のおしっこだけを飲む生活にして、それで即身仏になるんだってさ!
わはははは。何で胡麻なんだよ。
彼女(後藤飛鳥)との会話の噛み合わない加減も、ちょっと解脱してて(?)おかしい。
女「即身仏って、結局死ぬってことでしょ? あたしはどうなるの? 残されたあたしはどうなるのよ!」
男「・・・人?」
あはははは。すげえ。
カノジョに問いつめられてこうも冷静に(?)答えられるってのが素晴らしいよ。たとえカノジョに怒鳴られようと、止められようと、決して即身仏になることを諦めない姿勢が素晴らしい。ダメダメ男のくせに、強固な意志を持ち合わせているのが素晴らしい。
胡麻を食べ続けたお陰で(?)胡麻の精(立蔵葉子)がやってくるというのも、おかしい。
「胡麻のほうから来ました」って…何処だよ。あはははは。狂言の定番の台詞「このあたりに住まい致す者でござる」を彷彿とさせるよね、「胡麻の方」って言い方。着物(茶色の水玉模様っぽい小紋)に茶色の日傘で登場し、仏像のような微笑みで「もっと胡麻を食べてくださいね」なんて言っちゃうんだから、参った。
女「貴方は今、世界で7番目に胡麻を食べているんですよ」
男「・・・あと6人いるんだ、上に」
女「もっともっと胡麻を食べれば、すぐに1番になれますよ」
一瞬、これから毎日胡麻を食べて、胡麻の精に来て貰うのも楽しいかもとかって思っちゃいましたよ、私。ヤバイ、作者(前田司郎)の罠にはまってるかも。
引きこもりの男。自殺(即身仏)を志願する男。自分が此処にいてもいいのか、何故何もしない(できない)自分が此処(誰かの側)にいることが許されるのか分からないと悩む人。
んんー、最近どこかで出会ったキーワードだと思ったら、先日見たマジェンタ★マジェンタ『ナイストリップ』も、確かそんな設定と会話があったな。どちらの芝居も、私にしてみると「何を今更悩んでいるんだろう?自明の理だろ?」なコトをいろいろ言っていた。だが、そいういう内容であってもするりと私の心に染みてきたのが、このダメダメ男だ。
自分がダメ男だと分かっていて、そんな自分が彼女の側にいてはいけないと思っていて、だから一人になろうとして、そこから発展して即身仏を目指していて、でも、即神仏になるための胡麻代とか部屋の家賃とかを彼女に頼っていて…。結局堂々巡りのダメダメ男。
ブラボー!金替康博。面白いじゃん、五反田団。