日常の何気ない一瞬一瞬が、実は、それに参加している各人の絶妙な調和によって成立している。人は己の立場を完璧に演じることで、当たり前の日常が平凡に過ぎてゆく。
では、もし、誰かが役割を間違えたら? タイミングがずれてしまったら? 設定にズレがあったら? 時間とか空間とか人とか、それらのうちのどれか一つでもハズしていたら? 平凡な日常は簡単に均衡を失う。
どこで何を間違えたのか狭い空間に押し込められ、振り回され、ある瞬間に外に放り出されてみたり。
自分はお客だと思ってホテルのフロントに来たのに、内外がいつの間にか入れ替わり、フロント係りだと思った男がお客としてホテルにチェックインしており、何故か自分が部屋の鍵を渡していたり。
ドアをノックしてもそのドアは開かず、何故か別のドアが開いてたり。ドアの内外をくぐりながら紙やら珈琲が行き交ったり。
机に対してやたらと背の低い椅子に座った男女が、めいいっぱい手を伸ばしてワインを飲んだり、つぎあったり。そうかと思うと椅子に対して異様に背の低い机を挟んでディナーをしたり。
いろんな場面のいろんなズレが、見事なパントマイムで繰り広げられてゆく。わざとらしかったり、あざとく大げさな演技など一つもない。ごく自然な動きで、均衡を失い混沌の一歩手前にさしかかっている状況を描き出す。
客席から笑いが起こることもある。激しい動きなのに息ひとつきらさない4人(じゅんじゅん、ももこん、おのでらん、すがぽん)。「うわー、誰がどの立場で、それで、えっと、誰がどうなって…えー?!」と観客をこんがらがせておいて、それでも4人はシレッとマイムを続ける。
ダンス、特にコンテンポラリー・ダンス系はというのは「えーっと? これは…何なのでしょうか?」になってしまうことが多く、これまで敬遠しがちだった。でも、何だよ、マイムならいけるじゃん。おもしろいよ。
じゅんじゅんは、動きがしなやか。テーブルの縁からジッとももこんを見るめが印象的。
紅一点ももこんは、もっそりとした表情ながら軽やか。ワイン早飲み競争での勝利のポーズが印象的。
おのでらんは、かっちりと纏める。冒頭の閉じこめられた慌てぶりが印象的。
すがぽんは、汗だくで律儀に動き二枚目を演じる。ホテルマンとのやりとりが印象的。
4人での活動は、この公演をもっていったん休止。今後はそれぞれが個別に活動し、いつかパワーアップして活動再開するのだそう。しまったー、もっと早くからこの集団を観ておけばよかった。
でも、今回は間に合って良かった。また、きっと、観ようと思う。