自称☆芝居道楽委員会

2006年前半 <<芝居道楽録 <<HOME

白石加代子「百物語」シリーズ第23夜

2006年2月25日(大田区民ホール)

白石加代子はこれまで何度か蜷川幸雄演出の作品で観ている。2000年『夏の夜の夢』、2003年『ペリクリーズ』、2005年『天保十二年のシェイクスピア』。どれも白石加代子の独特の語りが空間を支配する、そんな舞台にであっている。
じゃあ、その語りをじっくり聞こうじゃないか。というわけで、ようやく『百物語』である。

朱川湊人<栞の恋>
物語が昭和40年代前半を舞台としているので…と、赤いセーター?に生成のもっさりスカート。酒屋の前枷をきりりと締めてかわゆらしく。舞台上にはいくつかの黒い箱が置かれており、これが時には酒屋のレジ台になり、時には古本屋の本棚になり、時には商店街の並びになる。

この人、やっぱり上手いなぁと思う。白石の朗読によって、黒の舞台にサッと鮮やかな色がつくのだ。
バンド「タイガース」の曲に主人公の女の子がウキウキする場面では、世界はピンクになる。本に挟んだ栞を通して文通する場面では、舞台上にハッキリと古本屋の本の並びが見えてきて、その片隅でこちらも一緒にドキドキする。

あくまで「物語ってゆく」という形式をとっているので、白石は片手に小説の文章がそのまま書かれているとおぼしき台本(?)を持っている。そして、一人芝居として会話を語り、朗読として地の文も語り、その小説を演じてゆく。語られているのは朱川湊人の小説で、朱川湊人による世界が広がっている。だが、白石はそれを完全に自分のものにしている。
これはきっと、原作小説とその舞台化がお互いに幸せな関係を築き、双方とも成功している希有な例なのではないだろうか?

朱川湊人の作品、読まなきゃ!

夢枕獏<首>
夢枕獏『陰陽師』シリーズの中の1作である。
夢枕獏の『陰陽師』シリーズはこれまでいろんな形で舞台化、映像化、漫画化している。舞台でいえば、2001年の21世紀現代能『安倍晴明』、2002年には KOtoDAMA企画『陰陽師 言霊ノ巻』、2003年にOSK『新・闇の貴公子』等、これまで私はずいぶんと見てきている。一応、原作ファンだからね。
そして、これまでの舞台化で、私が手放しで喜べる作品は残念ながら無かった。

だが、とうとう、白石がやってくれた。着物を新調して臨んだだけのことはある。
夢枕の小説で描かれている、ほろほろと酒を酌み交わす場面、異形のモノ達がぞわぞわと蠢く場面、ごつっ、がつっと骨を囓る場面、晴明がそっと呪(しゅ)を唱える場面。どれもが白石加代子であり、夢枕獏だった。

終演後、白石は着物の裾をめくって、普通は見えない下前(右側の前身頃という意味です、分かるかな?)に描かれた髑髏を見せてくれた。しかも、この髑髏は、上に来る左側前身頃に描かれたお札によって封じられている、とのこと。昔はこうすることで魔除けとしていたらしい。髑髏(しゃれこうべ)だけに、洒落てるなぁ。

採点:★★★★★

2006年前半 <<芝居道楽録 <<HOME