自称☆芝居道楽委員会

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2月文楽公演
第1部「御所桜堀川夜討<弁慶上使の段>」「関取千両幟」
第2部「小鍛冶」「曽根崎心中」

2006年2月18日(国立劇場・小)

第1部<御所桜堀川夜討/弁慶上使の段>
どことなく微熱っぽかったこともあり、前半はうつらうつらしてしまった。
後半、弁慶(吉田玉女)がいきなり腰元・信夫(吉田清三郎)を…というあたりから目覚める。ぼんやりした頭で、おわさ(桐竹紋寿)が「十八年前にたった一度契った稚児の、その着ていた振り袖の片袖を今も着ている」って、物持ちいいなあと感心する。それでもまぁ、おわさにしてみれば、そのたった一度で妊娠して信夫を産んだのだから、記念として着ているのはわかる。
だが、しかーし、その時の着物を着ているのはおわさだけではない! なんと弁慶も、その時の小袖を着ているのだ! いい年した男が…。ウブだね。そりゃあ弁慶は武蔵坊なわけで、つまり坊主だから女と交わることも(今は)無いだろうが、しかしだね、誰かに見とがめられたりしないのだろうか、赤い小袖。つか、大男である弁慶が、稚児の振り袖を着られるというのも、凄い。着物って体型を選ばないのね。(そういう問題か?)

第1部<関取千両幟>
猪名川(吉田玉也)と鉄ヶ嶽(吉田文司)という二人の関取の、男の意地、相撲取りの矜持がぶつかり合う話。物語としても面白いのだが、やはり一番の見どころは三味線(鶴澤燕二郎)の「曲弾き」だろう。

『猪名川内』から『相撲場の段』への場面転換で、この曲弾きが聴ける。
まずは普通にバシバシと三味線を弾き鳴らしているが、それも16ビート、32ビートというようにデンデケデケデケになる。このへんから三味線による曲芸の開始だ。
撥を持ち替えて常は握っている部分で弾く、弦と三味線の胴の間に撥を通す、弦を押さえている左手で爪弾く、三味線を頭上に掲げて弾く、竿を下、胴を上にした逆さ三味線で弾く、爪弾きながら撥を胴に乗せ、弾みをつけて撥を飛ばして空中でキャッチする、等。やってみたい遊びを全部やっちゃいましたという勢い。
5分…もしかしたら10分ちかく曲弾きをやっていたかもしれない。もちろん、舞台転換の方はとっくに終わっており、大夫(豊竹咲大夫、松香大夫他)も三味線の曲弾きが終わるのをひたすら待つ。三味線がこれだけ注目されるのって、かなり珍しい。まあ、演奏としては邪道だろうけどね。

さんざん待たされて『相撲場の段』になるのだが、この段自体は5分程度で終わってしまう。うひゃー。まさに、「曲弾き」の為にだけあるようなものだな。こっちは楽しいから良いけどさ。

第2部<小鍛冶>
能『小鍛冶』を文楽に移した作品。当然の事ながら、謡は義太夫節になり、太竿三味線がバシバシ鳴る。物語が簡単なうえに、賑やかで面白い。
後シテにあたる稲荷明神(吉田清之助)は、白い髪(鏡獅子みたいなやつ)に頭に狐の帽子(?)。飛ぶ、跳ねる、足をじたばたさせる、回転する…と大奮闘。人形がぐるりと回る時など、主遣いから一番遠い位置で遣っている左遣いは必然的に回転軸(主遣い)の一番外側なわけで、必死の様子でついて行っていたのも印象的。
お能の地謡が文楽の義太夫並みに聞き取りやすければ、能『小鍛冶』も観てみたいと思う。

第2部<曽根崎心中>
『曽根崎心中』といえば上方歌舞伎の中村鴈治郎(現・坂田籐十郎)というイメージがある。確かに、上演が途絶えていた『曽根崎』を復活させ、有名演目にしたのは現・坂田籐十郎と、その父である2代目中村鴈治郎の功績だ。だが、私は、藤十郎親子によるぽっちゃり&同じ顔の(この籐十郎、兄・中村翫雀、弟・中村扇雀親子は本当に顔が似ている!)お初・徳兵衛より、文楽人形の細面で、どこかえっちくさいお初・徳兵衛の方が好きだ。

当初は吉田玉男の徳兵衛、吉田蓑助のお初が予定されていたが、玉男が体調不良のため休演。代わって桐竹勘十郎が徳兵衛を勤める。結果として、今月は2部『曽根崎』と3部『天網島時雨炬燵』の両方とも、蓑助・勘十郎師弟での心中モノである。
玉男はこのところ休演が続いている。2005年2月の『沼津』でオヤジ・平作を遣うのを観て以来、ご無沙汰だ。年齢もあって気になるところ。まだまだ観たいな、玉男。
そういえば、2003年『土耳古と日本 アジアの西と東を結ぶ』で、私は豪華すぎる『曽根崎心中<天神森の段>』を観たのだった。あれは、鳥肌モノだったな。

さて今回、『生玉神社前の段』で徳兵衛(勘十郎)が九平次(吉田玉輝)にハメられる場面も面白かった。だが、やはりドキドキしたのは『天満屋の段』だ。竹本綱大夫と鶴澤清二郎の床も良いし。

蓑助が遣うお初は相変わらず色っぽい。崩れ落ちてしまいそうなほど落とした肩。人形から立ち上る艶めかしい雰囲気。それが「徳さま…」と思い悩む場面の切なげな風情といったら、そんじょそこらの女ではとても太刀打ちできまい。

対する徳兵衛は「男」だった。
「このままでは男の一分が立たない」と泣くあたりはダメダメ君だが、玉男の遣う徳兵衛のような気持ちばかりが先走るフワフワ君とは異なり、勘十郎の遣う徳兵衛は臍から下をしっかり使ってそうなアホアホ君である。お初の足首に自らの首を添わせて心中の決意を伝えるときも、お初の足に添えた己の手を、あわよくばそのまま上、膝からもっと上にまで持っていきそうな、そんな感じ。この、えろ男!(←誉めてます。)

そんなふうに見えてしまったので、『天神森の段』でお初・徳兵衛が重なるようにして心中して果てたときも、おもわず「こいつら死ぬときも合体しかけてるんかい!」と、ツッコミを入れてしまいました。…アホだ、自分。

採点:★★★☆☆

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