今回は「男たちの、シェイクスピア」ということで、出演者は全員男性。女性役も男性が扮する。チラシには7人の男達が黒のスーツに身を固めて、何だか奇妙な雰囲気で並んでいる。全員若ければホストクラブまがいだが、オッサンも混じっているあたり、びみょー。
そういえば、野村萬斎の『まちがいの狂言』も、男性だけのシェイクスピア。蜷川が演出した歌舞伎『NINAGAWA十二夜』もやっぱり男性だけのシェイクスピア。ま、この2作は伝統芸能系だったわけだが、今回は一般演劇。さて。
とにかく弾けちゃって楽しそうなのが、召使い・ドローミオ兄弟(2役/高橋洋)。だぶだぶのズボンがずり落ち、チャップリンも吃驚のデカ靴をペタペタいわせ、勺?で叩かれ、足蹴にされ、それでも駄洒落の応酬で応える。笑顔は全開だし、動きも機敏、道化役の端っこさもみせつけてくれる。
高橋洋、完全開花か?!
高橋洋は「蜷川の秘蔵っ子」と言われていて、蜷川演出の舞台の常連役者ではあるけれど(というか蜷川以外の舞台には立っていないのではないかと思う)、正直言って今までさほど印象に残る舞台は無かった。
例えば、2004年の『タイタス・アンドロニカス』、2005年のNINAGAWA vs COCOON第1弾『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』、第2弾『キッチン』、第4弾『天保十二年のシェイクスピア』どの舞台にも高橋洋は出演しているが、今ひとつ私の記憶に残っていない。あえて言えば『天保…』での狂乱のその場駆け足くらいか…。
逆に言えば、悪い印象も無いということは、どの役も無難にはこなしていたことにはなる。でも、何故蜷川がこの役者を使い続けるのか、常に不思議だった。蜷川は高橋洋という役者の何処に何を見いだしているのだろう?と。
だが、今回の舞台を観て、ようやく結論が出た。高橋は脇役TOPの道化役(三枚目)路線なのか! あの身体能力、間の取り方、芝居臭くない茶目っ気。そうか、そうか。そういう役者を育ててきたのか。なるほどね。いやー、蜷川ファンでもないのに蜷川を見続けて良かったよ。面白い役者の飛躍の瞬間に立ち会えて、嬉しいね。
アンティフォラス兄弟(2役/小栗旬)は、高橋ドローミオと比べると力負けしている。演技はまぁ何とか及第点だが、声が割れてしまっているのが気になるところ。正当派二枚目が時折激昂するという役な為に、声に負担もかかるだろうが、役者としてそこんとこは何とか乗り切ってもらいたい。
姉エイドリアーナ(内田滋)、妹ルシアーナ(月川悠貴)の真逆の演技も面白い。
内田エイドリアーナは、とにかく騒がしい。男が演じていることを全面に押しだし、凄い勢いで睨むかと思えば、しなをつくり、ハンカチを噛みしめてくやしがったり、ハンカチを客席に落としたり、ピスチェ?クリノリン?(スカートを膨らませるために履いている鳥かごみたいなやつ)に足を引っかけて転んだり。声も完全に「男が声をつくってまッス」なのだが、そこがまた面白い。
対する月川ルシアーナは、一瞬マジで女か?と思わせる楚々とした雰囲気。表情もあまり作らず、それどころかどこか冷静すぎる無表情にも見えるのだが、それはそれで「ああいう姉をもっちゃうと妹はこうなるのよね」と思わせてくれる。アンティフォラス弟に告白されるシーンなど、雰囲気ありすぎてやばい。
劇場の開場1時間前から30分間(開場時間まで)、劇場脇(というか劇場下?)のホールでミニコンサートあり。
劇場ロビーでも開演15分前くらいから音楽隊が賑やかに雰囲気を盛り上げる。この楽隊は、上演中も音楽担当として下手側舞台袖(というか客席)で、音楽を奏で、効果音を出していて、終始賑やか。