観客とはなんと正直な存在だろう。終演後、誰もが声に出していた言葉はただ一つ。
「岡幸二郎、かっこいいよねー!」これに尽きる。
「岡幸二郎って背が高くてめちゃくちゃかっこいいー」
「顔も超ちっちゃいよね」
「歌も上手いよね。声が通ってたもん」
「大澄賢也とWキャストなんでしょ?」
「よかったよね、私たち岡幸二郎の方で!」
というような会話が、終演後のロビーを満たしている。岡幸二郎の話題しか語られていない、とさえ言っても過言ではない状況。誰もが酔ったように「岡幸二郎」の名前を口にする。
なんんというマジック、なんという華やかさ、天晴れ岡幸二郎。
私は勿論、岡幸二郎の名前も、彼がミュージカルで活躍していることも知ってはいたし、チケットを確保するときに、大澄賢也の公演ではなく岡幸二郎の公演日を選ぶ程度には、岡の名前を気にしてはいた。だが、岡に対する注目度は所詮そのレベル止まりだった。
当初の私の目当ては、ビバリン(前田美波里のこと)と小堺一機。つまり、『マンマ・ミーア!』で見せたビバリンの美脚&美背中を再び! 『おすましでSHOW』での小堺の軽妙なダンスを再び!という気持ちでいたのだ。
だが、そんな私の目論見は、フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(岡幸二郎)の圧倒的な歌声、八頭身?!に近い容姿、そして薔薇を背負った構図の前に、あっさりと消え去る。うわー!美味しい処、全部持って行くのかよ、岡幸二郎。
エリザベッタ・グルーシンスカヤ(前田美波里)の美しい脚も、タイピスト・フレムシェン(紫吹淳)の若い美脚の前にはさすがに勝てないし、前田エリザベッタの美しい背中も、岡男爵のスッキリとした背広のラインの前にはひれ伏すしかない。
オットー・クリンゲライン(小堺一機)も軽妙にやってはいたが、ホテル従業員エリック(パク・トンハ)が可愛らしいし、謎の医者オッテルンシュラーグ(藤井孝)はクド過ぎるし、岡男爵はあまりに振る舞いがスマートなので、これらの前に小堺オットーは可愛いおじちゃま止まりだ。
残念だったのは、次の3点。
清掃担当アンサンブルが何を歌っているのか全く分からなかった。
ミュージカルとして音楽を楽しむことはでき、生演奏もよかったのだが、心に残って帰路に口ずさんでしまうような曲が1つも無かった。
ダンスアンサンブルに、ボールルームダンスのプロ西島鉱治・向高明日美が出演していたのだが、さすが!と思わせる何かに欠けていた。
あとは、ま、そんなもんかな、ってことで。ビバリンと小堺のフツーさを、岡幸二郎が完全にカバーしていたので、結果としては予想どうりの舞台。それ以上でもなく、それ以下でもない。